- Amazon.co.jp ・電子書籍 (144ページ)
感想・レビュー・書評
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デビュー作の「こちらあみ子」は、あみ子の強烈なキャラクターに目を奪われました。
あみ子が作品をぐいぐいと引っ張っていった印象があります。
ただ、今村夏子は人物造形だけじゃない、構成力も抜群です。
本作「あひる」を読んで、そう感じました。
60枚くらいの短編ですが、物語の運び方が本当にうまい。
この枚数で、こういう話を書くなら、この書き方しかないだろうと。
逆に、こういう話を書くなら、この書き方で、この枚数しかないだろうと。
完成度の非常に高い短編です。
ある家族が知人から頼まれてアヒルを飼うことになる話。
家族は、医療系の資格を取るために勉強に励んでいる主人公の「わたし」とその両親の3人です。
「わたし」には、離れて暮らす弟がおり、その弟は結婚していますが子どもがいません。
それが「わたし」の両親にとって悩みの種でもあり、子宝を授かるよう毎日欠かさず神様に手を合わせます(両親はどうやら新興宗教の信者のようです)。
さて、この家族の家でアヒルを飼ったことで、近所の小学生たちが家にやって来るようになり、ずいぶんとにぎやかになります。
ところが、アヒルは病気にかかって病院に入院してしまいます。
2週間後に帰ってきたアヒルは、しかし、どうやら前のアヒルとは違うようです。
気づいているのは「わたし」だけ。
何だか胸がざわざわします。
そして、この名状しがたい「ざわざわ感」が、今村夏子の魅力のひとつでもあるんです。
「わたし」の母が、子どもたちのために誕生日会を企画し、料理をたくさん作ったのに誰一人来なかったというのも考えてみれば不思議。
でも、なぜ誰も来なかったのかは明かされません。
それどころか、母も「わたし」も、誰も来なかった原因について積極的に考えようともしません。
これは何かのメタファーなのか?
夜中に「わたし」の家を訪ねてきた男の子も不思議。
誕生日会のために母が拵えたカレーやらケーキやらをたらふく食べて、突然消えるように帰って行きます。
これもやっぱり何かのメタファー?
読み手は宙づりになったまま作品世界にどんどん引き込まれていきます。
ここからはネタバレなので、読みたくない人は読まないでくださいね。
いいですか。
いきますよ。
この後、飼っていたアヒルが死にます。
そして、家族とは離れて暮らす弟夫婦に、待望の赤ちゃんができます。
半年後には弟夫婦が赤ちゃんを連れてこの家に引っ越してくるため、増築工事を始めました。
アヒルのいた小屋は壊され、「庭にブランコを置くのだそうだ。」というさりげない一文で作品は結ばれます。
赤ちゃんは、アヒルの生まれ変わりでしょう。
生まれ変わりではなくても、アヒルが赤ちゃんに取って代わられるのは事実。
こうなってくると、やっぱり先ほどの誕生日会や男の子は何かを暗示しているのだと考えざるを得ません。
ですから、本作は他の作品にはない大変に複雑な余韻を残して終わります。
そして気づくのです。
今村夏子という作家は、唯一無二の作家だと。
併録されている「おばあちゃんの家」「森の兄妹」も、静かな作品ながら、やはり胸をざわつかせる佳品。
次は、昨年出版された最新作の「星の子」を読みます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あっという間に読めてしまう3つの短編。
やさしく簡単な表現で書かれているので読みやすいが、
なぜか引っかかりを感じる、
ちょっと胸がざわざわする、不思議なお話だった。 -
日常の景色を使って何かもっと奥深いことを伝えようとしているところに、ちょっと怖ささえ感じた。その伝えようとしていることは何なのかまでは、読み取れなかった。
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短編が三編収録されている。
150ページ弱の薄い本だから一時間くらいで読むことができるはず。ぼくらが育った昭和という時代の田舎の生活を彷彿させるような、小学生が書いた作文の延長線上にあるような短編。
なにがいいのか、うまく伝えるのは難しいですが、三つの短編のなかに流れる得体の知れない「優しさ」みたいなものが、ぼくはそれなりに好きですね。 -
初めて読む作家さんでした。
経験したことはないはずなのに、読んでいるとなぜか、懐かしいような、自分も同じ経験をしたかのような不思議な気持ちになりました。 -
相変わらず不穏な人や人間関係を描いている。相変わらずモヤモヤ感はあるが、同著者の他の本よりその要素が少なく、ちょっとわかりずらいかも。
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「あひる」よりも「おばあちゃんの家」「森野兄妹」がゾッとして良い。文体は柔らかいのにいつも世界観が怖い。得体のしれない作家さん。
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kindle ultimateにて
なんだろう
ゾワゾワする
怖い
その先の物語が、答えが欲しい
ホッとしたい -
「あひる」(今村 夏子)を読んだ。
「あひる」「おばあちゃんの家」「森の兄妹」の三篇。
沁みる。
今村夏子という名前、しっかり覚えておかなくちゃ。 -
なかなかピントが合わない望遠鏡を覗いているような気分になった。
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