世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営における「アート」と「サイエンス」~ (光文社新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 哲学や美術が好きな自分を肯定してくれるようで嬉しくなった。美術については虚心坦懐に見て、それを誰かに伝えてみることで新しい見方ができる。哲学はその考え方自体というより、その時代背景でどう問を立てたかに思いを馳せることで、VUCAな時代の問いの立て方が身につくのかなと感じた。

  • P 120
    これまでのような「分析」「論理」「理性」に軸足をおいた経営、いわば「サイエンス重視の意思決定」では、今日のように複雑で不安定な世界においてビジネスの 舵取りをすることはできない、ということをよくわかっているからです。
    P 128
    一つ目は、多くの人が分析的・論理的な情報処理のスキルを身につけた結果、世界中の市場で発生している「 正解のコモディティ化」という問題です。
    P 131
    正しく論理的・理性的に情報処理をするということは、「他人と同じ正解を出す」ということでもあるわけですから、必然的に「 差別化の消失」という問題を招くことになります。
    P 135
    二つ目は、分析的・論理的な情報処理スキルの「 方法論としての限界」
    P 155
    全体を直覚的に捉える感性と、「真・善・美」が感じられる打ち手を内省的に創出する構想力や創造力が、求められる ことになります。
    P 186
    3.システムの変化にルールの制定が追いつかない状況が発生している
    P 192
    そのような世界において、クオリティの高い意思決定を継続的にするためには、明文化されたルールや法律だけを拠り所にするのではなく、 内在的に「真・善・美」を判断するための「美意識」が求められる ことになります。
    P 258
    では「測定できないもの」「必ずしも論理でシロクロつかないもの」については、どうやって判断すればいいのか?  そこにこそ「リーダーの美意識」が問われる、
    P 260
    つまり、本書における「美意識」とは、経営における「真・善・美」を判断するための認識のモード、
    P 279
    世界のエリートが、いま必死になって「美意識」を鍛えている理由もまた同様です。それは、彼らが今後向き合うことになる問題、すなわち数値化が必ずしも容易ではなく、論理だけではシロクロがはっきりつかないような問題について、適時・適切に意思決定をするための究極的な判断力を鍛えるためだということなのです。
    P 309
    「論理」と「理性」では勝てない時代に  経営における意思決定にはいくつかの対照的なアプローチがあります。ここではそれらを「論理」と「直感」、「理性」と「感性」という二つの対比軸で整理してみましょう。  まず「論理と直感」という対比軸については、「論理」が、文字通り論理的に物事を積み上げて考え、結論に至るという思考の仕方である一方で、「直感」は、最初から論理を飛躍して結論に至るという思考として対比されます。  次に「理性と感性」については、「理性」が「正しさ」や「合理性」を軸足に意思決定するのに対して、「感性」は「美しさ」や「楽しさ」が意思決定の基準となります。
    P 357
    私たち日本人の多くは、 ビジネスにおける知的生産や意思決定において、「論理的」であり「理性的」であることを、「直感的」であり「感性的」であることよりも高く評価する 傾向があります。
    P 366
    「直感」はいいが「非論理的」はダメ
    P 371
    論理や理性で考えてもシロクロのつかない問題については、むしろ「直感」を頼りにした方がいい、ということ
    P 374
    決して「論理や理性をないがしろにしていい」ということではなく、「論理や理性を最大限に用いても、はっきりしない問題については、意思決定のモードを使い分ける必要がある」ということ
    P 435
    物事が複雑に絡み合い、しかも予測できないという状況の中で、大きな意思決定を下さなければならない場面では、論理と理性に頼って意思決定をしようとすれば、どうしても「いまは決められない」という袋小路に入り込むことになります。このような問題の処理については、どこかで論理と理性による検討を振り切り、直感と感性、つまり意思決定者の「真・善・美」の感覚に基づく意思決定が必要
    P 545
    経営における意思決定のクオリティは「アート」「サイエンス」「クラフト」の三つの要素のバランスと組み合わせ方によって大きく変わる
    P 572
    つまり、アートとサイエンスとクラフトを並べてみた場合、現在の企業組織においては、三者が対等な立場で戦えばまず間違いなくアートが敗れるということです。これが、三者のバランスが大事だと言われながら、結局のところサイエンスとクラフトに意思決定の重心が寄っていってしまう最大の要因です。
    P 576
    アカウンタビリティというのは、「なぜそのようにしたのか?」という理由を、後でちゃんと説明できるということ です。では「アート」「サイエンス」「クラフト」と並べてみた場合、後で説明できるのはどれかということになると、これはもう圧倒的に「サイエンス」と「クラフト」ということになるわけです。
    P 588
    これを別の角度から言えば、アカウンタビリティというのは「天才」を否定するシステムだ、ということになります。
    P 642
    アートを担う創業者が、会社を育てる過程でサイエンスを担うプロ経営者を雇い、しばらくの間は蜜月が続くものの、やがてサイエンス側に会社を牛耳られてしまうという構図は、アップルにおけるスティーブ・ジョブズとジョン・スカリーの関係を持ち出すまでもなく、よく見られることです。
    P 685
    この問題を解決する方法は一つしかありません。 トップに「アート」を据え、左右の両翼を「サイエンス」と「クラフト」で固めて、パワーバランスを均衡させる ということです。
    P 1,445
    システムの変化があまりに早く、明文化されたルールの整備がシステムの進化に追いつかない世界においては、自然法的な考え方が重要になってきます。
    P 1,724
    変化の激しい状況でも継続的に成果を出し続けるリーダーが共通して示すパーソナリティとして、この「セルフアウェアネス=自己認識」の能力が非常に高い ということを発見しました。  セルフアウェアネスとはつまり、 自分の状況認識、自分の強みや弱み、自分の価値観や志向性など、自分の内側にあるものに気づく力のこと です。
    P 1,994
    リーダーシップの問題 だということになります。なぜならば、何が「真・善・美」に適うのかを判断するに際して、「客観的な外部のモノサシ」に頼って右往左往することなく、自分の立ち位置をしっかりと見定めた上で、「主観的な内部のモノサシ」に従って意思決定することが必要になるからです。
    P 2,170
    手法の名称に「デザイン」などと入っているのでややこしいのですが、「デザイン思考」というのは問題解決手法であって、創造の手法ではありません。従って、ゴールは「問題が解決されること」であって、そこに感動があるかどうかは問われない。
    P 2,268
    アートを見ることによって観察力が向上する ことを証明しまし
    P 2,419
    エリートの見識を養成するための教育施策として最も普遍的に行われているのが、哲学教育
    P 2,475
    エリートが得てして「すぐに役に立つ知識」ばかりを追い求める傾向があることを指摘し、「 すぐに役立つ知識はすぐに役立たなくなる」と言って基礎教養の重要性を訴え続けましたが、哲学の学習についても同じことが言えます。
    P 2,521
    自分にとっての「真・善・美」を考えるにあたって、最も有効なエクササイズになるのが「文学を読む」ことだと思います。

