新潮 2017年 04月号

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  • 新潮社 (2017年3月7日発売)
  • Amazon.co.jp ・雑誌
  • / ISBN・EAN: 4910049010471

新潮 2017年 04月号の感想・レビュー・書評

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  • これぞ純文学といった感じの小説でした。
    言うまでもなく、「火花」で華々しくデビューを飾り、芥川賞まで獲った又吉直樹の受賞後第1作。
    今回は恋愛小説です。
    これが読みたくて、「新潮」4月号を買いました。
    我ながらミーハーですね。
    さて、本作です。
    主人公で劇作家の永田は、東京の街中で沙希と出会い、やがて一緒に暮らし始めます。
    恋愛とは言い条、そこは又吉のことですから、すんなりとはいきません。
    第一、出会い方からして異様です。
    かつて「幽霊」と呼ばれたこともある永田は、街中で画廊を覗き込む沙希を見つけ、「この人なら自分を理解してくれるのではないか」と思います。
    そして、沙希の隣に立ち、こう声を掛けます。
    「靴、同じやな」
    沙希は「違いますよ」と答えます。
    永田は重ねて言います。
    「同じやで」
    完全に危ない人です。
    ただ、沙希は天性とも言える優しさで、ナイーブで不器用な永田を愛そうとします。
    それに十分に応えられない永田。
    純文学における恋愛小説の定型的な説話構造を踏まえながら、又吉の筆は繊細に、時に軽妙な筆致で二人の関係をすくい取っていきます。
    先日放送されたNHKスペシャル「又吉直樹 第二作への苦闘」でも紹介されていましたが、中盤で永田が沙希と手を繋ごうとする場面が印象に残りました。
    手をつなぎたいという一言すら、すんなりとは言えない永田に、沙希はこう言います。
    「本当によく生きて来れたよね」
    ジンと来ました。
    永田は劇作家としてなかなか日の目を見ません。
    お金もなく、実質的に沙希のヒモとして鬱屈した日々を送ります。
    そこへ才能に恵まれた小峰という劇作家が現れます。
    永田は小峰に嫉妬します。
    その嫉妬を巡る永田の考察がまた興味深い。
    長いですが、引用します。
    「自分の持っていないものを欲しがったり、自分よりも能力の高い人間を妬む精神の対処に追われて、似たような境遇の者で集まり、嫉妬する対象をこき下ろし世間の評価がまるでそうであるように錯覚させようと試みたり、自分に嘘をついて感覚を麻痺させたところで、本人の成長というものは期待できない。他人の失敗や不幸を願う、その癖、そいつが本当に駄目になりそうだったら同類として迎え入れる。その時は自分が優しい人間なんだと信じこもうとしたりする。この汚い感情はなんのためにあるのだ」
    読み手である自分にまで鋭い刃を突き付けられているようで、胸が苦しくなりました。
    うん、いい小説です。
    というか、かなりいい小説だと思います。
    大変な重圧がかかる中で、よくこんな作品を書き上げたものだと感服するほかありません。
    やっぱり又吉はいいなぁ。

  • 巻頭を飾る又吉直樹の『劇場』。それに惹かれて手に取る。芥川賞受賞後のこの新作も、やはりやさしさと厭世観に満ちている。登場人物達の軽妙な会話は漫才のように面白くネタを書いていた彼ならではの得意技ともいえる。主人公のダメンズぶりは太宰の「人間失格」の葉蔵を想起させる。が、
    破滅に向かって進むわけではない。結末がいい。 
       

  • 又吉先生の「劇場」のみ読む。今回もまたなんとも言えない人間が出てくるぞよ。悲しいくらいなんとか、って話だなぁ。その「なんとか」をみなそれぞれ、読者が見つけるのでしょう。

  • 旅先の夜、宿にて「劇場」と格闘。血ミドロである。
    回復ののち、単行本で再戦予定。

  • 火花が面白かったから今回も期待して読んでいたのだが期待を上回ることはなかった。主人公がクズ。彼女はいたいけな感じなのが好き。
    又吉の文章は好きなので、新作が出たら読むんだろうな。又吉最高<3

  • 又吉 直樹さんの劇場@新潮 2017年 04月号 を読みました。著者の第2作目の小説ですね。
    大変面白く読みました。皆さんにおすすめしたい作品です。

    作者の処女作『火花』は、大変注目された作品なので、2作目の世間からの期待は大きかったと思います。
    前作『火花』は、後半で非常に変化を伴う作品でとてもユニークに感じたのですが、今回の作品は
    正統派の青春恋愛小説で、意外と思うのと同時に楽しく読みました。

