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- / ISBN・EAN: 4907953270534
感想・レビュー・書評
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1997年。
当時を思い起こせば、阪神淡路大震災からの復興で何も見えていなかった。この頃好きだった映画は殆ど観ておらず、音楽もラジオ以外は聴いていない気がする。
自身の20代につい重ねてしまうが、多くの人が死んで、行方不明になった人がいたかと思えば、あらぬ再会を果たしたり、はたまた騙されたり、短期間に悲喜交々が凝縮されていた。あれから四半世紀。自身が就職氷河期と呼ばれる世代だということに気付く。奨学金という借金、家のローン、親のリストラ、祖母の介護、母のケガ・・・云々。
人こそ殺めなかったが、ここに出てくる人たちの人生のやるせなさ、自身の努力とは無関係に様々な事象に出くわす不条理を、少しは理解できる。若さ故もがき無鉄砲で、貧すれば鈍する。当時同世代の貧・病・争が綴られていて、かつてを思い出してしまった。
そういえば、あの当時モンチッチカット流行ったよね?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
香港製造/MADE IN HONG KONG
1997年 香港 108分
監督:フルーツ・チャン
出演:サム・リー/ネイキー・イム/ウェンダース・リー
http://mihk.united-ent.com/
1997年、中国返還目前の香港。学校をリタイアしてヤクザの兄貴分ウィンの下で借金の取り立てを手伝っているチャウ(サム・リー)。父親は愛人を作って出て行ったため今は母親と二人で貧しい公団暮らし。喧嘩が強いことだけが取り柄だけれど、知的障害者のロン(ウェンバース・リー)を弟分にしていじめっ子からいつも守ってやったり、根は優しく面倒見が良い。
ある日、借金の取り立てに行った家で出逢った少女ペン(ネイキー・イム)にチャウは惹かれ、ペンもまたチャウに心を寄せるがペンの母親はただのチンピラであるチャウとの交際を許さない。
そんな中、ロンは女子学生サンの飛び降り自殺を目撃、遺体のそばに落ちていた血まみれの遺書2通を拾う。1通は家族あて、もう1通は恋人あて。チャウとロン、ペンの3人はその遺書をそれぞれに届けることにするが、実はペンは腎臓の病気で余命いくばくもないことをチャウに打ち明け・・・
20年前の青春映画の名作のデジタルリマスター版。あまりの懐かしさにそれだけで涙が出そうだった。20年前に(正確には日本で上映されたのは1999年、私は銀座のテアトル西友で観ました)ものすごく大好きだった映画で、これ1作でサム・リーに恋してしまい(笑)、同じくフルーツ・チャン監督の2作目『花火降る夏』も観に行ったけれどこちらはイマイチ、その後日本で『ピンポン』が映画化されたときにチャイナ役をやったのもいそいそ観に行ったっけ。
当時は90年代半ば~後半にかけて流行ったウォン・カーウァイのおかげで香港映画が日本でも沢山上映されていて、それでたまたま観たのだったけれど、今観てもとても映像がスタイリッシュ、モデル体型のサム・リーもとてもオシャレでかっこいい。(ただ「腰パン」だけは今みるといただけない。ほぼ半ケツ・苦笑)
余命わずかの女の子とチンピラ青年の恋、に焦点をしぼれば日本ではお涙ちょうだい映画になってしまうのだろうけれど、この映画はそういうあざとさを一切感じさせないほどヒリヒリしている。10代の頃誰もが感じていたであろう世界と自分だけが相容れないかのような違和感。大人はみんな汚くて、自分は孤独で居場所がなくて、だからこそほんの少しの心の繋がりを宝物のように守ろうとする。
3人だけの小さなコミュニティ、けれど遺書を届けることをゲームのように楽しむ彼らの姿や、自殺した少女サンのお墓を探す場面での彼らは本当にとても幸福そうだった。会ったこともないサンに覚える不思議な共感、ああいうのも10代特有のものだろう。飛び降りる直前までサンは屋上で飲み食いし、まるでピクニックにでもいくかのように軽やかに飛び降りる。軽々と、生から死へと。3人の行く末を象徴しているかのように。
終盤の急展開、すべて失ったチャウの孤独には本当に胸が詰まる。ペンの恋心、チャウの優しさ、何もかもが切ない。すっかりおばちゃんになった私にはもはや彼らの痛みを現実のものとして感じることはできなくなっていたけれど、それでも映画そのものは色褪せることはないと感じました。若い人に観てほしい。 -
2021/6/16
良い映画、日本の70年代のもののよう。 -
1997年ということで、20年以上前の映画。
予備知識なしにみたけどオープニングのクレジット部分に早速、アンディ ラウの名前見つけて(制作サイド!) 既に期待大。
本編スタートしたら、今度はサム リーが出てるじゃん。それもまさかの主演?主演だわ。サム リーって、こういうチンピラ役やらせたら"本物?"というくらいハマるよね〜。
お話のあらすじは他に沢山ネタバレがあるのでここでは省くけど、変にハッピーエンドになってなくてそれが良かった。青春映画。若い時ってそういうのあるよね、と思える歳になった自分。
あちこちの映画評読むと、どうやら香港の中国返還直前の作品らしい。返還前の香港には1度しか行ったことがない。その後しばらく経ってからは何度か行っていて年に複数回という時もあるが、どんどん街がキレイになっていってる。逆にいうと、あの香港という言葉からイメージされる猥雑さやイギリス時代を感じさせるモノがどんどんなくなってきてる。
ジョニー トーも、このままいつまで自分が育った町並みが残るのかわからないので今のうちに映画に収めておく、という旨の事を言っていたくらい。
1つ気になったんだけど、中国文化では墓石の上に人が乗っかっても良いの? 土足で墓石から墓石へ飛び乗っていく場面では見ていて落ち着かなかったよ。