- Amazon.co.jp ・電子書籍 (1472ページ)
感想・レビュー・書評
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端的に感想を書くと、メフィスト賞受賞にふさわしい傑作でした。
分量もさることながら、様々な学問分野のエッセンスがちりばめられており、しかも伏線の回収もばっちりな作品です。
人によっては第1,2部あたりが退屈に感じてしまうかもしれませんが、特に第4部に入ってからの吸引力は尋常ではないです。普段夜更かしをしない私が展開が気になりすぎて、思わず夜更かしをしてしまったぐらいです。
読書好きが読むと響くフレーズや描写も多数ありましたし、第4部ではとても感情を揺さぶられました。
個人的には少しずつ読んでいくよりも、まとまった時間で一気に読んでしまった方が良い小説だと思います。
このような作品を書いた作者にただただ畏敬の念を抱くばかりです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
古今東西の書物が集まる図書館、通称高い塔の主マツリカは話すことのできない少女だった。聞くことはできるば、指示はすべて手話。そして新しく図書館に遣わされた手話通訳者キリヒト。山育ちの彼は文字を知らない。この世界では、図書館がその智をもって、政治的にも無視できない勢力と見做されている。マツリカに従う優秀な司書ハルカゼとキリン。魅力的な登場人物たちが、海峡をめぐる国々の思惑や陰謀を背景に活躍する。分厚い本が2冊で、ちょっと躊躇するボリュームだが、ファンタジーが好きな人にはぜひおすすめしたい。(文庫だと4冊らしい。)
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久々に面白いファンタジーに出会った。策略に次ぐ策略。マツリカとキリヒトが大人びすぎていて若干こわい。はやく続編出て!
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和製ファンタジーの最高傑作のひとつ。
今回は再読。難しい語彙や伏線を確認するにあたり、4冊合本の電子書籍を買った。
初めて読んだときは2巻あたりまでは読むのが苦痛で辛かったが、今回は最初から楽しく読むことができた。
精密な世界観設定と権謀術数のやり取り、伏線が繋がる快感。このレベルまで考え抜かれたファンタジー作品はそうそう読めるものではない。 -
最初は正直なところ「中二病」をこじらせた感じの世界観なのかなと思ったが、ところがどっこい、よくもここまで細部を作り上げたものだなあと読み終わる頃には感心してしまった。
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「言葉」(でもその言葉とは……)を巧みに操るちょっと性格が偏った図書館の魔女マツリカ、脇を固めるハルカゼ、キリン、もちろんキリヒトも、そしてイラムも、みんなキャラが素敵です。
こんなにも知らない日本語がたくさんあるのか、と思い知らされました。普段は使わないような難しい単語がたくさん出てくると、もっと簡易な言葉で表現できるのにわざわざ知識をひけらかす必要あるのか?と思ってしまうところですが、この物語だからこそ、「言葉」がテーマの物語だからこそ、その難解な単語・表現がとても世界観に合っています。
「言葉」で交渉をまとめ上げていくのはとても面白かったですが、この話の中での戦闘シーンは個人的にはどうも…… -
この本の世界に入るには、なかなか敷居が高く、すき間時間でちょこちょこ読むのが難しい本で、約2カ月位放置していました。最近、半日位読書時間があった時に、改めて読み始めたら、すっかりはまってしまい、4冊分を1週間位で読み切ってしまいました。
作者の自己満足かどうかわかりませんが、やたらと難しい漢字や用語を使っていますが、軽くスルーしながら、本の流れに乗ると楽しく読めると思います。
電子版は、漢字や用語を検索しながら、読めるので、紙版より電子版が良いと思います。 -
久し振りに楽しい読みごたえのある小説で、惹きこまれました。
既刊の次の作品、これから発刊するであろう3作目、楽しみです。 -
山里で育った少年キリヒトと一の谷という国の政を英知を使って裏から仕切る図書館の魔女と呼ばれる女性マツリカの物語。
マツリカは話ことができないが、とても雄弁に手話を使って会話をする。お付きには出自の違う二人の優秀な女性の司書がおり、彼女らが情報の断片から全体像をくみ上げていく様が面白い。
言葉を操って国を動かすマツリカがしゃべることができないのは作者の皮肉か。
随所で描かれるマツリカとキリヒトのやり取りの様もページを経るごとに砕けたものになってくるのも楽しい。中盤で刺客を放つ敵国ニザマを相手に立ち回るキリヒトの真の姿が明かされる。
小さな糸口から推論で敵国の状況を読み取り、Win-Winの関係を構築しようとするマツリカ。
それを阻止せんとするニザマの宰相ミツクビとその刺客を撃退しながら進むマツリカ一行。
終盤はキリヒトと一行の活躍をテンポよく読ませる。最後まであきらめずに事態を収拾する二人をワクワクしながら追ってしまう。
最後は恋か?
伏線が各所に張られているのはいいのだが。「伏線です」的な表現はいかがなものかと思う。
皆がいう通り最初は説明がくどい感じがあるが、後半に行くにしたがってテンポが上がってくる。
この内容であれば、先代の時代でも十分に書けると思うのだが、作者にその気がないのかな? -
著者は言語学者とのこと。なるほどである。
世界観は精霊の守人に似た感じ。ヨーロッパ、アフリカ、アジアを縮小したイメージで世界を描いている。
図書館の魔女と呼ばれるマツリカと彼女の護衛の人を受けたキリヒトを中心に個性豊かな登場人物で物語られている。
図書と言語がテーマなのにマツリカは言葉をしゃべることができない。キリヒトは刺客として育てられ文字の読み書きができない。
キリヒトの人並み外れた聴覚をはじめとした感覚の鋭さがマツリカの人並み外れた知識と判断力が組み合わされ、大国間で巻き起こる大戦の危機を防いでいくのである。
ふたりの物語が連作ものとして繰り広げられていく予感だが、次のシリーズではキリヒトは登場しないらしい。