神戸栄町アンティーク堂の修理屋さん (双葉文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 4.0

  • 「丸の内」も「動物病院」もまだ既刊読み切ってないけどもう一つkindle unlimited対象になってるやつを読んでみた。舞台は神戸のアンティークショップ。舞台がみんな違うのをきっちり書くのは大変そうだ。しかも意外だったのは,ファンタジー要素がまったくないこと。こういう作品も書かれるのね。しっかり読み応えがあった。
    子供の頃から大好きだった父方の祖父・万から,アンティークショップとそれが入っているマンション1棟まるごと相続した高橋寛人。東京の会社でデザインの仕事をしていたが,仕事に疲れていたこともあり退職して神戸に移った。そのアンティークショップの一角を借りて何でも修理する仕事をしている女性がいた。後野茉莉という冗談のような名前の女性だがどんなものでもしっかり修理してしまうという評判の修理やさんであった。寛人はアンティークの知識がまったくなく,アンティークへの愛着も特になく,いくら血縁とはいえ自分が後継者として選ばれたことに違和感を持ちうじうじ悩んでいる。このうじうじ具合と自己肯定感の低さが男性の主人公としてはいささかイライラする。
    そんなアンティークショップを舞台に日々起こるちょっとした事件を描いている。
    最初の話は,寛人の東京での失恋の後始末の話。会社のエースとも言える先輩女性社員に憧れていたら何故か付き合うようになるのだがしばらくしてすれ違うようになり連絡もうまく取れなくなり自然消滅してしまった関係。彼女はまだ付き合ってる頃高額なアンティークの腕時計を寛人に預けており。返さないまま別れてしまったが,何故か壊れて動かなくなっており返すに返せずそのままになっていて,それと一緒にしっかり区切りもつけられていなかった。茉莉にそうだんしたら一緒に返しに行こうと言われる。この話の元カノの心情はイマイチ理解ができない。
    次の話。茉莉に頼まれて,茉莉の部屋にドライバーを取りに行った寛人は,茉莉が個人的にベータのビデオデッキを修理していることを知る。ベータなんて若い人は知らないだろうな。そもそもビデオテープだって知らないかも。茉莉が修理してるのは内容の不明なベータ・カセットがあって確認しないと処分できないからだという。
    寛人は修理作業に興味を持って,茉莉の部屋で作業を見学し,完了したあとは,一緒にビデオの中身を見てみることに。その中身とは...茉莉の意外な正体があきらかになってびっくり。
    次の話。額装から外れてばらばらになったジグソーパズルを持ち込んでパズルを完成させてくれと,修理屋の管轄ではないことを依頼して,断っているのに強引に押し付けて帰ってしまった男。パズルは事故でなくなってしまった娘が完成させたものだったが,壁にかけておいたものが落ちてばらばらになってしまったという。娘が亡くなって依頼抜け殻のようになってしまっているらしい男。娘の生前の思い出の品に執着しているようだ。しかし他人が完成させるのは違うだろうという話。
    次の話。祖父が大切にしていたバイオリンが店には飾ってある。傷んでしまっていてバイオリンとしては良い状態とは言えないようなものだが,寛人が店に遊びに来てる頃からある品物で祖父が大切にしていた印象が強く,寛人としても思い入れが深い。ある日
    茉莉が連れてきた若い高校生のバイオリン奏者が,自分は寛人の祖父からバイオリンを譲り受ける約束をしたと主張する。条件はコンクールの入賞とそれなりにふさわしい器を身につけること。このガキがワタシ的には受け入れがたい。こんなのが高校生とは思えん。いいとこ中学生だ。周りの大人が甘やかしたせいで精神的な成長が年齢に追いついていないのだろう。ちゃんと叱らんとダメだろ。寛人の卑屈な態度も苛立たしい。しかしなぁ今どきではこんなのがあと数年で成人するわけなのだからいくら小説とはいえ嘆かわしい。この話は最後まで不愉快なので要約するのも嫌。
    次の話。茉莉の元へ2週間に1度ほど同じ男性から送られてくる封書。寛人は相手がどういう人なのか気になってしかたない。などと思っていたら,その男性は山の方でハーブ農園を営んでいる人のようで,そこに一緒に1泊で行こうと茉莉に誘われる。男性はソフトも交流があり,アンティーク堂のかつての常連でもあったという。

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著者プロフィール

山口県出身。2011年『シミ。~純愛、浮気、未練、傷跡~』(宝島社)でデビュー。シリーズ作品に「丸の内で就職したら、幽霊物件担当でした。」「大正幽霊アパート鳳銘館(ほうめいかん)の新米管理人」(以上、角川文庫)、「神様たちのお伊勢参り」「さくらい動物病院の不思議な獣医さん」「神戸栄町アンティーク堂の修理屋さん」「神様の棲む診療所」(以上、双葉文庫)がある。その他に『不良坊主と見習い女子高生の霊感メソッド 祀町(まつりまち)オカルト事件簿』(KADOKAWA)、『リキッド。』(講談社)など著作多数。

「2023年 『丸の内で就職したら、幽霊物件担当でした。14』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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