- Amazon.co.jp ・電子書籍 (237ページ)
感想・レビュー・書評
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村上ファンドで有名な村上世彰氏の著作。
投資家としての考え方や投資方針などがたっぷり書いてある。
気になるニッポン放送、フジテレビをめぐる買収合戦の裏側の事情も書いてあって、当時を知る者としては非常に面白く読めた。
当時のメデイアの報道の仕方は「報道機関を金儲けだけを考えているハゲタカに渡す訳にはいかない」という路線で徹底的に村上ファンドを悪者として扱っていた。
なんとか日本の放送機関を守るんだとメディア一丸となって叩いていたと思う。
私自身も「村上ファンド=悪者」と思い込んでいて、インサイダーで逮捕された時はざまあみろと思っていたものだ。
ただ、この本を読んで印象が一変した。
あのニッポン放送の買収劇の前から、子会社のフジテレビの業績に比較して親会社の株価の低すぎるというのは問題視されてたらしい。村上氏は投資家の立場から何度もニッポン放送やフジテレビ、産経新聞に対して買収防衛策を提案していた。しかし、各企業の自己保身やグループ内のコミュニケーション不足により全く採用されず。そうこうしているうちにホリエモン率いるライブドアに買収を仕掛けられる事態となる。本当に企業のためを思って提案していた村上氏の思いは届かず、半ば対処療法的な決着となってしまった。
村上氏の主張は一貫して「コーポレートガバナンスの徹底と資金の還流」だ。
一つの企業が余剰すぎる資金を貯めすぎるのではなく、株主や市場に資金を還流すれば、あらたな投資家が別の投資活動へお金を使い、資金が還流し経済が好転的にまわりだすという考え方だ。
そのためのコーポレートガバナンス(企業統治)が重要だと考えており、そんためには投資家として口を出していくというスタンスだ。
当然ファンドビジネスであるからには利益を出す必要があるのは間違いないが、それよりも企業の成長や健全化を通じて自分も利益を出そうとしているように思える。
村上氏の自伝なので美談的に記してあるとは思うが、自身でNPO法人を設立し、資金のなNPOへ出資したり、災害時準備用にテント資金を寄付したり、今で言うクラウドファンディングの基礎を作ったりと、知られていない活動を行なっている。
書いてあることは、美談や誇張が含まれているかもしれないが、やっていることは素晴らしい。
お金の使い方をきちんと分かっていると思う。
今にして思えば、悪者は村上ファンドではなく、一方的な報道で印象操作を行っていたメディアの方ではないかと思う次第だ。
そうまでして守ったフジテレビの今の凋落ぶりを見れば、あの時ホリエモンが目指した「ネットと放送の融合」がなされていれば、どうなっていただろう。
ちょっと財務知識が必要だけど面白い本。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【目次】
はじめに――なぜ私は投資家になったか
第1章 何のための上場か
・・・官僚として見た上場企業の姿/コーポレート・ガバナンスの研究 ほか
第2章 投資家と経営者とコーポレート・ガバナンス
・・・私の投資術/累積投票制度を導入せよ――東芝の大きな過ち ほか
第3章 東京スタイルでプロキシーファイトに挑む
・・・決戦の株主総会 ほか
第4章 ニッポン放送とフジテレビ
・・・私が見たライブドア対フジテレビ ほか
第5章 阪神鉄道大再編計画
・・・西武鉄道改革の夢――堤義明氏との対話/阪神タイガース上場プラン――星野仙一氏発言の衝撃
第6章 IT企業への投資――ベンチャーの経営者たち
・・・楽天――三木谷浩史氏の積極的なM&A/ライブドア――既得権益に猛然と挑んだ堀江貴文氏 ほか
第7章 日本の問題点――投資家の視点から
・・・日本の株式市場が陥った悪循環 ほか
第8章 日本への提言
・・・コーポレート・ガバナンスの浸透に向けて/世界一の借金大国からの脱却 ほか
