蒼のファンファーレ [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 始めは業界用語にとまどったりしたが
    読み進めるにつれやめられなくなり、一気読み。

    仕事でもなんでも
    真摯に向き合う人は輝いている。
    さらに同じ思いを持つ仲間がいれば
    1+1=2以上の成果が出ることもあるだろう。

    こうあって欲しいと願う通りのラストで
    「お話だからね、、」と苦笑いしたけど
    青空に
    高らかにファンファーレが鳴り響いたような読後感。

    それにしても
    馬は、ただムチ打たれて走ってるわけではないと知った。
    人馬一体でないと、
    持っている力さえ出せないこともあると。

    以前、イルカショーを見た時
    たまたま、自分の席から
    出番を待つイルカの様子が見えて。
    それが、本当にうれしそうに
    トレーナーさんをじっと見てるんだ。
    「次、ボクだね、頑張るよ」ってカンジで。
    そして、
    合図とともに、ざばぁーんと泳ぎ出していく。
    訓練中の犬みたいだと思ったのだけど。

    誰かと(人でも動物でも)何かを成すって、
    信頼関係があってこそなんだと
    今さらながら実感。

  • 爽やかな涙を呼ぶスポーツエンタメ決定版!

    「藻屑の漂流先」と揶揄されていた緑川厩舎のメンバー達。
    廃業寸前だった彼らが、芦原瑞穂という女性騎手の真摯な姿勢と情熱で生まれ変わり、G1の桜花賞に挑戦、惨敗した翌年。
    場違いな超良血馬がやってくる。馬主はマスメディアでも有名な風水師。
    何もかも謎めいている彼は、厩舎を立て直すきっかけとなった馬(フィッシュアイズ)との勝負を望んでくる。その狙いとは・・・・。
    母との関係に揺れる誠、初めての恋愛感情に戸惑う瑞穂、昔の恋人と出会ってしまう光司・・・。
    様々な出来事、思いを乗り越えて、再び心が一つになった厩舎のメンバー達。目指すのは、再び、G1。チャンピオンズカップ。
    心に傷を抱えたはみ出し者たちが再び一丸となって臨む、大きな大きな夢の行方は・・・?

    『風の向こうに駆け抜けろ』の続編。廃業寸前の厩舎から地方競馬から中央GI優勝を目指す若き女性ジョッキー瑞穂と血統的には申し分ないが勝てない牝馬フィッシュアイズの奮闘を描いた物語。友情・努力・勝利。ジャンプの三大原則が詰まったようなお話でした。JRAオフィシャル雑誌「優駿」に連載されていたそうで、競馬用語が普通に使われています。

  •  前作、『風の向こうへ駆け抜けろ』の地続きの続編の馬と人との青春小説です。

     前作では、新人女性騎手の主人公を取り巻く環境と、その鬱屈を吹き飛ばす馬との出会いと成長がよく描かれていました。何度も波を越えながら調子を上げていって、けれど最後の最後で惨敗した前作から大きな間を置かず、今作のストーリーは始まります。
     前作には登場しなかった、他の女性騎手たちとの関係や、フィッシュアイズを挑発する新たな馬の出現などで、物語はまた段々と深みを増していくようです。
     人も、馬も、様々なものを背負って生きている。そして、捨てることのできないそれらは軽くなったり重くなったりしながら、これからの人生(馬生)を作っていく。そんなことを感じさせる話でした。
     今作では、前作に加えて更に登場人物が増えたこと、それぞれがそれぞれにアクの強い人物たちであることも影響していると思いますが、もう少しここを深堀してほしい、と思うところもちらほら。あと一歩を見せて欲しいと思う部分は、またどこかで彼らの話が読めたらいいなと思います。

     個人的には、今作のラストの舞台がGⅠのチャンピオンズカップだったのが嬉しかったです。中京は私の実家に近く、馴染みのある競馬場のため、レースの情景もスタンドの景色もリアルに思い出すことができ、私だったらこんな豪華なメンツだったらどの馬の馬券を買うだろうとスタンドから見るような心持ちで読んでいました。
     トラウマのない人がいないのと同じで、トラウマのない馬もいないのでしょう。それでも、人の言葉を話してくれるわけではない、人の言葉を正確に理解してくれるわけでもない馬を相手に、必死に全力で真剣に向き合っている人たちの姿に心打たれます。

     男性と女性が肩を並べて競うことができる競技は多くありませんが、競馬は『馬と男性騎手』とか『馬と女性騎手』ではなく、『馬と人』で戦うものなのだと思うと、とても素晴らしいもののような気がします。
     いつか、『女性騎手』だから注目されるのではなく、男性だとか女性だとか関係なしに『実力のある騎手』が注目されるのが当然の世界になっていってくれるといいと、思っています。

  • あついあつい思いで、競馬、見にいきたくなるよ。

  • 前作『風の向こうへ駆け抜けろ』の続編。
    圧倒的な男性社会の中で女性騎手が道を切り拓いていく苦難が良く描かれている。おまけにこの厩舎は馬も人も大きく躓いたものばかり、しかしその中で前作では描ききれなかった者たちの再生が力強く描かれている爽やかな物語。

  • 前作に引き続き、若手女性ジョッキーと過酷な過去を持った競走馬の物語。とりまく厩舎や地方競馬場、そしてそこで働く人たちが、違った過去と今の中で懸命に戦い、新しい未来を見出そうと頑張っています。ドラマになっているようで、これは必見ですね。

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著者プロフィール

1966年、東京都生まれ。映画会社勤務を経て、中国語翻訳者に。『銀色のマーメイド』で第5回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、2011年にデビュー。17年、『フラダン』が第63回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書に選出、第6回JBBY賞(文学作品部門)受賞。他の著書に「マカン・マラン」シリーズ、「キネマトグラフィカ」シリーズ、『風の向こうへ駆け抜けろ』『蒼のファンファーレ』『鐘を鳴らす子供たち』『お誕生会クロニクル』『最高のアフタヌーンティーの作り方』『星影さやかに』などがある。

「2021年 『山亭ミアキス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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