火花 (文春文庫) [Kindle]

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  • 文藝春秋
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感想・レビュー・書評

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  • 又吉さんの作品を読んでみようと思ったきっかけは、又吉さんが書いた中村文則さんの「何もかも憂鬱な夜に」の解説を読んだ時だった。
    「何もかも憂鬱な夜に」を読み終わった後に大好き過ぎて興奮してたけど、何がどう良かったかは言葉では表現出来ないモヤモヤな気持ちで、又吉さんの解説を読むと、僕の感じた細かいところまで淡々と文章に書けて、読んでものすごく気持ちよかった。スッキリしたし、共感してくれる人がいるとわかった時の嬉しさもあって、この時初めて又吉さんの文章を読んだから、じゃあ、あの火花は読む価値あるなとあの時思った次第だ。

    実際に火花はとても素敵な作品だった。常に人間を観察して、思考して、時には角度を変えて見るとか、そうじゃないととても書けない作品だった。細かい表情や仕草を描写を使って人の心理を反映する書き方とか、とても初めて書くとは思えないくらい素晴らしかった。

  • 内在的論理を知るにはすごく良い。人がどのように考え行動するのか。この本を読んでいたら、ファンのナイナイ岡村も、ラジオでの失言は無かったと思う。

  • 創作する側と鑑賞する側が存在する作品には、お互いの共同作業が必要である。

    その中でそれぞれの立場の信念のぶつかりが生じる。それを美しく描いた作品だった。

    生きている限りバッドエンドはない僕たちはまだ途中だ。

  • やっと 借りれました。
    しかし 私にはあまりよくわからなかった。

    人の心や お笑いの内容などが 丁寧に描かれていましたが その笑いの つぼが 私には はまらなかった。

    そおいえば 
    過去の芥川賞作品の
    「蹴りたい背中」「蛇とピアス」も
    難解でした。

    芥川さんの作品も私には難解です。
    きっと 読み込む毎に 味わいが深くなるのでしょうね。

  • ‪ずっと読みたいなあと思っていた又吉の火花、芸人として泥沼の生活もそこから這い上がる過程もその先の華々しい光も全て体感してきた又吉だからこそ書ける芸人の見る世界を、ここに全てぶつけてやる!という気迫が感じられる作品だった。

    退屈だ、オチがよく分からない、面白くないと散々な素人意見も多くある。‬

    しかしそもそもこれは純文学である。

    ストーリーの起伏やどんでん返し、芸人を描いているからと言って爆笑させられるようなものを期待している人が多すぎたようだ。

    これまで芥川賞の作品など読んでこなかった人達が、やれ芸人が小説を出した、やれ芸人が芥川賞を取ったと色眼鏡で読まないでほしい。

    しかし本の帯が「300万人が笑って泣いた、アホで愛おしい青春物語、待望の映画化!」などと全く作品の良さをねじ曲げた誤解を与えるキャッチコピーを引っ提げてしまったのが大きな原因であるから100%無理解な読者が悪いというわけでもない。

    泥臭く汗臭く笑いを求めて必死で生きる芸人のリアルな姿に心を打たれる。

    またハーモニカ横丁など、東京の下町のノスタルジックな世界観に生活水準の低い生活を送る芸人達のリアルな姿を投影した美しい表現に惹き込まれた。

    映画も見たがうまくその下町の風景やリアルな生活水準の高いとは言えない芸人の生活を再現していて全く作品と違和感を感じる点もなく映画化は批評も多いが失敗だとは思えない。

    しかし小説での火花の私が好きなシーンのひとつで、徳永の汗と涙と唾の迸る怒涛の世界を覆す漫才に涙を流して拍手を送る神谷さんのシーンが映画になかったのが唯一残念であった。

