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感想・レビュー・書評
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2018/11/23読了。
著者を苦しめたKADOKAWAのボーノ氏という編集者は何らかの精神疾患が疑われると思うのだが、こういう人は出版業界に限らず今の世の中にはたくさん存在していて(昔から存在はしていたのだが今の世の中では生き延びやすく可視化もされやすくなって)、僕もこれまでに何度か、何人かに苦しめられてきた。だからこれは漫画業界の問題ではなく、精神医療やそれに関わる政策のレベルで考えるべき問題かもしれない。
この手の人は利害関係や共働関係のない遊び友達や昼飯仲間として付き合う分には毒にも薬にもならず、知能に問題があるわけでも会話ができないわけでもないので、割と会社やコミュニティの中に普通に溶け込んでいるのだ。
厄介なのは、他者への共感能力を欠いた利己的な振る舞いが、むしろビジネスの多くの局面では好ましい適性として評価されがちなことである。そういうことを罪悪感なしでやってのける人材が評価される風土を持つ企業が多くある。役所も同様だろう。従ってこの手の人が編集長クラスの小役人ポストについているケースは何ら珍しいことではない。もっと上のポストでも、政治家でも総理大臣でも驚くに値しない。
この風土の対極にあるメンタリティと感性が、創作やクリエイションには必要だ。本来ならば編集という仕事にも必要(最低でもそうした感性が存在するという概念は必要)なので、ボーノ氏のような人は編集者としてはやっていけないはずなのだが、これはKADOKAWAの社員編集者が今や編集者ではなく管理者もしくは中間搾取者にすぎない傾向にあることを示している(もちろん全員がそうだとまで言うつもりはない)。電子コミックの普及に伴ってITなどの他業種や他国企業の参入が進んでいるから、この傾向は今後も加速度的に進んでいくに違いない。
著者がボーノ氏以外のまっとうな編集者に出会って活動を継続できているのは、著者にとって誠に幸いな、今の業界では僥倖に等しいことであったと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
以前にTwitterにて、一部紹介されているのを見た。
「ひどい編集者・編集部」の話は、ちょくちょく色々な作家さん(雷句誠、福満しげゆき、佐藤秀峰、カラスヤサトシ…)から語られることがあるけれど、これだけのボリュームかつ、これだけひどいのは初めて。
作者さんからすればたまったものではないと思うが、その分読み物として引き込まれてしまった。
KADOKAWA編集者・編集部の行状に、怒ったり、あきれたり、思わず失笑したりする一方、「じゃあ俺は、俺の仕事に関わる人たちに同じことをしていないか?同じ思いをさせていないか?」という自問が自然とわいてきて、襟を正す気持ちになる。
「The 反面教師」な本。