日経サイエンス2017年4月号

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  • 日本経済新聞出版社 (2017年2月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・雑誌
  • / ISBN・EAN: 4910071150473

日経サイエンス2017年4月号の感想・レビュー・書評

  • ダイエットは現代人の大きな課題である。世にダイエット法は数々あれど、決定的なものはいまだない。「運動すれば痩せるだろう」と頑張ってもなかなか痩せられないのは多くの人が実感するところだろう。
    特集「運動と健康」の最初の記事「運動のパラドックス」はこの問題に取り組む。
    サバンナで野生動物を追って暮らす狩猟民族がいる。直観では、彼らのエネルギー消費は都会人に比べて相当高いだろうと思われるが、予想に反してそうではない。記事の執筆者は、2種の同位体(重水素と酸素18)を含む水を被験者に飲んでもらい、排泄される尿中の同位体濃度を調べた。ここから毎日体内で産生される二酸化炭素の量を計算し、これを用いて毎日のエネルギー消費量を割り出す。その結果、狩猟採集民も都市生活者もエネルギー消費量に大きな変化がないことがわかった。どうやらヒトはエネルギーをやりくりして、多少激しい運動をしてもカロリー消費をしにくいように出来ているようなのだ。
    明確な答えはまだわからないが、例えば、運動をすると、その分、身体の「保守」に当てられるエネルギーが押さえられている可能性があるようだ。炎症反応が弱まったり、生殖ホルモンの分泌が下がったりするのだ。こうして全体で辻褄を合わせていると考えられる。
    ヒトの脳は他の霊長類に比べても大きい。脳はエネルギーを「バカ食い」する臓器だ。それなのにヒトが繁殖してきたのは、エネルギーを他でやりくりする「仕組み」を発展させてきたためと考えるのが妥当であるようだ。
    だから生半な運動では痩せない。痩せるためには摂取カロリーを抑える方がどうやら有効であるらしい。

    かといって運動が無意味なわけではない。次の記事「うつ病治療に運動を取り入れる」では、適度な運動が、身体だけではなく心の健康にもよいとする研究結果を報告する。
    もやもやいらいらしていたが、気分転換に運動をしたらすっきりした、という経験を持つ人は少なくないだろう。軽度・中度のうつ病には運動が有効であることを示す証拠が蓄積されてきている。どの程度の、どんな種類の運動がどの程度の症状に有効かまでははっきり推奨できる段階にはないが、おおまかに、心が沈みがちなときに、運動をすることはプラスかマイナスかと言えばプラスだと言い切れるくらいには相関関係がある。逆に、閉じこもって体を動かさないでいるとうつ病のリスクが高まるというのもまた真である。
    運動がよいのはストレスに対する生化学的な回復力を強めるためだ。
    運動の「処方」は場合によっては薬やカウンセリングと同等の効果が認められるほどだとうい。

    人類学から「神話の変化」。
    古今東西の神話のモチーフに似通ったところがあるのは以前から知られていることだが、この記事でおもしろいのは、この分析に進化生物学の統計ツールを利用しているところである。例えば、狩人に追われた動物が星座になるといった神話の場合、追われる動物の種類が何か、狩人は一人か複数か、狩人は犬を連れているか、動物はどのように狩られるか、など、いくつもの属性に分ける。これら1つ1つを生物の遺伝子のように見なして、解析ソフトを用い、系統樹を作成する。これにより、各神話の近さ、成立時期の古さが見えてくるという仕組みだ。
    これを進めていくと、神話のつながりから、民族がどのように移動していったかなども見えてくる可能性がある。もしかしたら、民族同士の交流により、物品だけでなく神話の「交換」もあったのかもしれない。
    他分野の手法を使って意外なことが見えてくる可能性に期待したい。

    生物学から「ヒトの臓器を動物で作る」。
    これはなかなか議論を生みそうなトピックスである。
    世界中で、臓器移植を待つ人は多いが、臓器は十分に行き渡るわけではなく、常に不足状態にある。これを何とかするために、動物(特... 続きを読む

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