ルポ 児童相談所 ──一時保護所から考える子ども支援 (ちくま新書) [Kindle]
- 筑摩書房 (2017年1月10日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (211ページ)
感想・レビュー・書評
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児童相談所には一時保護所が付設されている。DVやネグレクトなど問題のある親から引き離された子供が一時的に保護される場所となるが、そこで子供たちがどのように過ごしているか、外からうかがい知ることは難しい。著者が10カ所近い一時保護所を取材し、その実情をまとめたのが本書である。
本書によると、この施設は上記のように親の問題で連れてこられる子供たちの他、本人の問題行動が理由で連れてこられた非行少年の受け入れ場でもあるため、まるで刑務所のような規律で子供たちの行動が制約されている場合も多い。また、その後の受け入れ先が決まるまでに長期間を要したり、決まったら決まったでいきなり遠方に行かされるなど、子供にとって良いとは思えない処遇も少なくない。本書はそういった一時保護所のあり方を報告し、問題提起している。
著者はその取材結果から、問題の大きい保護所とそうでない所の格差が大きいことを指摘する。介護の専門家もいれば元体育教師もいるという、職員の背景の違いも潜在的な原因として挙げられる。また、一時保護所からの行き先となる受け入れ施設もまた、所長や職員の資質や方針によってずいぶん異なる様子を示すようだ。国が決めたマニュアル対応で済む分野ではないだけに、志ある人の有無は大きく影響するだろう。
やや筆者の思い入れが強すぎる印象もあるが、こういう施設が存在すること自体まったく知らなかったので、良い勉強になった。問題の直接的な原因は上記のように背景の異なる子供がいっしょくたに扱われていることだろうが、さらに根本的な原因は人的リソース不足だろう。職員の数が不十分なら、とにかくトラブルを起こさないことが最優先されるのは理解できる。
大抵のことは、十分な人員と資金があれば解決できる。日本が子供のために税金をろくに使わない弊害がここに現れていると言って良いと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一時相談所の過酷さが取材とデータから浮き上がってくる。その上で職員たちの奮闘ぶりも伝わってくる。労作。児童相談所と児童養護施設、児童福祉審議会の関係を知りたかったがそれは別の書籍を買って調べてみたい。