  • 教養としてのドラッカー
    カント
    ー真:純粋理性批判
    ー善:実践理性批判
    ー美:判断力批判
    選択と捨象
    脳科学は何を変えるか
    失敗の本質
    科学と仮説
    消費社会の神話と構造(人々はけっしてモノ自体を消費することはない。理想的な準拠として捉えられた自己の集団への所属を示すために、あるいわより高い地位の集団を目指して自己の集団を抜け出すために、人びとは自分を他者と区別する記号として(最も広い意味での)モノを常に操作している。ージャンボードリヤール)
    ブランド帝国LVMHを創った男 ベルナール・アルノー、語る
    デザイン思考を超えるデザイン思考
    菊と刀
    資本主義の中心で、資本主義を変える
    人生を変える読書 人類三千年の叡智を力に変える
    デザインのデザイン
    プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神

  • 期待を大きく超える面白さ。サブタイトルの方がしっくりくる。全体の流れ、時代のうねりを捉えようとする試みには共感する。確かにその通り、と思える言葉がたくさんあった。
    ■「分析」「論理」「理性」に軸を置いた経営、言わば
     「サイエンス重視の意思決定」では今日のように複雑で
     不安定な世界においてビジネスの舵取りはできない。
    ■正解のコモディティ化
    ■「真・善・美」が感じられる打ち手を内省的に創出する
     構想力、創造力
    ■自己実現的消費 「アップル製品を使っているワタシ」
    ■実定法主義と自然法主義。システムの変化が早すぎる
     現在、グレーゾーンでのビジネスは自然法主義で行う
     べし。
    ■Google "Don't be Evil" 邪悪になるな
    ■人生を評価する、自分なりのモノサシを持ちなさい
    ■セルフ・アウェアネス 自分の状況認識、自分の強みや
     弱み、自分の価値観や志向性など、自分の内側にある
     ものに気づく力。
    ■システムを無批判に受け容れず、相対化する
    ■市場におもねる目線ではなく、自らの美意識で市場を
     教育する目線

  • 言語化が難しい美意識・センスの部分の重要性に再度気付かされた本。
    感覚的なところが、理論的に記載があることで、頭にスッと入ってくる。山口周さん大好きです。

