火花 (文春文庫) [Kindle]

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  • 文藝春秋
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感想・レビュー・書評

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  • いつか読みたいな・・・と思っていたら、電子書籍化されたので。
    不器用だけど一生懸命?清々しいわけでも、抉られるわけでもないけど、もやもやする読了感。
    人は、その一瞬一瞬、目や耳から入る情報を自分なりに解釈して、その時一番適切だと思った反応をする。なのに、器用だとか不器用だとか、その人らしいとかそうでないとか、いつの間にか、周りからもそして自分からも評価されて、その積み重ねで自分が出来上がってしまう。なぜだろう。なんて考えてみたり。

  • Audibleで鑑賞
    堤真一さんの朗読が素晴らしい、テンポの良い関西弁がなんとも芸人然とした印象。主要人物である主人公と神谷の演じ分けもとても良かった。Audibleの朗読でなかったらここまで没入できたか、と言われると難しかったかもしれない。

    『火花』というタイトルがなんとも皮肉が利いているというか、的を得ているというか。続けていくことの難しさはとても良くわかる。世間の注目を集め続けるのは難しい。そしてコンビを継続していくのも難しい。一瞬の火花のように華やかに咲いて、散る。そのような芸人さんは数多いるのだと思う。

    主人公と神谷さんの距離感はとても興味深く読んでいて面白いのだが、主人公が信奉する神谷さんの"面白"が、私にはどうにも分かりにくかった。面白さよりも刹那的な生き方ばかりが目について、共感が難しい。それぞれの人生を描く話なのでそれなりに長いのだが、その結末が神谷さんの乳房なのか。芸人の生き方という意味で、新しい世界を知ることができた気がするし、著者の来歴含め”ならでは”の作品だとは思う。ただその”ならでは”の空気こそが、あまり漫才に明るくない私には没入が難しかったポイントのように思う。

    ただそれは単に個人的な合う合わない、好みの問題で、作品自体はとても良いものだと思う。

  • ピースの又吉さんが書いた売れない芸人・徳永の話。生々しさがあって心をえぐってくるけどつい読んでしまいます。

  • 努力は、実らずともそれまでの自分を形作ってくれるものだと学んだ。
    物語を通して現実感があるが、神谷さんのぶっ飛び具合が如何に世間離れしているかが分かる。
    終盤のシーンが、すごく良かった。自分の中でカチッとハマった感じがした。

  • 感性と尊敬、これに従って生きた時、10年経てばそれが正しかったのかの答えがいやおなしに突きつけられる。
    芸人として、これが自分の思う「面白い」だ!と生きて、この人が「面白い」だ、と信じる。そしてそれは世間とずれている。
    若い時は自分を信じて自分だけのために生きる事ができるが、歳を取れば家族や家族になり損なった自分が残り、現実と向き合う事になる。
    人生の辛い事の一つ。

  • 人間の、葛藤や悔しさや蔑み、いろんな汚い感情と、それを持つ人間の美しい世界を味わった。
    この本の清濁併せ持つ空気感がとても魅力的で、この世界に入り込んでしまった。
    又吉さんの語彙力・言語化能力がすごい。映像でなく活字で、いろんな葛藤などを読めてよかった。

  • 「誰も笑ってませんでしたけど、神谷さんに褒められるのが一番嬉しいです」これは紛れもない僕の本心だった。(153)

    誰よりも神谷の才能を信じ、心から尊敬している、そんな徳永の視点から見る神谷は、とても魅力的な人で、不器用なところさえも愛おしいキャラクターだった。
    どこまでも真っすぐにお笑いに向き合おうとしてきた神谷が、何が面白いのか分からなってしまって、おかしな行動に走ってしまう姿はつらくて仕方なかったけど、たった一人、ここまで信頼してくれる後輩を持ったことが神谷の何よりの財産だなーと思う。二人で熱海に行くラストで救われた。
    芸人である又吉が書いた作品であることがまた重い。これは心地よい余韻が長引きそうです。

  • この本は、売れない漫才コンビの徳永と、型破りな先輩芸人・神谷の師弟物語です。

    主人公の徳永は、熱海の花火大会のイベントで神谷と出会い、その独特な芸風と人柄に惹かれて弟子入りします。神谷は、常識にとらわれない発想で笑いを作り出す天才。でも、人間的には不思議ちゃんで、何を考えているのかわからないところもあります。徳永は、そんな神谷に振り回されつつも、彼から「笑い」とは何か、芸人としてどうあるべきかを学んでいきます。

    私にとって、神谷の言葉や行動は、笑いの本質について考えさせてくるものでした。この本は、芸人という職業について深く考えさせてくれる本です。芸人とは、自分の感性や個性を表現する人。でも、それだけではなく、他人の笑顔や感動を作る人。そのためには、努力や研究も必要です。芸人は死ぬまで修行だと神谷は言います。芸人としての成長とは、自分の笑いを見つけることなのでしょうか。

    同時に、この本は、人生における師弟関係の重要性についても教えてくれる本です。師弟とは、単に技術や知識を伝えるだけではなく、心や魂を通わせること。師弟とは、互いに刺激し、支え合い、成長し合うこと。師弟とは、愛と尊敬の絆で結ばれること。この本を読むと、そんな師弟の姿が目に浮かびます。

    又吉直樹は、独特な文体で、繊細な心理描写と軽妙なユーモアを織り交ぜながら、物語を紡ぎ出します。徳永と一緒に神谷と出会い、彼の言葉や行動に触れると、まるで自分も芸人になった気分になります。そして、笑いとは何か、人生とは何かについて、考えるきっかけを与えてくれます。

    『火花』は、「おもしろさ」とは何かを探求したいすべての人にオススメしたい作品です。この本を読めば、新たな笑いが生まれるかもしれません。

  • 静かに、けれど力強く、美しく咲く夜の花のような話だった。
    また読み返したい。

  • 神谷さんって
    誰なんだろう。

    お笑い芸人が書いた、お笑い芸人を主人公にした物語
    と言うことで、やはり登場人物に自分を投影していたり、
    周囲の人に誰かを重ねながら書いているのかな、と
    思いながら読むうちに、神谷さんと言う人物は
    主人公が主人公自身の人生に求めていた概念なのかな、
    と言う気がしてきた。

    そこに神谷さんがいるだけで、周りの風景に溶け込まない
    空間が出来てしまうこと。
    主人公がどうしようもなく憧れていたこと。
    神谷さん自身は周りの評価よりも自分の生き方を
    真っ直ぐ突き進んでいる人物像だと言うこと。
    少し性格が変わっていること。

    どの個性をとっても、
    主人公がお笑い芸人ではなかったとしても、
    人生のどこかのポイントで出会ってしまったら
    いっとき憧れてしまわずにはいられない存在な気がする。

    私もできることなら、神谷さんのように、
    特別に秀でた何かが欲しいと読んでいて思ったし、
    この小説の主人公もいつも渇望していた。

    現実と夢と社会と世界の中で、
    自分の人生を選択しなくてはならない時、
    神谷さんを見るか、過去の自分を振り返るかで、
    道はかわるんだろうなぁ。

    作者さん、最後にしっかりと
    読者を現実に引き戻してくれてありがとう。

著者プロフィール

又吉直樹(またよし・なおき)
1980年、大阪府寝屋川市生まれ。2003年より、お笑いコンビ「ピース」として活躍。2015年『火花』で第153回芥川賞受賞。代表作に『東京百景』『劇場』『人間』など。

「2021年 『林静一コレクション 又吉直樹と読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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