    今回の作品の主人公は、売れていない劇作家です。彼は、自分の意識の高さを誇示するために前衛的な作品ばかりを書く人間ですが、大成していません。また、金銭的にも自立しておらず、いわゆるヒモです。周囲から守られていることを自覚しながら相手を攻撃し、それでいて愛されたいと熱望している弱い人間ですが、私はこういった人間を愛おしく感じます。又吉さんもまた、人の弱さを肯定的にみられる目線を持った作家であると感じました。

    > 田所の空返事は、もしかしたら自分の予期していないことが進行していて、その一端を自分が担ったのかもしれないという曖昧でいながら正確な感覚からのもので田所はそれには気づかないふりをして、あくまで自分はプレイヤーに徹することを気づかないふりをして、あくまでも自分はプレイヤーに徹することに決めたようだ。役者っぽいなと思った。

    又吉さんは人の内面の精神性を深く言語化できる力量を感じます。言葉を重ねること、文章の骨太さを得たように見えます。

    >青山が手際よく、その場にいる人たちを褒め、相手の自尊心を満たしながらうまく立ち回っているのを見ていると、自分ではない誰かの意思で洋服も思想も変えられてしまう着せ替え人形のように見えて恥ずかしくなった。
    彼は、一通りの社会性を身に着けることが芸術家としての自分のアイデンティティに関わる問題と考えているようである。しかし、小峰という自分よりも高い才能をもった人間がいることを認め、自分の限界を知ったように見えます。主人公が現実と自分の差を実感した瞬間であろうと思います。

    >問題があるとすれば、東京で暮らす男女というテーマが、同時代の別の作家によって、ある種の滑稽な悲劇として、あるいは神話のようなものの一部として、作品化されてしまったことだろう。この主題を僕は僕なりの温度で雑音を混ぜて取り返さなければならない。

    最後に、彼は小峰の作品を受け入れ。自分の作品(人生)と向き合うことを受け入れたように感じます。また、一方で彼女との関係性をできることならば維持したいとう浅はかさも感じるやり取りをです。著者は彼のメンタリティの弱さを愛しているのでしょう。

  • もちろん「劇場」狙いで購入・読了。
    あれだけのプレッシャーの元、書き上げた一篇。「東京百景」の頃からの匂いもして、「火花」より、私はこっちが好きだった。

  • 又吉さんの「劇場」を読んだ。序盤が全然面白くなくて、学生時代のくだりは説明くさいし、いちいちめんどくさい突っかかりがあって、これ最後まで読み切れるかな…と思ったけど、最終的に面白かったので不思議。「火花」とは違う視点の話なんだけど同じ空気感。作者の持ち味なんだと思った。
    儲からないアマチュア劇団を主宰している主人公と、優しさの塊みたいな彼女の話。ストーリーに新鮮さというか意外性はなくて、ラストもそうするしかないだろうなという展開だった(別れて彼女が地元に帰る)けど、これこそ作中で触れられていた「のんきな奴等がふざけ合いながら何気ない日常を過ごし、でもその心には深刻な苦悩を抱え、それが表出されるのは必ず決まったように後半で、最後は無理やり泣かそうとするようなもの」だった。作中ではこれを、頭ひとつ抜きん出た別の劇団がやって主人公は嫉妬しながらもうっかり感動してしまうんだけど、この小説はそれをやろうとしているのかなと、そういうことを考えた。
    作中で何度も出て来る演劇論は、作者の持っている芸術論なんだろう。創作とは何かと繰り返し問うている姿勢が作品の中にあった。面白かったと思う。

  • 又吉直樹の「劇場」を読む。 ちょうど、ララランドを観ていたので世界観が全く真逆だなと感じた。
    上京して都会で済む男女の話だけど、ありがちなんだけど少し違和感があった。恋愛小説なのに性的な描写が皆無だったこと。著者本人が意図的にそうしたのかわからないけど、想像がすごく広がるというか、主人公と彼女には性的な想像が浮かばなかったけど、彼女とバイト先の店長、という言葉にはすごく何だか、何かあるんじゃないかと想像してしまった。
    主人公は本当にクズなんだけど、でも主人公と彼女の痛々しさがリアルに、でもキラキラしてるように見えた。

  • 又吉作品が読みたくて、書店を何件も探し回っても完売で見つけられなかった本。東京の義理の母にも話して探してくれてようやく読むことができました。
    又吉すごいなぁー。読んでると、又吉はこんな感じなのかなーと思えるような箇所が多々あり、そこも楽しかったです。

    又吉先生!大好きです!

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