  • これまでのような「分析」「論理」「理性」に軸足を置いた経営、すなわち「サイエンス重視の意思決定」では、今日のように複雑で不安定な世界において、ビジネスのかじとりをできないから。「直感」「感性」をもとにしたアートが求められる。
    ・以下具体的な理由
    ①論理的・理性的な情報処理スキルの限界が露呈しつつある
     ・正解のコモディティ化=差別化の消失
     ・方法論としての限界=問題を構成する因子の増加、かつ動的に複雑に変化。
     ・要素還元主義の論理思考は機能せず、全体を直感的に捉える感性と、「真・善・美」が感じられる打ち手を内省的に創出する構想力や想像力が求められる
     ・太平洋戦争の諸々の作戦の失敗が「空気」をもとに決まったことのトラウマから、日本は「理性」「論理」に傾きすぎている。「アート」「サイエンス」双方のバランスが大切である。
    ②世界中の市場が「自己実現的消費」へ向かいつつある
    ・市場において、消費者が求める便益は、機能的便益→情緒的便益→自己実現的便益へとうつっていく
    ・全ての消費ビジネスがファッション化しつつある
    ・商品において、機能、デザインは簡単にコピーできるが、ストーリーはまねできない。
    ・日本はすぐれた世界観とストーリーをもっており、これを利用しない手はない
    ③システム変化にルールの制定が追いつかない
    ・エリートは達成動機の高さのために、しばしば法のグレーゾーンを踏み越えてしまうことがあるため、内在化された倫理や美意識をもつことが重要

    ・ソマティック・マーカー仮説:情報に接触したとき、前頭前野腹内側部に影響を与えて感情的に「ありえないオプション」を排除する
    ・「美しい」と感じたとき、内側眼窩前頭皮質が活性化する。またこの部位は意思中枢の決定にかかわっている

    ・ハンナ・アーレント:ナチスのアドルフ・アイヒマンについて書いた本の副題が「悪の陳腐さ」。悪とはシステムを無批判にうけいれること。そこには一種の「誠実さ」があり、「誠実さ」のために悪がおこるのだとすれば、我々は誰でも悪に手を染める可能性がある
    ・これの対策は「システムを相対化」することしかない=自分なりの「美意識」を持ち、その美意識に照らしてシステムを批判的にみる
    ・システムを修正できるのは、システムに適応しているひと=エリートしかいない

    ・美意識を鍛えるためにアートを。特に哲学。「コンテンツ」ではなく、「プロセス」や「モード」をまなぶ。他に詩。「レトリック=修辞」を学ぶ

    ・自分自身の行動指針とするために、「美意識」を鍛える必要がある

  • 筆者のニュータイプの時代と言う本が印象的でしたので、タイトルが目を引く本書を手に取ってみました。
    要所要所で小さくまとめがはいるので、読み手としてはとてもわかりやすかったです。
    内容では、経営におけるアート・サイエンス・クラフトのバランスと言う考え方は、経営だけでなく子どもたちの教育でも役に立ちそうです。
    その他にもサイエンスとクラフトにあたるデータと経験に基づいた考え方の限界や、美しいものを目指すと必然的に良いものになると言う考え方など、色々と学べる事ができました。

  • 物事の1つの、そして重要な判断基準が「美意識」。必ずしも言語化し切れない自分なりの軸、主観的な内部のモノサシが大事とのこと。

    同じ組織に属し続けている自分には気付かずに主観的な内部のモノサシではなく、組織が求める客観的な外部のモノサシに頼って判断しているケースが有るのだろうな。

    昨今、多くのグローバル企業などで実施されているというVTS(Visual Thinking Strategy)を意識して鑑賞力向上を意識し、哲学からその哲学者の思考のプロセスや世界や社会への姿勢(モード)も身に付けてみたい。

  • 出版から時間が経っているから、前半は退屈に感じたけど、後半はコンプライアンスとの関係にも触れていて、興味深く読めた。他の本も読んでみたい。

  • 直感力。

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著者プロフィール

1970年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻、同大学院文学研究科美学美術史学修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ、コーン・フェリー等で企業戦略策定、文化政策立案、組織開発等に従事した後に独立。現在は「人文科学と経営科学の交差点で知的成果を生み出す」をテーマに、独立研究者、著作家、パブリックスピーカーとして活動。現在、株式会社ライプニッツ代表、世界経済フォーラムGlobal Future Councilメンバーなどの他、複数企業の社外取締役、戦略・組織アドバイザーを務める。

「2023年 『新装版 外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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