ドクター・デスの遺産 (角川書店単行本) [Kindle]

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  • KADOKAWA / 角川書店
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  • 「お父さんはお医者さんに殺された」。
    一人の男の子の訴えから、不気味な医師の姿が浮かび上がってくる。

    頼まれて、次々と安楽死を行う人物。人呼んで、「ドクター・デス」。

    犬養刑事シリーズの4作目だ。

    患者の、のたうち回るほどの痛みと、それを見守るしかない家族の苦悩。

    安楽死という重いテーマが扱われている。

    病気の娘を抱える犬養には、今回の事件はやりにくそうだ。
    さらに、今回は犬養の親としての部分が、見え隠れする。
    猟犬、犬養の腰が引けているようにも見える。

    このごろ、犬養シリーズには、大きな社会問題がテーマとして登場する。この前は、子宮頸がんワクチンだった。

    今度は、猟犬の能力がいかんなく発揮できる凶悪事件で
    犬養の活躍をみたい。

  • 安楽死を施す医者を追う犬養と高千穂の刑事ペア。そもそも死を望むという願いを叶えることは罪なのか、というだれもが答えを出すのをためらう問いをテーマに、医者と警察の頭脳戦、駆け引きが展開していきます。レギュラーの刑事ペアが良い味を出していて、軽い掛け合いも楽しく読めます。

    作者らしく意外な展開、どんでん返し、といった騙しも効いていますが、今作はそのテーマと真正面に向き合ったときに一体自分はどう判断するのだろう、という問いを始終突き付けられているような物語に感じました。

    作中で言われているように、よほどの状況でないと今日本では安楽死は罪として扱われます。けれどそれは個人を命を尊ぶからというだけではなく、さまざまな事情がこんがらがってもいるからで、穏やかな死を望む人と対面したときに自身はいったいどう決断するのだろうと思うと、それはまったくわからないな、というのが本音なわけです。

    それは死がまだ遠いところにある余裕、なのかもしれません。そして、そのことそのものに罪悪感を感じ、死を望む人にお前は何もわかってないと突き詰められたら、もう何も言えないだろう、というのも思います。

    ただ…最後まであがいて意地汚くも生きていくのも人間らしさだ、とも感じるのです。ぎりぎりまで生に惹かれていてほしいとも思うのです。

    そういうことをつらつらと考えた物語でした。

  • 中山七里作品を続けて。
    刑事・犬養隼人シリーズの新作だが、今回のテーマがあまりに
    「重い」。「安楽死」の是非・・・。問題作と言って良いかもし
    れない。

    警視庁に入った「悪いお医者さんがうちに来てお父さんを殺し
    た」という少年からの通報。それをイタズラの類で無い、と
    直感的に悟った捜査一課の高千穂明日香は、上司の犬養隼人を
    伴って状況確認へ。少年の父親の通夜が行われていた現場で
    関係者に事情を聴くと、日本では未だ認められていない「安楽
    死」を請け負う医師「ドクター・デス」の存在が浮上。そして
    第二・第三の事件が起きて・・・といった内容。

    中山作品はおおよそ瞬殺で読んでしまうのだが、今回は少しキ
    ツかった。どうも僕は「安楽死」を全面肯定しているらしく、
    快楽連続殺人犯としてドクター・デスを追い詰めようとする
    警視庁に全く共感できない。僕の場合、死にたいときに死ぬた
    めに、誰かに依頼をかけたい時があると思う。それをサポート
    してくれる存在の何が悪いのか? 読後にも改めてそう思った。

    読み終わってから気付いたのだが、この作品はミステリーとし
    て非常に稀というべき作品。何が稀なのかと言うと、大きな
    意味での「被害者」と言うべき者が一切存在しない。こういう
    仕上げ方もアリなのか、と感嘆した。

    もちろん、中山七里の代名詞である「どんでん返し」もキッチ
    リあるのだが、氏の作品をこれだけ読んでいるとさすがに読め
    るようになって来ちゃったのかも(^^;)。真犯人は、珍しく
    最初に思った通りの人でした・・・。

    ・・・これは、オススメしていいのかどうか、正直解らない。
    しかし、入魂の力作であることは絶対に間違いないと思う。
    読中に辛い思いをする人も多々居ると思うけど、覚悟が出来る
    人はぜひ。

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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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