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感想・レビュー・書評
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コミンテルンが以下に戦前日本に食い込んでいたかを、コミンテルンの歴史とともに記述していて、色々面白い知見が披露されているのだけれど、所々に筆者の歴史解釈を、現在の政党政治への言及に延長しているところが、この本の魅力を下げている。歴史に絞って、書いてくれたらよかったのに、時々現在の共産党の言及があって、興ざめする。
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戦前のを庶民とエリートの分裂した社会、そしてエリートについては左翼全体主義者、右翼全体主義者、保守自由主義者と分類している。面白いしある程度そうなのだろうが、どの程度妥当性があるのかは本書だけではよく分からない。このような視点を以て今後他書も多く読み知識を深めたい。
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開始:平成29年9月24日
読了:同年11月5日
江崎さんの著作を初めて読んだ本。チャンネルくららで知り、江崎さんの言説をお聞きして信頼できる方だとすぐに分かった。威勢のええことばっかり言って人を煽る奴が多い中、地に足を付けた実務を分かってらっしゃる方だという印象が残った。毎年、PHP新書から出版されていたのに、去年は出なくてとても残念だった。お体の調子が悪いと言っておられたが、大丈夫だろうか。
著作では日本人以外の世界の人間は相手をどう自分たちの方に有利になるように利用するかを常に考えているということをまざまざと見せつけられた。またひるがえって、現代の日本の政治家、官僚たちも少なからず国民をどう利用しようとしているか、よく見ておかなければいけないと感じる。 -
明治時代のエリート青年たちの苦悩が痛ましい。「エリートたちが一般庶民から切り離され、過去を捨てて、進歩主義や社会主義に親和性を持ったことは、時代の悲劇であった。」
中国共産党を育てたのは日本だった、というのはショック。そして、コミンテルンの指示を受けた中国共産党の指揮下で、日本共産党が結成された、と。
中国共産党の対日工作は、昭和初期に始まっていたらしい。
国会で、共産党や野党が「愚にもつかないスキャンダルを取り上げて、根掘り葉掘り与党を追及する」のは、議会制民主主義の信頼性を失墜させて破壊するためだったのね。
東大は昔から日本を小馬鹿にしている、全体主義者の巣窟だったとは知らなかった。それに対抗する「保守自由主義者」たちの組織もあったけど潰されてしまった。
政府の企画院は公文書で「日本は建国以来世界無比の全体主義国家」とか寝ぼけたことを言っている。この文書が「日本は、自己肥大的で狂信的な全体主義国家だった」とGHQの誤解を招いたらしい。
『改造』という雑誌が、売れる記事を模索していくうちに真っ赤に染まってしまった、というぐらい、当時国内に共産主義がはびこっていた、というのも知らなかった。
ゾルゲ事件の尾崎は、愛国心から右翼全体主義に反発し、左に傾倒していった。コミンテルンに従っていれば日本は救われると本気で思っていたのか。
「コミンテルン陰謀史観」だけでは、戦前の日本の問題は見えてこない、と著者は言う。「右翼全体主義」、「左翼全体主義」、日本古来の「保守自由主義」が複雑に絡み合いながら対立していたり、一人の人の中で葛藤があったり。
今、日本は一応民主主義だけど、各国がスパイを使う中、日本だけが「正々堂々」では共産主義国家に対抗できないと思う。
2014年に施行された特定秘密保護法は、違反者が官邸内の人物だった場合は想定してないらしい。この本を読んだあとでは、官邸内にスパイや工作員がいないとは信じられない。
難しい本だったので、書かれていること全てを理解できてないと思うから、折を見てもう一度読み直してみたい。