- Amazon.co.jp ・電子書籍 (335ページ)
感想・レビュー・書評
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まさかの真相だった
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伏線がキレイに回収されていた。
誰も幸せになってないように思えた。 -
どこでどう転ぶのか、予期していない結末へ。
でも、それが運命だったのかも。 -
宇佐美まことさんの作品初めて読みました
話の組み立てと時間列がとても巧みで
一気に読み進みました
時代背景と地方独特の空気をしっかり捉えていて
秀逸な作品です
他の作品も早速手をつけます -
第70回日本推理作家協会賞受賞作。
非常に秀逸な犯罪小説である。1985年、生年月日の同じ女性ふたりが出会い、友情を育む様に、全てが崩壊した後の2015年の描写が挟まる形で物語は進む。
推理小説読みにはいくつかの伏線は読み解けてしまうだろうが、それでも最後に向けて張られた伏線は非常に「綺麗に」回収されていく。ミステリーの醍醐味を存分に味わうことのできる作品だ。
それと同時に、どうしても抜け出す事のできない地獄を、今の時代にも連綿と続く格差というものをこの作品は真正面から描いている。なぜ彼らが犯罪に手を染めねばならなかったのか。その地獄。生まれだけで何もかもが決まってしまう感情。目を背けたくなるが、背けてはいけないその情景が、一人称でありながら突き放したように語られる。
そして、「善」と「悪」。どこまでも「善き」人と、どこまでも「悪しき」人の対比。最終章で回収される伏線には驚くが、「悪」を非常に上手く表現していると思った。人物描写で上手く悪を表現するのは困難だと思うが、ままならぬ「悪」の存在を明確に、しかも納得感のある形で描ききっている。
中でも私がいちばん心に残ったのは、登場人物たちの「すれ違い」だ。素直に全てを互いが打ち明け合っていれば打開する機会は何度もあった。と読み終えたときに思う。言えないことの多さ。失いたくない友。知っていることを話さないのが優しさだったのか、それとも全てをさらけ出す事が真の友情であり愛情だったのか。彼らに語り合える術があったらよかったのに、と思う。しかし、犯した罪がそれを許さないのだ。止むに止まれずに行ったことであっても。
そういう意味で、精緻なミステリ小説であると同時に、どうしようもない人の「業」を垣間見せられる作品であった。