たかが世界の終わり [Blu-ray]

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監督 : グザヴィエ・ドラン 
出演 : ギャスパー・ウリエル  レア・セドゥ  マリオン・コティヤール  ヴァンサン・カッセル  ナタリー・バイ 
  • ポニーキャニオン (2017年9月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988013374799

たかが世界の終わり [Blu-ray]の感想・レビュー・書評

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  • 愛し合っている筈なのに、分かり合えず、傷つけ合い、どうしてもそばにはいられない不器用な人々の、真夏の昼下がりのたった3時間の姿と残酷な結末を、極めてシンプルに、そのくせ、とても緻密かつ象徴的な演出で描いた作品です。

    病に侵された自分の命がもう長くなく、これが最後の別れであることを家族に伝えるため、若かりし頃に飛び出してきた故郷に12年ぶりに帰ってきた、人気作家のルイ。

    実家には、老いてなお過剰な程に元気な母と、ルイが家を出た時には幼くて彼と過ごした記憶が殆どないながらも成功した彼を慕い、広い世界に焦がれる妹のシュザンヌ、都市で成功したルイとは対照的に生まれ育った田舎町で家族を養い凡庸な人生を終えるだろうことに少なくない鬱屈を抱える兄のアントワーヌ、その妻で気性の激しい彼らに常に気を遣っているカトリーヌがいました。

    長い年月を経てようやく帰ってきたルイを巡って、ルイの事情を想像するでも聞き出すでもなく、穏やかに食卓を囲むでもなく、激しく罵り合い、互いに傷つけ合う母と兄と妹。ただ一人、ルイの事情に薄々気づいて色々思いながらも、三人の激しい応酬を前に、一歩引いているしかない、結局は他人の兄嫁。

    血の繋がった三人とそれぞれに二人きりの時間を持つ機会があっても、結局ルイは誰にも肝心の告白ができないまま、時間ばかりがいたずらに過ぎていきます。そして、特にルイを妬み、鬱屈を抱える兄のアントワーヌがエスカレートしてしまった結果…。

    この映画には、過去のドラン監督作品に見られた、目にも鮮やかな色彩や虚実入り混じる大胆な画面構成は殆どありません。
    しかし、その地味さがかえって、彼らの愚かさや身勝手さを、ひどく生々しく、鑑賞者に突きつけてきます。

    個人的には、明るさの盛りのようで、実は気だるくも辛い、日没への入り口でもある真夏の午後独特の空気感までも活用しようとするかのように、身体に玉を結んで流れ落ち、服に染みをつくる汗を事細かに写すような、地味だけど細かい演出がよかったです。

    いまだ何も知らない家族は絶頂期と信じて疑わないルイの人生の終焉が、彼らが罵り合っている間にも刻一刻と近づいていること、ルイが若い時分から今までずっと抱えてきた息苦しさ、そして、虚しさなどと幾重にも重なるような気がして、なんとも巧みだなあ、と感心したのです。
    人物の顔半分を覆う深い影の撮り方なども、暗示的な効果を持って作品の雰囲気に一役買っており、素敵でした。

    奇抜で幻覚的な映像に頼らない、自然物の醸し出す印象や空気感の極力さりげない活用は、まだ若いドランが見つけた、一つの成熟の形のような気もします。

    どうしても心を通わせられない彼らが迎える結末は、ルイの人生そのものを暗示しているような象徴性に満ちており、ひどく胸が痛みます。
    愛はあっても、想像力や言葉が欠落した人々が家族でいると、こんな悲劇が起こるのかと思うと…。
    物語の最初から最後まで、どうしても解放されないあまりの息苦しさに、なんだか、溺れるような錯覚を起こしてしまった作品です。
    観終わると、題名の意味がよくわかります。

    これまでのドランらしくない、シンプルだけど巧みな演出を観てみたいと思う方にはいいかな、と思います。でも、家族との間に、明確ではなくても少なからず距離を抱えている人には、しんどいと思います…。

  • 自分が死を告げるための12年ぶりの家族との再会。
    序盤のルイの帰宅場面から皆がまくし立てるようにはじまる家族のおしゃべりのシーンは、半ば居心地の悪さすら感じ、久々に家族の中に置かれた主人公ルイの困惑を同じ様に感じられるほど苦しい。

    次から次へ変わる顔のアップ映像と、家族全員が勢ぞろいしているのに誰一人として、本音の会話をしない「見えない壁」だらけの会話劇を映画館という逃げられない空間でずっと観せられると、序盤から早々にむずむずして、思わずゔぁーー!って叫びそうになった。
    これは多分監督の思惑通りだと思うので、そういう意味では観客にまで主人公の苦しみを追体験させる演出は凄い。
    映画観終わった今もまだあのムズムズ感が身体から取れないのも凄い。

    描かれるのはルイが自宅に戻りご飯を食べて家を出るまでの数時間だけで、ほとんどが家の中での出来事。しかも登場人物は家族だけなのに台詞の量が半端ないからそれだけで相当疲弊するけど、その会話のほとんどが「沈黙」を作らないための手段にしか過ぎないから意味はない。
    それでも話が進むにつれて家族それぞれの本音が伝わってくるのにそれでもだれも核心に触れようとしない焦らし加減を終盤まで引っ張れるのはもはや狂気。

