代替医療解剖(新潮文庫) [Kindle]

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  • 代替医療、反ワクチンなどに興味があれば必読書だろう。さすがにやや古さも見えてきたが、内容は確か。信用と信頼のサイモン・シン。この分野、最初の一冊に。

  • 『代替医療解剖』
    サイモンシン エツァートエルンスト 著
    青木薫 翻訳

    代替医療とは、科学的見地に基づかない医療とされる行為のこと
    具体的には
    ・プラシーボの効果しかない
    ・逆効果でむしろ寿命を縮めてしまう
    ・理論的でないもの医学的に効果が確かめられているもの
    を指している

    作中の言葉を借りると「医術から医学へ」の進歩の歴史
    現代でも代替医療が根強い理由などが書かれており
    闇が深いノンフィクションを好む人必見である

    本の200年ほど前まで瀉血という血を垂れ流す行為が盛んに行われていた
    体に流れる悪い血のせいで体調が悪くなる、という思想のもと何リットルも血を流せば回復すると考えられていた。
    有名な例ではあのワシントンも体調不良を訴えた際血を抜かれて死亡している。

    喜劇的なのが瀉血のライバルたちでほぼ何もしないことによって、
    瀉血よりも高い効果が確かめられていたものもある
    一例を上げると「ホメオパシー」という代替医療がある
    これは、
    ・毒をもって毒を制す
    ・希釈するほど水の記憶という概念があり効果が増す
    と考えられているものである
    「毒をもって毒を制す」が有効だったとしても何百倍何千倍以上も薄めるためほとんど効果がないが
    同時代のライバルが血を垂れ流す行為だったため比較的効果があった

    他にも鍼治療、ハーブ治療、カイロプラクティックなどが取り上げられており
    殆どのものは医学的見地に耐えられないことが書かれている

    これらの医療風医療でない行為は現代でも根強い人気がある
    主な理由としては。
    ・セレブたちが広告塔になる
    ・医学に詳しい専門家たちが沈黙する
    ・無責任、センセーショナルなメディアによって宣伝される
    ・利益優先のイギリス大学によって教えられ学位が授けられている
    ・名誉毀損裁判。イギリスでは訴えられた際勝ったとしても何千万円ものお金と時間がかかるため
    批判することが難しい背景がある。(この本の著者も訴えられている)

    ヒポクラテス
    「科学と意見という、2つのものがある。前者は知識を生み、後者は無知を生む」

    (現代の医療は)「合理的な科学的思考を、健康管理と医療に当てはめたおかげで成し遂げられた」

  • 世界中で大きなビジネスになっている代替医療について、その効果を臨床試験に基づいて徹底的に検証している。
    プラシーボ効果のみの治療は許されるのか?
    費用対効果は?危険性は?
    「鍼(指圧、灸)、カイロプラクティック、アロマセラピー」
    これらの代替医療は日本でもおなじみであり、自分や家族が受けた経験のある人が多いのではないか。
    21世紀に入ってこれらの施術にようやく科学のメスが入った。
    衝撃的な結論が導かれる。

  •  普通の病院や医学部で扱う医療は「通常医療」とか「標準医療」と呼ばれ、現在は「科学的根拠に基く医療」が主流となっているが、これとは別に代替医療と呼ばれる治療法のグループがある。西洋医学とは異なるルーツを持つ治療法の中には長い伝統を持つものもあるが、いんちき療法と呼ぶべきものも少なくない。本書は代表的な代替医療について、「科学的根拠に基く医療」の観点から検証を行った結果を解説している。

     「科学的根拠(エビデンス)」というと誤解する人もいるだろうが、治療のメカニズムが明確になっているという意味ではない。例えば鍼治療の説明に使われる「気の流れ」とか「経絡」と言った概念は生物学的な観察に裏付けられていないが、だから誤りだと断定するわけではない。メカニズムが何であれ、治療において重要なのは「効くか効かないか」であり、それ科学的に厳密な方法で測定したものを「科学的根拠」と呼んでいる。

     効くか効かないかを検証する際には「ランダム化比較試験」「二重盲検法」といった条件を整えなくてはならない。治療法の種類によっては難しいが、様々な手法で条件を満たした研究が行われている。また、ただの水でも薬と信じればある程度効いてしまう「プラセボ効果」の存在も話をややこしくする。しかしプラセボ効果を除外する方法もちゃんとある。

     本書は、各種の代替医療の効果についてランダム化比較試験を行った論文を集めたメタ・アナリシスを用いて検討を行っている。本文で取り上げられた代替医療は、鍼・ホメオパシー・カイロプラクティック・ハーブの4つ。おおまかな結論として、ハーブは一部通常医療に組み込まれる程度に効果がある場合もあるが、それ以外はほとんど効果がなく、場合によっては有害となる。鍼とカイロプラクティックは一部の症状に対しては多少の効果が認められるが、通常医療を越えるようなものではない。ホメオパシーについてはまったく効果がない。その他にも数多くの代替医療が簡単に結果だけ述べられているが、いずれも似たような結論だ。

     著者らは最終的に代替医療の大半をいんちきと言い、こんなものを世に広めた責任は誰にあるか糾弾している。代替医療の伝道者が読めば激しく反論したくなるだろう。だが、あやしげな理論をいくらこねまわしても、いくつかの治癒例(エピソード)を挙げてみせても、十分なエビデンスの説得力には適わない。

     残念なことに、今も多くの人が一縷の望みを抱いて代替医療の戸を叩く。彼らをただ無知蒙昧な人々と冷笑して終わらせるのではなく、なぜ通常医療が代替医療より低く見られるようなことが起こるのか、医療関係者たちもきちんと考えるべきだろう。

  • サイモン・シンが著者というのは、内容の面白さとともに、科学的妥当性も保証されていると言っていい。小気味よく代替医療を斬っていくが、果たしてビリーバーさんたちが説得されるかというと、それは疑問だろう。若い人たちに読んで欲しい。

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著者プロフィール

イラストレーター

「2021年 『世界じゅうの女の子のための日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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