教養としての「世界史」の読み方 [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • Audiobook にて。
    古典×世界史が教養の基礎をつくるという主張。

    「馬の存在の有無」が文明の発達スピードに大きく影響するという。
    汽車が経済を大きく発展させたという話は経済学でよく聞くし、馬が文明に貢献したというのも頷ける。

    島国の日本ではあまり意識しない「民族移動」に関する話が多くて面白い。
    言語、宗教、生活習慣が混ざったアメリカやヨーロッパでは、トラブルも多いとは思うけれどイノベーションが起こる面白さがある。

    中国では都市が本国、農村が植民地のように見えるほど経済格差があるという。
    戸籍が区別されて、農村国籍をもつ人は都市に移転することを原則禁じられているという話に驚いた。

  •  世界史を教科として勉強する時は、どうしても暗記するだけになりがち。なので、こうしたひとつの大きな視点から、全体を俯瞰する形で世界の歴史を眺めるのは新鮮でした。読みやすくわかりやすい文章で書かれていることもあって、大変面白く拝読しました。
     つまりは『歴史は繰り返す』ということでしょうか。過去、世界がたどった歴史から、今現在、世界の置かれている現状を読み解くことができる。かつ、未来をある程度見通すこともできると……。

     ★がひとつ少ないのは、「だったら、日本の現在と未来については、どう読み解けるのかな?」という興味を持って読み進めていたのに、それについてはほとんど触れられていなかった点が不満だからです。

     この本のなかでは、日本をカルタゴになぞらえられています。戦争で多くの領土を失ったにもかかわらず、経済で国を立て直し大国に成長したカルタゴ。しかし、傲慢になったカルタゴは周辺諸国と小競り合いを繰り返すようになり、それを問題視したローマ人によって徹底的に国を破壊され、民族を殲滅されます。
     ええ? 日本がカルタゴ? 日本は周辺諸国と小競り合いなんてしてませんし。ちょっかいかけくるのは、周りの国の方でしょう? 憲法でがんじがらめになっている日本に、そんな傲慢さは現実的ではないと思うのですが。
     たぶん、そこらあたりがこの本の主張に合致しないがために、日本についてはあえて詳しく触れなかったのかなあって、正直、思ってしまいました。
     
     

  • 学生の頃は、長くて読みづらいカタカナ表記の固有名詞に頭をかき回されて興味を失ってしまった世界史。社会人になって改めてグローバルな教養を身につけるためには必要なんだろうなと思い、折を見て勉強し直したいとも思っていた中、本屋の店頭で目に留まり衝動買いしてみた。

    そんなニワカ世界史学習者にとっては、世界史の入り口としてとても有用だった。大切なのは、人や出来事の名前を覚えることではなく、その裏にある意味と筋道(なぜそうなったのか、それが社会にどう影響したのか)を考えることだということを本著で感じ、世界史に対する知的好奇心が刺激された。また、今の世界情勢や各国家の性格に結び付けて、歴史を振り返ってくれるので、今を理解するために有益な内容にもなっている。イスラム教の成り立ちと今の中東情勢、歴史的な官僚体制・中央集権と今の中国。

    時事を知り、将来を考える上で、過去の積み重ねに対する理解があるとないとでは、全くインプットの質が変わってくる。そんな世界史を学ぶ大切さを実感するとともに、世界史を意味付けしながら理解していく楽しさにも出会えた。

    以下、印象に残った・参考になった点のメモ。
    ・グローバルスタンダードの教養は「古典」と「世界史」。
    ・長い年月、多くの人に読まれた古典(文芸・思想の表れ)には時代が変わってもなお変わらない人間社会の普遍的な審理が詰まっている。

    ・世界史は人類の経験の集大成

    ・歴史から「意味」を汲みだす⇒(いい意味でも悪い意味でも)人は学びを得られる。

    ・ローマ帝国は500年、長く見れば1500年も続いた。
    ・ローマ史の「なぜ、興隆できたのか」「なぜあれほど安定していたのか」「なぜ没落してしまったのか」
    ⇒他の全ての文明を考える上での1つの指針になり得る。

    ・西洋と東洋の施政者の違い
    ⇒西洋:民衆に姿を見せて様々なパフォーマンスを行う。
    ⇒東洋:めったに衆目に姿を晒さない

    ・文明の始まりは乾燥化

    ・産業の近代化は技術より生態環境?
    (蒸気熱でエネルギーに活用する技術は古代地中海世界で既に存在)
    ⇒イギリスの産業革命は、作業地の近郊でエネルギー源の石炭を多く入手、植民地の拡大で巨大市場を形成、土地による人口の制約が外れたこと、1人当たりの消費量も上昇

    ・昔は本当に「神々の声」が聞こえていた!?
     言語により左脳が右脳の働きを抑制するようになり聞こえなくなった?

  • 著者自信も言っているが、歴史学者が書いた一般向けの世界史本ということで中々貴重。教育分野ほどでなくとも、世界史系の本というのは専門家以外が書いていることがよくある。この本はそれらに対抗して書かれたようだ。

    著者は古代ローマ社会史を専門としていることもあって、この本はローマが全ての基準となる。そのためローマを知っているかどうかで、この本の分かりやすさは違ってくるだろう。皇帝の名前に親しみを持てるタイプの人にはおすすめとなる。

    個人的に興味深かったのは、漢帝国の終焉の様子を知りたいけれど難しい歴史書は躊躇すると言う人に『三国志演義』を薦めているということ。歴史学者というものは、こういったフィクションを勉強用に読むことを否定するものだと思っていた。

著者プロフィール

1947年 熊本県生まれ
1980年 東京大学大学院人文科学研究科博士課程(西洋史学)修了
現在 東京大学名誉教授
西洋古代史。『薄闇のローマ世界』でサントリー学芸賞、『馬の世界史』でJRA賞馬事文化賞、一連の業績にて地中海学会賞を受賞。著作に『多神教と一神教』『愛欲のローマ史』『はじめて読む人のローマ史1200年』『ローマ帝国 人物列伝』『競馬の世界史』『教養としての「世界史」の読み方』『英語で読む高校世界史』『裕次郎』『教養としての「ローマ史」の読み方』など多数。

「2020年 『衝突と共存の地中海世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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