    因みにルイの病名は劇中で明かされることはないけれど、ルイのかつての恋人について兄が伝えたシーンから推測するにおそらくエイズなのだろうと思う。
    でもこの微かな表現だけでは、本当にルイの死がそうなのか、兄以外の他の家族がルイが告白しようとしてたことを気づいていたのかがどうも分かりにくい。

    家族とは港ではないー♩と歌われていたオープニングの歌詞のように、家族という集合体の不完全さについてはあまり理解したいとは思わないが、でもある意味核心をついているのかもしれない。

    家族の愛ってややこしい。
    デフォルメされてるけど、家族の本音や真実を知ることって大人になればなるほど難しいのかもしれないな。

    ラストまでほとんど喋らないギャスパー・ウリエル演じるルイとは対照的に、真実から目を逸らそうと、わざとバカ騒ぎをするナタリー・バイ演じる母親や、兄を知りたくてたまらないレア・セドゥ演じる妹。
    そして常に家族に対する苛立ちを隠せないヴァンサン・カッセル演じる兄の不協和音を聞かされ続ける中で、唯一マリオン・コティヤール演じる血の繋がらない兄嫁の自信なさげなおとなしい瞳だけがオアシスのように感じた。

    ドラン監督の他の作品とはちょっとまた違った印象を受けるが、映像の美しさは相変わらず素晴らしいし、音楽の使い方もいい。
    何よりもこの最後まで感情を圧迫されるような演出も今まで感じたこともないほどで凄かったけど、なんせこの作品によって出たもどかしい感情の掃き溜めが見当たらないのでもう2回目は観ないかな。

    壊れそうな感じで、壊さないこのイライラ感は映画館の環境じゃないとうまく伝わらないかもしれない。
    因みにまだずっとオアズケを食らってるようだ。

  • 自分の死を告げるために12年ぶりに帰省…という設定を知らなければ、頭の中は疑問符だらけになるはずだ。死を予感させる描写は多少あったものの、はっきりとは語られない。設定ありきの、面白さ。予告編に煽られて、本編ではもう少し詳しい状況が語られ、家族愛の感動にひたれるのかと思ったけれど、そんな甘い映画ではなかった。ひたすら、家族のぶつかり合い描く。

    12年の空白は、あまりに大きい。ぎこちなくルイを迎えた家族は、ちょっとしたことでこじれ、言い争う。ルイは帰省の真意を語ろうにも、語れない。
    最後のあたりで、ようやく理解した。そうか、語らせたくないのだ、みんな。ルイの口から、決定的な言葉を聞きたくなかったのだ。いつまで、という問いでわずかに触れそうになったのは、兄嫁だけだ。
    元気そうでよかったとか、妹に遊びに来いと言ってやってほしいとか、次はもっとうまくやるとか、薄々分かった上での言葉だった。それを踏まえれば、兄の罵詈雑言としか思えない言葉の数々も、痛々しい。
    理解はできなくても愛している、愛は何にも奪われない、という母親の言葉が素敵。

    音楽が情熱的で官能的。音楽にしろ回想シーンの映像にしろ衣装にしろ、洗練とは一味違うセンスの良さにのまれた。

  • 愛が終わることに比べたら、たかが世界が終わりなんて

    「もうすぐ死ぬ」と家族に伝えるために、12年ぶりに帰郷する人気作家のルイ。母のマルティーヌは息子の好きだった料理を用意し、幼い頃に別れた兄を覚えていない妹のシュザンヌは慣れないオシャレをして待っていた。浮足立つ二人と違って、素っ気なく迎える兄のアントワーヌ、彼の妻のカトリーヌはルイとは初対面だ。オードブルにメインと、まるでルイが何かを告白するのを恐れるかのように、ひたすら続く意味のない会話。戸惑いながらも、デザートの頃には打ち明けようと決意するルイ。だが、過熱していく兄の激しい言葉が頂点に達した時、それぞれが隠していた思わぬ感情がほとばしる――――。

    という公式サイトのあらすじを先に頭に入れておいた方がストーリーはすんなり入ってきます。
    ドランの作品が大好きなわたしはもう言葉にならないくらい好きだと思いました。なんてことのないシーンでも涙出てしまった、恋のマイアヒが流れて青い空に子供が浮かぶシーンで泣いてしまった笑。
    ギリギリのラインの崩壊を描くのが本当にうまい。
    くだらないことをだらだら話すなと言った兄の気持ちも、くだらないことをだらだら話し続けるルイも、兄嫁の怯える表情も、妹のどうしたらいいかわからない感じも、全てが好きだった。ラストのルイが何も言えずに帰っていったこともそう。瀕死状態の小鳥がアップになるシーンも。
    傷つけ合うことしかできない家族を物の見事に描いていた。
    妹役のレアセドゥがすごく美しかったな…可愛い。一番演技がうまかったのは兄嫁役のマリオンコティヤールかも。一見、その家族としては一番遠い関係なはずなのに、すごい存在感。やたらと怯えるその表情の裏を想像し、兄の拳の傷からあらゆることを想像。想像、想像、想像。
    わたしはすごく好きだけど、一緒に見た友人は最後まで話がわからなかったといっていました苦笑。わたしは見終わったあとしばらく放心状態になるくらい打ちのめされ好きだと思った。ドランの作品で一番かも、mommyと悩むけどトータル的にこっちのが好きかな。

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