若者は本当に右傾化しているのか

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  • 楽天 ・本
  • / ISBN・EAN: 9784757223004

感想・レビュー・書評

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  •  保守派論客である著者が「若い世代の右傾化論」を否定するという本。(批評分野では「立証」や「実証」がどの程度の精度を必要とするのか、を私は知らないのですが)
     上記の噂に対する著者の分析には納得できました。論の運びが一部の荒っぽい新書に比べてはるかにまともです。
     ただし、筆者の主張の説得性は別問題です。ソーシャル云々については、もう少しページ数を割いて説明してほしい事柄でした。

     あと、ネットで現れている発言の量は、右翼側のものの方が、(質の高低は置いといて)圧倒的に多いことの影響はどうなんでしょうか。 

     それにしても、『永遠の0』の作者がこんなことになるなんて古谷氏は想像だにしなかったでしょね……。


    【目次】
    プロローグ 「若者の右傾化」をめぐる事実認識と「オッス、オラ極右」の世界観 

    第一章 「永遠の0」「田母神俊雄」というキーワード 
    『永遠の0』は本当に「右傾エンタメ」か
    二十代は「田母神俊雄」をどれくらい支持したのか
    「保守的な若者」はどこにいるのか

    第二章 「若者が右傾化している」論は本当か 
    「若者が右傾化している」論はいつ生まれたのか
    愛国心が高いのはどの世代か
    インターネットは本当に「若者の空間」なのか
    田母神氏を支持したのは誰か
    もしかしたら「若者は左傾化している」?
    「靖国参拝」には賛成するが、右ではない

    第三章 「若者は政治に無関心」の嘘 
    なぜ保守は若者に支持されないのか
    若者が山本太郎に投票した理由
    なぜ保守は貧困問題を取り上げないのか
    「反貧困」をめぐる左右のねじれ

    第四章 なぜ保守は貧困問題に無関心なのか 
    保守は生活保護不正受給問題にどう反応したか
    戦後保守が高度国家論に偏重した理由
    戦後の保守論壇を支えたフジテレビ
    社会的成功者としてのネット保守
    福音派とネット保守の共通点

    第五章 保守のマッチョイズムと自己責任論の嘘 
    保守の「凛として美しく」路線
    「自己責任論」は正しいのか
    保守の「三位一体」の思考パターン

    第六章 「ソーシャル保守」の誕生 
    ネット保守からソーシャル保守へ
    ソーシャル保守の目的は同胞融和
    むすび

    エピローグ イデオロギー世界観の終焉 

  • 「若者の右傾化」をめぐる議論に対して疑念を表明する本だが、本書はインターネットが2000年の時点で既に「若者」のメディアではないということ、また「保守」には社会的成功者が多いということを主張している点で類書とは一線を画すものである。さらに山本太郎や吉良佳子などがなぜ当選したかについて、それは「反原発への支持」「左傾化」ではなく労働問題などを訴えていたことに触れ、保守派が貧困問題について無関心であったことを批判していたりもしており、「ソーシャル保守」の樹立を提案するなど、極めて深い議論が展開されている。「若者の右傾化」をめぐる議論には様々な疑念が提示されているが、現象面に対する疑念については最高峰に位置する著書と見ていいだろう。ただ、なぜ「若者」が「右傾化」の主体として過大に敵視されたかということについては本書からは知ることはできないが(香山リカの『ぷちナショナリズム症候群』が今の「右傾化」論を基礎づけたのは間違いないが、さらに遡ると1990年代の若者論の転換も欠かすことはできないだろう)、それは本書の著者の仕事ではないだろう。

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著者プロフィール

古谷経衡
1982年札幌市生まれ。作家・評論家。立命館大学文学部史学科(日本史)卒業。(社)令和政治社会問題研究所所長。(社)日本ペンクラブ正会員。NPO法人江東映像文化振興事業団理事長。インターネットとネット保守、若者論、社会、政治、サブカルチャーなど幅広いテーマで執筆評論活動を行う一方、TOKYO FMやRKBラジオで番組コメンテイターも担当。『左翼も右翼もウソばかり』『日本を蝕む「極論」の正体』(ともに新潮新書)、『毒親と絶縁する』(集英社新書)、 『敗軍の名将』(幻冬舎新書)など著書多数。

「2023年 『シニア右翼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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