仕事なんか生きがいにするな 生きる意味を再び考える (幻冬舎新書) [Kindle]
- 幻冬舎 (2017年1月27日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (150ページ)
感想・レビュー・書評
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タイトルからよくある自己啓発やビジネス書の類かと思ったが、かなり真面目な哲学や心理学の話だった。
’歴史や経済学や哲学などある程度知っている前提で細かな解説はないまま考察がすすんでいくので、普段あまり本を読まない人にはやや難解かも)
読んでいるとなるほど、納得できる部分が多い。
一生懸命働くことは正しく、当たり前で、働らけ!と言われるように働くのは当たり前の大前提となっているが、ローマの時代には労働とは、忌むべきものであり、奴隷にやらせるものだった。
そして、マルクスが言うように、分業により、個々の仕事は効率化・細分化され「つまらない」ものになった。
靴ひとつつくるにも、昔のように最初から最後までひとつひとつの作業を一人の人間がすることはなくなった。
それでは短時間に大量につくれないから。
仕事はつまらなくなったのに、いまだに勤勉に働くことが大前提の美学がまかり通っている。
そして、物事を分析し考察し合理的に考えるということは「正解」があるということ。つまりは、誰がやっても同じ結果になる。自分でなくても良い。
効率化は何故これをするのか「意義」を求める。何故勉強するのか。何故これをするのか。
子供の頃の遊びは違う。「楽しいから」それだけ。「意義」などない。
効率化や合理化を尊ぶ西洋の教育の中で生きてきた我々は、何が楽しいのか、自分が好きなのか、わからなくなってしまった。
高度成長期のように、みんなで目指すべき、努力するべき「正解」があったときは良かった。
けれど、今はそれがない。
そして、それがない今、自分がないまま成長してきたから、ちょっとしたことで簡単に躓く。
では、何をしたら良いのか。
著者は言う。「遊べ」と。
楽器でも何かを始めるときにプロに教わるなど、そんなことをしなくてよい。ただ自分のやりたいようにやれ。楽器をつくってもいい。なんの計画も立てずに買い物をして買ったものを見てから料理しても良い。
我慢することが正しいと教育するが、そんな生き物として歪な方向に従うのではなく、心が向くまま楽しく生きよう。
本を読んで思い当たる部分が多く、かなり考えされられた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイトルから、私はもう少し軽い印象を受けていたのですが、それがどうして、すっごく濃ゆい本でした。
また、思っていたより・・・最近の読書の中では尖った論調で、
「お、おう」と、感情にちくちくきました。
まず、「金」「生活」のために仕事をするのは、極論、高等な人間ではない。というような感じで。
そこから、芸術書のような芸術論に話は及びます。
大衆におもねった、「キレイ」「ココチガイイ」それだけの作品は本物の芸術にあらず。
苦悩の果てに生み出されたもの、それが滲み出ているものこそ、真の芸術。
ーと、ここまで書きましたが、著者の主張を私も完全には正しく理解出来ていないと思います。
私の曲解もあるかも。
読み始めは、引用が多く、ちょっと私には読みづらく感じました。
著者の文章に慣れる間もなく、次々色々な人の論文、論説、主張が引用されていきますので。
しかしそれだけに、読み応えのある一冊とも言えました。
高等遊民というのは、現代においては、一握りの特権階級にのみ許された生き方ですね。
多くの人間は、アリなんですよ。
芸術を堪能することもなく、素晴らしい歌声を横目に、明日の飯のために働くだけのアリです。
生きる意味・・・私には著者の提示する生きる「意味」は、解することはできれど、そして憧れることはあれど、実践できず、あぁ、結局生きるのは砂を噛むようなもの・・・そのように感じてしまいました。 -
仕事は元来、楽しいものであった。
狩猟時代の仕事といえば、狩りがメイン。頭を使いながら、身体も使う。今日のご飯がかかっているので、必死だっただろう。
現代人は、価値のあることばかりしたがる。
卓球やプラモデル作りなど、収入やキャリアに関係のない無価値だと考えることはしない。
そんなだから、人生面白くないのだ。
ちなみにうつの人は、価値のあることしかしようとしない傾向にある。
子供のころを思い出してほしい。
計画も立てず、ただただ夢中で遊んだ日々を。
ご飯を味わって食べ、モノを作ることに必死だったはずだ。それこそ価値なんて、考えていない。それでも面白くてしかたなかった。
そもそも人生そのものに、価値なんてない。
ただ時間が流れていき、そのなかで生きているだけだ。 -
最近悩んでいた、というか興味を持っていた、自分にとっての仕事のあり方について、どストライクの内容だった。
第一線を若いうちに退くことで、生きがいがなくなってしまうのではないか?という不安を感じていたが、そもそも生きる意味を、じぶんの内側、しかも職業に限定することの狭さに、問題があったことに本書を読んで気づいた。
意味は「ある」「ない」ではなく、意味を与えるのは自分自身の主体性であり、その対象が、仕事以外でも(もちろん仕事でも)よい。という風に整理できた。
星野源も「自分なくし」という言葉をエッセイの中で語っていたが、本当に意味のある時間は、自分のためとか、意義(コスパがいい、役に立つ、ただ面白おかしい、など)があること、ではなく、じぶんの外にあるものであり、それはたとえば芸術(最近ではリベラルアーツという言葉をよく聞く)なんだろう。
自分にとって意味があること、意味を与えたくなるものってなんだろう、と考えるいいきっかけになったのと、医局をやめてフリーランスで医師をする上でどう仕事と向き合えばいいんだろうか、と狭い視野になっていた自分から脱却できた。本当にこのタイミングで読んでよかった。
仕事は決して無駄な時間じゃないし、人生のスパイスであることには間違いない。医師としての仕事はめちゃくちゃ面白いし楽しい。でも、それで人生が埋め尽くされてしまうのはバランスが悪いのは間違いない。いや、人それぞれ好みのバランスはあるだろうが、もともとの働き方は自分、そして自分の家族にとってはバランスが悪かった。
人生のうち、自分が心から楽しかったり、興味がわいたりするものに接することができるための時間の割合を「主体的に」増やしていきながら、今後も生きていきたい。 -
生きる意味を達成感に求めない、というのは少しギクリとした。そこで頑張ったからヨシでなく、地に足つけてじっくりと楽しめる何かをどう見つけていくか。本質はそうだし、優秀な人はそうなんだろうけど、草莽にはなかなか…。
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⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 再読したい
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 再読しないが良かった
⭐︎⭐︎⭐︎ 普通 -
有意義病 → 「成長しなきゃ」とか「時間を無駄にしない」とか、ある種の強迫観念に捉われて、有意義な時間を過ごせなかったときに罪悪感や焦りを感じてしまうなら、この本を読むことで考え方を見直すヒントになるかも
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読み始めたばかりだけど、私が今欲しい言葉たちなのではないかと期待が増していく。
棘も心地良い -
夏目漱石の高等遊民やビクトールフランクルの心理学が出てくる