鼻 [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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感想 : 7
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感想・レビュー・書評

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  • すごく偉い人がつまらない悩みを持っているというのが可愛らしくておかしい。当事者である内供は本気で苦しんでいるのだろうけど、第三者の目から見たらなんだそんなこと、と言ってしまいそうなことがコッケイに映るんだろうなあ。
    傍観者の利己主義、という堅苦しい言葉がまたおかしい。偉い人がカツラをかぶってハゲを隠そうとするとよけいに笑える構図と同じだろうな。
    昔話のように優しい語り口で、滑稽味を感じる人もあれば身をつまされる人もあり、教訓のように感じることもできるだろう。この短いページでいきいきと描き切っているのは本当に凄いとしか言えない。

  • 50歳を超えても容姿に悩んでいる高僧であっても、鼻の長さを気にして取った行動から、どんな結論が導き出されたか…
    オチを楽しみにして読みました。

  • 「鼻」 1916年(⼤正5年)

     池尾というのがどこかと調べたところ、宇治市と長岡京市の二説あるみたい。でも、禅智内供はかなりくらいの高いお坊さんで、寺の周りも繁盛していたようだ。

     なるほど夏目漱石が好みそうな、飄逸な作品だと思う。
     特に、禅智内供が、自分から鼻をゆでる治療をしようと言い出せず、弟子にいろいろとお回しにおためごかしにものをいって、治療をさせようとするところが、漱石好みだなと思う。

     芥川版と今昔版では鼻がふくれた病因が違う。
    あと、芥川版では、中童子が何度もしつこく、禅智内供をなぶりにくる。
     禅智内供の日頃のこころがけがよいなら、「鼻が治ってよかったですね」と、口には出さないが心中思っていた人もいたはず。もしできれば「どのような治療をされたのか、後学のために聞いてみたい」などと思っている人もいたに違いない、と個人的には思う。

    【題材となった古典作品】
    ☆『今昔物語集』 巻28の20 「池尾の禅珍内供の鼻の物語」
    巻28第20話 池尾禅珍内供鼻語 第二十
    https://yatanavi.org/text/k_konjaku/k_konjaku28-20

    ☆『宇治拾遺物語』 巻2の7 「鼻⻑き僧の事」

  • 『鼻』は、鼻があまりにも長すぎることが悩みであった禅智内供の日々の出来事や思いを描いた作品っである。人間の心の内面がこの作品から読み取れる。彼が自分の鼻を嫌がった一番の理由は、自尊心が傷つけられるからであった。自分がこんな鼻をしているばっかりに、弟子に鼻を持ち上げてもらわないとご飯を食べることすらできないと、消極的的に考えた。またその一方で、どうにかしてこの鼻を短くしようと積極的に様々な方法を試みた。そしてあるとき、一人の弟子が医者から良い方法を聞いたと言ってきたので試してみた。すると、本当に鼻は短くなった。しかし、周りの者は自分の鼻を見て笑うようになったのだ。この作品のみそはここにある。なぜ人々は笑うようになったのか。人々は皆、他人の不幸に同情するが、どうにかしてその不幸を切り抜けると、なんだか物足りない気持ちになってしまうのだ。ここに、人間の嫉妬という感情が表れている。誰しも人間は、心の奥に嫉妬という負の感情を持つものなのだと私は考える。

  • 人の心にある一対の矛盾した感情について書いた説話
    他人が悩んでいる間は同情、かわいそうな人として見るけれどその人の状況が好転するとそれはそれで違和感をもつし、なんなら前のように悪い状態へ導こうとする。起き上がりこぼしのよう

  • 人間の滑稽さと醜さが表れている。
    同情していた者が不幸から逃れると、敵意になってしまうのだろうか。

  •  極長鼻コンプレックス爺さんが自尊心回復のために謎の治療法で鼻を治すも、かえって笑われて枕を濡らす。しかし、ある朝もとの鼻に戻っていて大歓喜、というオッサンのカツラのようなお話。
     主観と客観の温度差を感じ取れる。昔から笑われていた鼻も既に人々は慣れ受け入れている事実を軽視し、渾身の思いで治したはいいが、これが転機となり人々はカツラのごとき違和感と滲み出る必死さを笑い、爺さんは短くなった鼻そのものが変なのだと考え、泣き寝入る。という強引な解釈。
     結局もとに戻って喜ぶ姿がばからしくて微笑ましい。夏目漱石が絶賛ということで、主とした暗示があるのだとは思うが、正直自分には解らなかった。

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