PC遠隔操作事件 [Kindle]

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  • 光文社
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感想・レビュー・書評

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  • 4人もの冤罪被害を生み出したPC遠隔操作事件の詳細と背景を綴ったルポ。
    真犯人の生い立ちから犯行の経緯のみでなく、冤罪の起きた警察や検察の捜査のあり方やマスコミと一体となって問題をいたずらに大きくしてしまった構図まで追求している。
    文章も読みやすい。
    しかし本当に警察とマスコミの推定有罪のやり口はなんとかならんものか。4人の人生は確実に狂わされたままで誰も責任をとっていない。

  • 興味本位で手に取って読んだら、かなりショッキングな内容だった。

    容赦のない脅迫文。次々と起こる誤認逮捕。弁護団を騙し続けた犯人。推理小説かのような展開。
    社会には、ある種の性善説のような前提があると感じているが、意図があるとそれをここまで破壊できてしまうのだと絶望すら感じた。

    しかし、この本で一番絶望したのは、自白強要や安直な捜査、リークによる犯人報道、長期勾留、検察と裁判所の人事交流、非本質的な議論に終始する裁判、前科で更正するどころか深刻化した犯人。そんな「どう考えてもおかしい」と思えるような制度面の欠陥が、必要悪として黙認されている日本社会の現状に対してだった。

    立件されないサイバー犯罪が多い中で、物質的な略奪のないこの事件が、祭りのように取り上げられて厳罰にまで至ったのは印象的だった。

    学びになったこととしては、立証については日常の論証よりもずっと慎重に、疑いのないところまで有罪を突き詰めなければならない点だった。これをいかに実践できるよう制度を整えるかが重要ではないだろうか。

  •  飛行機の爆破や小学校の襲撃などの犯罪をネット上で予告したとして四名の人物が逮捕され、うち二名は犯行を自白した。ところがその後、彼らのパソコンはウイルスを使って何者かに遠隔操作されていたことが判明する。遠隔操作していたとされる男が逮捕され裁判になるが、彼が真犯人だと完全に立証できるか微妙な中、裁判中に届いた真犯人からのメールが彼自身によるものだと発覚したことで観念し、罪を認めた。

     これが本書で扱われた事件のあらましだが、日本の司法に関して数多くの課題を残した。まずひとつはサイバー犯罪に対する警察の捜査能力のお粗末さだ。IPアドレスを絶対的な証拠だと思い込み、誤認逮捕された被疑者が遠隔操作の可能性を主張してもまったく取り合ってもらえなかったという。この点については本件を始め経験を積むことで今後改善されていくことが期待できる。

     しかしもうひとつの重大な問題は、誤認逮捕された被疑者がやってもいない罪を自白したという点だ。昔から警察の過酷な取り調べで精神的に参ってしまった被疑者が嘘の自白をする危険が指摘されていたが、本件では四人中二人という高確率でそれが起きたことになる。しかし警察や検察は誤認逮捕もまた真犯人の責任だとするだけで、取り調べ方法に問題があったとは認めていない。この点は今後も改善される期待は薄い。

     著者は米国の報道機関での勤務経験を持つフリージャーナリストだが、日本の司法制度の問題点は深く憂慮している。名目上は日本でも推定無罪や公開裁判とされているが、実態はかなり異なるという。本書はその点への問題提起を主な目的としているとも言えるだろう。

     ただこれは司法やメディアの人々の問題だけでなく、日本社会全体に冤罪を軽視する風潮があることが原因ではないだろうか。「百人の罪びとを放免しようとも、一人の無辜の民を刑することなかれ」という言葉に素直に賛成する人は必ずしも多くないように思える。変えるとしたら、そういった風潮をまず変えていく必要があるだろう。

  • デジタルデータは簡単に消去されてしまいます。だから、たとえば「したらば掲示板」のログは、わかった時点ですぐに全部取り寄せておくべきだった。まずデータは手当たり次第全部集めておいて、後から一つひとつ可能性を潰していくような捜査が必要だったと思います

    手当たり次第集めても、その中から所望の情報を探すのはかなり難しいです。

    この間も、知財のある事項についてググるも、なかなかこれだと思う文献に辿り着けませんでした。言葉の羅列だけで検索するには限界がある気がします。では近接検索使おうかというと、Googleでは使えず、文字間隔の適正値も探索せねばならぬので、そうは問屋がおりません。

    いかに早く正確に検索するかも一種のスキルというのであれば、なんとなくで取り組んでいた態度はやめにして、鍛錬が必要です。

  • 216頁:あなた自信の言葉で言うべきだ
    ⇒自身
    455頁:アクセス・ホネット
    ⇒アクセル
    496頁:著名な哲学者の故小室直樹が、……
    ・小室直樹氏は哲学者だったのか。知らなかった。
    551頁:関係人の明由生又は生活の平穏
    ⇒関係人の名誉又は
    ・著者は「一つ」と「1つ」を使い分けているのだろうか?
    単にその時表示されたIMEの変換結果をそのまま受け容れて無原則に使っているのではなかろうか?

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著者プロフィール

ビデオジャーナリスト。1961年東京都生まれ。国際基督教大学(ICU)卒業。1986年、コロンビア大学ジャーナリズム大学院卒業後、AP通信など米報道機関記者を経て1999年日本初の独立系インターネット放送局「ビデオニュース・ドットコム」を設立。同局報道番組キャスターのほか、CS朝日ニュースター「ニュース解説・神保哲生の眼」、TBSラジオ「Dig」などでもキャスターを務める。

「2012年 『メディアの罠』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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