バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 独特の語り口。
    極めて冷静なのだけど、やっていることは極めてレア。これはお笑い芸人の語り口だろう。例えば‥‥。

    ・全身バッタアレルギーを持つ特異体質なのに、こよなくバッタを愛し、バッタに喰われたいとまで言う。
    ・ヤギ肉のソースは、牛丼に似た味わいらしい。見た目を全く気にしない、ポジティブ思考。
    ・アフリカでは遅刻は常識。遅刻したスタッフを怒る発想はない。冷静に、1時間早い時刻設定に切り替える。
    ・日中40度から60度を超える生活も、淡々と慣れてゆく。
    ・独特の食事習慣(例えば熱々のご飯を手づかみで食べる工夫)も、文化人類学視点で観察していて、結果現地で観察しないとわからない描写になる。
    ・ドライブ途中に、歯ブラシ用の木の枝を見つける場面がある。これは、古代から続く人類の歯ブラシ使用方法だ。今までは、私は現代の歯ブラシと比べてどう考えても効果薄と思っていた。ところが、前野氏は「ピカピカに歯が白くなる」という。慣れないと血だらけになるそうだが‥‥。もしそうだとすると、古代人に想定以下に虫歯が少ないのは、固いものばかり食べていたからでは無く(お粥も食べていたからおかしいなぁと思っていたんだ)、本当にちゃんと歯磨きやっていたからなんだと、私は思ったものである。個人的に「考古学的」にも発見があった。
    ・子どもから採ったバッタを買い取る試みをしたところ、その額が高すぎたために、正確な数の把握ができない、嘘の申告、不良製品の制作、暴力の発生‥‥「まるで戦争の起こる仕組みを垣間見たよう」と冷静な分析。その時は「カオス」だったはずなのだけど。
    ・ポスドク(研究職で食えるようになる前の研究者)は、如何に多くいて、いかに大変かを具体的に述べた新書になっている。そこから脱出しつつある「戦略」も、ポスドクの人たちには、いろんなヒントがあるように思う。ただ、基本的には、基礎研究にお金を注ぎ込まない日本政府の予算措置にこそ、問題があるのではあるが。その辺りは、自分の意見では無く、ババ所長に語らせる。なかなか頭がいい。


    前野氏は子供の頃から「他人の行動に合わせる」という発想を持たない子だったようだ。それを自分で自覚しているので極めて利発なのだけど、その若干発達障害的な弱点を長所に意識的に変えている。それを突き詰めるアレコレを書いている。この性格、「世界初の発見をする」ことが仕事の「学者」には、とっても向いていると思う。

    本書は、蝗害を起こすサバクトビバッタの生態を明らかにする本ではない(少し明らかにしているけど)。そうではなくて、ポスドクの実態とそこから抜け出すための傾向と対策、特に「広報戦略」という(バッタ研究が重要なことなんだという事を広める→自分の研究が認められて職に就く)現代的な対策の実践例の、体験ノンフィクションである。

    ホントは写真を見ながら読まないと本書の価値は半減してしまうと、カリスマレビュアーから助言を頂いた。だから、オーディブルで「淡々と」聴いた私は、この本の面白さの半分もわかっていないということを告白しておきたい。

    • ひまわりめろんさん
      素直か!
      素直か!
      2024/04/22
    • kuma0504さん
      カリスマレビュアー様、
      コメント恐れ入ります。
      素直に反省致しました。勿論、裏は取っております。
      著者のブログを見ると、バッタの写真に嫌悪感...
      カリスマレビュアー様、
      コメント恐れ入ります。
      素直に反省致しました。勿論、裏は取っております。
      著者のブログを見ると、バッタの写真に嫌悪感を催す読者もいると分かり、泣く泣く電子書籍には「写真付き」「写真無し」の2種類を用意したそうです。反対に言えば、そこまで写真を重視しているという事ですね。そうですよね。

      ところで、最新ブログを見ると、Amazonレビューと並んでブクログレビューも、感想を次の著作に活かしていると書いています。ブクログまで、読むタイプの著者は、かなりレアだと思われます。当然カリスマレビュアーのレビューも読んでくれていると思われます。
      2024/04/22
    • ひまわりめろんさん
      Σ(゚Д゚)

      いやなんかぜんぜん大したこと書いてないのでなんの参考にもならんと思われます!自信持って言えます!
      Σ(゚Д゚)

      いやなんかぜんぜん大したこと書いてないのでなんの参考にもならんと思われます!自信持って言えます!
      2024/04/22
  • 旅の想い出にどんなものがある? と改めて考えてみると、実はあんなことしてしまった、こんなことに巻き込まれてしまった、といったハプニングだったりしないでしょうか?

    ウルド浩太郎さんは、そんなハプニングの達人。
    スケールも大きいですけど。
    遠くアフリカの大地で、ハプニングを楽しんでいるようにすら見えます。ご本人もWelcomeと言ってます(うそ)。
    ハプニングを乗り越えるのは、やっぱり一人では無理です。結局お友達を作って、お友達に支えられて解決していきます。
    アフリカは人を強くするのでしょうか。愛にあふれているのでしょうか。アフリカで活躍する日本の獣医さん(滝田明日香さん)の本も実に素敵だったのを思い出します。
    ティジャニは現地パートナー。読んでいて好きになりました。

    サソリに刺されたときの治療のシーンが出てきます。
    大騒ぎして、結局お祈りで治療するなんて。「もう大丈夫だ、安心しろ」って、うせやろ?
    他の方の著書、「ガダラの豚」、「ピスタチオ」にも出てきた呪術師を彷彿とさせます。
    アフリカに関する本は外れがないわ~
    併せて読むといいですねっ。