    又吉の太宰治を崇拝する作風と芸人として生きてきたからこそ描ける世界がこの作品に全てぶつけられている。

    批評を飛ばすならむしろこれからではないだろうか。

    芸人以外のモデルで又吉はどんな世界を描くのか。

    今後の作家としての又吉の作品が楽しみである。

  • 芥川賞受賞時は読まず、今頃になって読んでいます。
    というのも、最近、著者が某動画サイトで投稿している「インスタントフィクション」という、ごくごく短いお話を深読みしていくものがとても面白く、(この人が書く作品ってどんなものなんだろう)と興味を抱いたことがきっかけでした。
    (お笑い芸人が書いた)「芥川賞受賞作」という前提があるので、一部では酷評されていますが、私は好きな作品でした。

    作品には著者の経験や考えが反映されると言いますが、本作『火花』はまさにこの著者でなければ書けない物語だなあというのが一番に感じたことで、
    「お笑い芸人て一口に言ってもいろいろあるよね、一発で終わっちゃう人もいれば、細く長くMCやってたり、バラエティで面白いこと言ったり、スベリ芸なんていうのもあるよね。で、その人たちのうちの一人を描いた作品がこれで、そんな芸人たちの生きざまってなんか花火大会の華やかなようで、最後に落ちていく火花にも似てるよね(華やかでありつつ、ちょっと哀しい感じ)」
    私は、そういうコンセプトなのかな、という受け取り方をしました。
    笑える小説だという前提では読んでおらず、どちらかというと描き出しは“正統派”という色合いが濃かったので、笑える部分はありつつも、実は深いことを言っている感じの小説かな、と想像しながら読んでいたら、下ネタとギャグが時々マーチしながら通り過ぎていきます(笑)
    堅苦しい人生の問いを並べるものではなくて、そういう問いはある一定残しながら、ときどき緩めるスタイルですね。このあたり、ちょっと最近の少年漫画っぽい運びだなと感じてしまいました(シリアスとギャグの比率がこんな感じだよな、という意味で)。

    成功とか失敗とか一口に言うのは簡単だけど、夢を追いかけている人たち(=芸人)。「その一人一人無駄じゃないねん、全員必要やねん」と登場人物・神谷が言っていたように、無駄とか非効率で片付けられるようなところに「夢」は無い。ギャンブルとは違って、でも一種の賭けのようでもある、芸人の世界。
    そういう妥協しなければならない反面、妥協したくない世界観を巧みに表現しているんですよね。

    冒頭、夢を追いかける芸人(徳永)の姿から始まって、その芸人が師匠を見つけ、一体化し、また分離して、一歩離れて師匠を見つめていく……という構成。
    その中で主人公・徳永が、当たり前だけれども気づけていなかった「自分らしく生きること」を発見するというくだりは、一見、神谷が食事代を奢ったり、自分が漫才に対して抱いている理想像を語る、といったことしかしていないのに対し、かなり大きな収穫であったように思えますが、徳永が神谷を師匠としたのは単に芸人としてではなく、「人としての真っ直ぐなところ」「自分が持っていない人としての一面」にも惹かれて弟子入りしたはず。
    面白さを追求した神谷が最終的にどうしようもなくなって見た目にテコ入れをし始めるや、絶句しながらも神谷を見守っていこうとする姿勢は既に単なる弟子以上のものがあって、神谷の面白さだけに純粋に惹かれていたのであれば、あそこで一緒に旅行するという選択肢は生まれなかっただろうと思います。
    単なる弟子だったのなら、「あの人も落ちぶれたな」ぐらいで終わるんじゃないかな、と。

    時折、匂いまで伝わりそうなほどの生活描写があり、それがまた鮮明で、劇的展開ではない話の中にアクセントとして恋愛模様が入ったり、決して美しいばかりではない芸人の生活が描かれていて、そこもまた良いなと感じました。ぐずぐず暮らしている二人が分かれて神谷が駄目になってしまうあたり、ものすごくリアルに描かれています。

    それこそ、この当時はそれほど世間的に騒がれていなかった、芸能人への誹謗中傷と、それに伴う自死についても触れられていて、そこに対する神谷、徳永の双方の意見があって、読者の意見があって、そこで議題(誹謗中傷についての考え)が一段階深くなるような感じも、私が好きなテイストで描かれているなと感じました。
    一旦、自分の意見を出してみる、という手法を取られている、というのでしょうか(適当な表現が見当たりませんが……)。