第9章 失意からの十年
・・・東日本大震災について/フィンテックへの投資 ほか -
「村上ファンド事件」で有罪判決を受けた村上世彰さんが、自身の半生と投資家としての理念を語った本。
コーポレート・ガバナンスを日本に浸透させることを第一に、投資家活動を続けた村上世彰さんの熱い信念が書かれています。 -
久しぶりに読書。Amazonプライムで読めるもの。
テレビ番組で見かけて気になったので。
自ら語る形式なので気取らない雰囲気なのだがあまり読みやすくはない。ただ色々あった方なので内容は盛りだくさん。既存権力に逆らう形になってしまったんだなぁ。
着地としてはよかったのかなとも。 -
村上ファンドとして名を馳せた投資家の自伝。
あの当時マスコミで話題となった話が軒並み書かれている。
率直に言って、ものすごい面白い。
と同時にマスコミの一面で切り取る感じと、日本の司法のクソさに辟易とさせられる。
勿論、彼の立場で書かれているので、割引いて考える必要はあるわけだが。
この本を読んで、ファンドなので利益重視というイメージが強い中、コーポレートガバナンスという理想など割と哲学がしっかりしていることに共感を覚えた。 -
投資への考え方が腑に落ちた本でした。村上さんが敵対的賠償と叫ばれ、マスコミの情報をそのまま受け止めていた事を反省している。これからの日本の価値を上げる為にも、多くの方にこの本を読んでいただき、資金を循環させるイメージを持ち人生を歩んで欲しいと願う。
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村上ファンドとして世に名を知らしめた村上世彰氏の、アクティビストとしての投資活動、ニッポン放送の買収劇、2006年のインサイダーによる逮捕から現在の活動に至るまでのその根底にある投資哲学について語られた本。
特に日本はお金=マイナスイメージで金儲けを美徳としない文化であり、当時のマスコミの取り上げられ方にも偏りがあり悪いイメージのある同氏だが、通産省時代から徹底して「コーポレートガバナンスの浸透と徹底を通じて、企業内に貯められた莫大な内部留保金を投資に回すなり、投資家に還元(そして投資家を通して再投資)することで経済の循環を良くすることで日本経済を良くする」といったもの。
米国企業と比べて日本企業は全体的に株価が低い傾向(純資産はほぼ同じレベルなのに株価倍率は米国が日本の3−4倍)。これは日本企業が株主との対話を重視しない事、経営者として重視する売上高利益率等の指標のみを追い求め、投資家目線で重要となるROEを軽視した経営を行う事、それが故に投資家からの期待値が低い為。
コーポレートガバナンスの浸透を通じた経済発展という哲学を貫く為に、官僚→ファンドマネージャー→個人投資家と立場を変えながらも信念を貫く村上氏の生き様に一気にファンになりました。 -
彼が逮捕された時は日本にいなかったので彼のことも大して知らず。なので先入観なしに読めました。 彼の考え方は共感することも多く、彼の投資や寄付に対する姿勢も気に入ったので星5
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村上ファンドの創始者、村上世彰の本。
誤解も多かった当時とは、うって変わってすごく読みやすい文章になっている。
コーポレート・ガバナンスで株主が企業を監視し、企業の内部留保を、株主に配当で還元したり、自社株買いをし、株価向上を目指した。
あるときはMBOをして企業を非上場にし、不要な上場を止めさせたりもした。
全ては、世の中のお金を循環させて、経済発展を願うという純粋な気持ちだったのだと、本書を読んで知ることができた。
元々通産省の官僚で、最終学歴が東京大学法学部卒業だったことも驚いた。
ファンドマネージャーであるがゆえ、行動にはリターンを求めているものの、私欲だけでない、高邁な精神も見てとれた。
ファンになった。 -
本当に素晴らしい本だと思う。投資家たるもの、こう考えるべきである。