みかづき (集英社文芸単行本) [Kindle]

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著者 : 森絵都
  • 集英社 (2016年9月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・電子書籍

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みかづき (集英社文芸単行本)の感想・レビュー・書評

  • 昭和36年、用務員だった大島吾郎は塾の共同経営を赤坂千明から誘われます。本書は、夫婦となった吾郎と千明のおよそ半世紀の悪戦苦闘を描く家族三代の大河小説です。
    この小説の第1の読みどころは、半世紀の中でめまぐるしく変わる文部省の教育政策に学習塾がどう対応してゆくかです。詰め込み教育への批判、ゆとり教育への転換、その方向修正の中で学習塾=家族は翻弄されてゆきます。

    私事ですが、学生の頃、小さな学習塾でアルバイトをしていました。お父さんが塾長、お母さんが経理部長。朝は自分の子どもを学校に送り出し、昼は教室のメンテ、雑務、家事、夜は4時から9時近くまで授業、授業の後は父母からのクレーム処理、休日は補習授業や学力テストなどなど。一般の家庭とはかなり違う学習塾経営には、小説の題材になるようなネタはたくさんあるように思います。
    本書も、夫婦間の葛藤、多忙ゆえの親子のすれ違いなど、学習塾を経営するために発生する問題を淡々と描写します。これが、第2の読みどころです。

    個人的に気に入ったのは最終章。教育格差をめぐる青春小説といった印象です。最後の1ページは、ベタかもしれないけど、目頭が熱くなりました。吾郎と千明の人生が濃縮された秀逸なラストシーンと思います。

    本書はハードカバーで472ページ。扱いにくい重さです。それでも読了後は登場人物と別れるのが辛くなりました。お勧めの★★★★。

  • 〝常に何かがかけている、みかづきの様な、女系家族〟 塾教育を宿命として、それぞれの教師人生にもがく、三世代ドラマ。 戦後から現在までの教育現場と、学校と塾と文部省の難しい関係性も、ドラマを辿りながら追体験。 あまりに噛み合わない、家族間の歯車と、作品のボリューム感に、なかなか難儀したが、読後の清涼感で報われた思い。

  • セールでコミックを買い込み読み疲れたので、寝る前にちょっとだけ読もうと、何となく未読コレクションから選択。 結果大失敗。読む手が止まらなかった。おかげで最後まで一気読み。
    大筋は知っていたのだが、最初はあれ?塾経営の話だったの?と戸惑いながらページを進めた。塾経営夫婦の心温まる話と思い込んでいたのでw しかし、このお話無駄が一切ない。

    吾郎(ぜひ、同名の方に演じてもらいたいw)の視点は塾が成功し、一企業として成り立つまで。籍は抜かずに、ここで袂を分かつ妻の千明が次の視点。 まあ、何とも強気でやり手で。どうにも彼女が苦手だった。長女の蕗子同様「ぜったい許さない」と思い、いつ罰があたるんだろうと読み進めたが、千明は順当に年を重ねていく。そしてその年月は彼女を徐々に変えていく。 最後の視点は、蕗子の長男一郎。 ここで現代が舞台となる。
    吾郎も一度退場するし、蕗子、蘭、菜々美という娘たちも時折しかでてこない。 塾の講師陣も唐突に登場し去っていく、それぞれに詳細のエピがあるわけでもない。 徹底して本筋は「塾」「文部省」。 なのにエンターティメントに仕上がっている。 お見事としかいいようがない。

    ただ、これだけ教育に熱心なご夫婦が子育てにあまり力を入れたようにはみえない。教育と子育ては違うのだろうか。 国(文部省)民(塾)個(家庭)三位一体が理想であるならば、今この国はまったくもってバラバラだ。この3つをコネクトするという意味をもつならば、一郎くんの試みはぜひ成功してほしい。

    ゆとりと聞くと思い出すことがある。息子が教科書を片付けていなかった。夫がその本を見て、こんな雑誌いらないんじゃない?と言った。 私「それ、教科書なの」 え?!
    あまりの薄さに夫呆然。塾や中受にあまり乗り気でなかった夫もこれ以降、ちょっと考え直したw

  • やりたいことをやり遂げるには犠牲が必要なんだろうな。ガツガツするの嫌だな。ただ、のんびり子供の成長を見守りたい、と思う。

  • 塾業界の黎明期から現在の激動の歴史を、ある家族の三世代の活躍を中心に描く。最後の謝辞に「元山田義塾塾長の山田圭祐氏」の名が!元塾生、元バイト(特にチーフ)は本屋に急げ!今がその刻!今日がその刻!ときめきの刻!山田義塾!
    僕たちが知る塾の形態はその時代の要請を見事に反映したもの(ある種バブリー)だったことを再認識すると同時に、最後(三代目)の現在を舞台にした取組には胸が熱くなった。やっぱりこの業界面白いよねー。
    テレビドラマ化希望。

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