    この作品中では「有名人に対する誹謗中傷」という観点と同時に「夢を追う人と、それに対する世間の容赦ない声」という観点があり、"「実際にその世界に飛び込んだ人」と「外から見ている人」の世界には深い隔たりがある"という、以前読んだ心理学の本を思い出しました。

    余談ですが、私の中で神谷という人物はずっと、千鳥の大悟さんで再現されていました(笑) あの人だったら豊胸手術はないにしても、それに近いことは普通にやってそう(笑)
    主人公の徳永は又吉さんで再現されていましたが、それでも違和感はなく……この本を読んだ人に、誰を想像したか聞いてみたら面白いんじゃないかと感じましたね。

    それから、どこかで読んだレビューで神谷と徳永のメールの最後の「咽び泣く金木犀」とかは二人のその時の気持ちを表現したものじゃないか、という意見があったのですが、「その時個人が感じた即興の面白いネタ」もしくは「近況を面白く表現したもの」なんじゃないかと思いました。
    金木犀の香りを探して歩いている徳永が「泣き喚く金木犀」と打ったとき、「夥しい数の桃」と先に書いて寄越した神谷は八百屋の前にでもいたんじゃないか、という感じで。

    大衆向けエンタメ小説でもないし、プロットは単調でつまらないのかもしれませんが、独特の風味が癖になる感じとでもいうんでしょうか。
    他の作品も読んでみたいと感じた本でした。

  • ★3.5(3.50)2015年3月発行。5年前の芥川賞作品ということで、何度か読もうとしたが、なかなかお笑い芸人の世界にはついていけず、毛嫌いしていました。その後、著者は、オイコノミアや色んな番組に出演しお笑い芸人というよりは、ちょっとした文化人という感じでしたね。それもどうやら膨大な読書量に裏付けられていて、3000冊の本と2800枚のCDを持つという著者。凄いですね。この本自体は自伝のようであり・・・。井の頭公園が出てくるので、親しみを持って読めました。お笑い芸人の世界が垣間見ることができました。

  • いつか読みたいな・・・と思っていたら、電子書籍化されたので。
    不器用だけど一生懸命?清々しいわけでも、抉られるわけでもないけど、もやもやする読了感。
    人は、その一瞬一瞬、目や耳から入る情報を自分なりに解釈して、その時一番適切だと思った反応をする。なのに、器用だとか不器用だとか、その人らしいとかそうでないとか、いつの間にか、周りからもそして自分からも評価されて、その積み重ねで自分が出来上がってしまう。なぜだろう。なんて考えてみたり。

  • 芸人で本書ける人のいいところが詰まった作品だと感じました。

  • 読んだ本 火花 又吉直樹 20231129
     この本が出た日、会社の先輩に「これから会議だから、10時に着で本屋行って火花買ってきてくれ。なくなると困るから10時着な」と言われ、いい年して使い走りした思い出があります。そんな時に限って違う先輩にこれどうなってんのなんて10時過ぎちゃって、全速力で本屋に行ったら山積みのまんま、ピラミッドの模型のようでした。浜松町の駅中の本屋に会社さぼって買いに来る奴なんか居るわけないだろう。大体そこまで欲しかったら予約するだろう。なんて思いながらピラミッドの頂点をレジに持っていきました。
     そんな経緯が原因ではないんですが、なんとなく手に取ることなくきました。たまたまYOU TUBEで又吉の話を聞いてたら、なんか飾らない感じに好感を抱いて読んでみたくなったんです。
     思ってた以上に読み易くて、なんかYOUTUBEの又吉の通り優しい感じがしましたね。なんか登場人物に残酷になり切れない。悲しみや報われなさを描きながらどん底には落とさない。初めての作品だからか、そういう作風なのか。また別のを読んでみよう。

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著者プロフィール

又吉直樹(またよし・なおき)
1980年、大阪府寝屋川市生まれ。2003年より、お笑いコンビ「ピース」として活躍。2015年『火花』で第153回芥川賞受賞。代表作に『東京百景』『劇場』『人間』など。

「2021年 『林静一コレクション 又吉直樹と読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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