  • とても良かった ちょっと盛り過ぎ感もあるけどバッタ大好き人間 前野さんのモーリタニア滞在3年間のドキュメンタリー小説。著者が子どもの時読んだファーブルの昆虫記に触発されて以来まっすぐのバッタ道。
    研究者らしくない?発想力と言動力で失敗にめげずサバクトビバッタを現地で極めるべく邁進する姿に魅せられる!そして研究所長はじめ現地の人達の魅力的なこと(笑)
    刊行時に版を重ねた理由が納得できるユーモラスだけど大変面白いドキュメンタリー小説でした。

    • ありんこさん
      なんだか面白そうですねぇ!
      なんだか面白そうですねぇ!
      2020/07/11
  • 読んでいたらアフリカでサバクトビバッタの襲来の報道を見たのでタイムリーだった。
    ティジャニがいい味出してた。

  • 文句なしに面白い。やや過剰な表現もブログで磨いたノリの良さで笑いながら読める。バッタへの熱量が凄くて、こんなに夢中になれることがあるのが羨ましい。でもただ勢いに任せてるんじゃなくて、周到に作戦を練って遂行し乗り越えていくさまが痛快。やっぱり研究者、いかに成果を出すかのデザインと閃きが普通の人とは一味違う。と読みどころはたくさんあるけど、思わず応援したくなる愛されキャラの作者が一番の魅力なんだろな。

  • 2018年の新書大賞を受賞してさんざん面白いと話題になった本なので今更私がどうこう言う必要はないけど

    むちゃくちゃ面白かった!!!!

    そして盛大にババ所長のファンになってしまった

  • ブログっぽい文章でくすくす笑いながら読めるのに、最後には「いいものを見せてもらった…」とじんわり感動してしまう、おもしろ生物読み物。子供の頃はファーブル昆虫記のフンコロガシ編を何度も読み、集団になると凶悪になるバッタがいるらしいということにもロマンを感じていたくちなので、とても面白く読んだ。

    - 21世紀になってもサバクトビバッタの生態は驚くほど解明されていない
    - 筆者の失敗と再挑戦の繰り返しに心が浄化される
    - とは言えアフリカまで緑の全身タイツを持っていくのはやはり頭がおかしい
    - 頭がおかしくても社会性が高く、やはり成し遂げる人は人類に対する信頼感が高いのだなと痛感
    - ポスドクを活用しきれていない日本には「もったいないでしょ!」と叫びたい。自分の頭で考えられる、知的な人達がたくさんくすぶっているのはおおきな損失だと思った

    笑っちゃったのはサソリに刺されたときの現地の治療法と、バッタの代わりに研究した虫の雌雄の区別のつけかた。笑っちゃうポイントは読む人みんなちがうと思うので、言い合いっこしたい。

  • 幸せは人それぞれですよねー。この年になって自分にとって何が幸せなのかを深く考えてしまうのですよ。娘たちの成長を見ていて幸せだし、仕事が順調にいっていると幸せだし、株価が上がっていると幸せだし、先日見たAVが琴線に触れ過ぎて多幸感MAXだったし。

    で、この筆者はバッタ研究を続けられる事に幸せを感じる方で、読んでいて本当に羨ましい。ここまで好きな事を見つけ、今でもそれを続けられる、しかもお金を貰ってですよ。
    それまでには研究者という競争の激しい環境中で、無職という辛い状況にも耐えながら、よくぞ自分の夢を叶える事ができたのだと、ステキです、これは奇跡でしょうか、いやこの方の本当の実力なんでしょう(性格もよさげ)

    アフリカのモーリタニアの研究生活の件も面白いですが、読んでいくうちになぜか筆者の魅力に引き込まれ、ネタバレになるので控えますが、アレがあーなった時なんぞ感動してしまったではないですか。地元に戻っての凱旋もしかり、鼻が熱くなるんですよ。

    この本に研究結果を求めて読んだのではなく、魅力的な筆者の今までの奇蹟を知っただけでも価値があると思ますね。

    因みに私は虫が死ぬほど大っ嫌いなんで、筆者の研究によって全世界の虫を皆殺しにして頂く事を強く望んでここに終わりといたします。

  • 著者のエネルギーが伝わってくる。日本で研究費を獲得するのは並大抵のことではないが、行動力と探究心でアフリカの大地を駆け抜け、見事白眉研究者に。ぜひ日本政府には研究者を広く支援してほしい。
    著者がファーブルに憧れて研究者になったように、前野ウルド浩太郎に憧れて研究者になる人もいずれはあらわれるだろう。

  • 表紙がインパクト強すぎですが、、
    アフリカで深刻な被害をもたらしているバッタ災害を撲滅するために、モーリタニアで奮闘するバッタ博士の話です。
    あやうく地雷の埋まっている地帯に足を踏み入れそうになったり、サソリに刺されたり、夜中の砂漠で迷子になったりと、かなり危険な生活。そして、昆虫学習としての意気込みが熱い。
    でも、軽快でとぼけた文章により、楽しい本になっています。
    帯に「科学冒険就職ノンフィクション」とあるように、筆者が今回の研究期間の後も、研究者として食べていけるのかと、気になりながら読み進みます。

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著者プロフィール

1980年生まれ。神戸大学大学院自然科学研究科博士課程修了。農学博士。
日本学術振興会海外特別研究員としてモーリタニア国立サバクトビバッタ研究所に赴任。

「2012年 『孤独なバッタが群れるとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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