若返り薬 [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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感想 : 4
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  • 作品名の通り、飲んだら若返る薬のお話である。
    主な登場人物は、太郎さん、太郎のお祖父様、老人の乞食。
    太郎さんが親から貰った空気銃で毎日雀を撃って、一匹も当たらないうちに弾が無くなり、お祖父様から三粒の赤い丸薬(風邪薬)を盗んで弾代わりに使ってしまう。しかし三粒とも雀には当たらない。外へ出て雀に当たらなかった丸薬を探しに行ってみると、そこには一人の老人の乞食がいて三粒の丸薬を不思議そうに見ていた。太郎さんが乞食に「それは僕のだから返してくれ」と言うが乞食は空から降ってきたのを私が拾ったのだと言ってなかなか返そうとしてくれない。太郎さんは仕方なく、お祖父様から盗んだ薬であることを乞食に話す。すると乞食はこの丸薬は飲んだら若返る薬だと言い、そんな大切な薬を空気銃の弾代わりに使う乱暴な坊ちゃんに返すわけにはいかないと言う。太郎さんは泣いて乞食に謝るが返してくれそうもない。それどころか私が飲んでしまいますと言って薬をペロリと飲み込んでしまう。三粒飲んだところで乞食は消えてしまったのだ。太郎さんは急いで家に帰りお祖父様に自分のしてしまったこと、先ほどまでの出来事を泣きながら話すと、太郎さんの父と母は太郎さんの話を信じないで笑いものにする。しかしお祖父様だけは笑わずに、「どんなものでも間違った使い方をしてはならないということを太郎は学んだのだ。」と言う。
     あらすじを要約すると、お祖父様の風邪薬を勝手に盗んで空気銃の弾代わりに使ってしまった太郎さんが、どんなものもあるべき用途を守り決して間違えた使い方をしてはいけないことを学ぶお話である。

  • 作者:夢野久作/海若藍平
    生年:1889年 没年:1936年
    僧侶や新聞記者などを経て作家になる。
    怪奇味と幻想性の色濃い作風が特徴である。

    作品:若返り薬
    初出:「九州日報」1923年(大正12年)1月
    幻想短編小説。

    あらすじは以下の通りである。
    太郎さんは自分の欲求のために祖父の物を盗み、用途と違った方法でその物を使ってしまう。太郎さんにはまだ罪の意識はなかった。
    しかし、ある一人の乞食に出会い、その乞食に太郎さんは悪事を働いていると言われる。
    そして乞食は、己も罪を犯したのだと太郎さんに告白する。
    さらに、私はその償いをしなければならない。坊ちゃんも償うことになるのだよ、と言い残し存在そのものが消えてしまう。
    太郎さんは罪を意識するとともに償いに恐怖し、祖父のもとへ罪を告白しに行く。

    どんな人間にも、罪を自覚し意識する時が来る。自分自身で気がついたり、親や先生など親しい人から諭されて気が付いたりと、色々なタイミングで罪への意識、罪悪感が生まれる。
    この太郎さんの場合は、ある一人の乞食の行動で罪の意識が生まれたのだと考える。存在そのものが消えてしまった乞食によって、叱られるよりも怖い体験をした太郎さん。
    この経験により罪の意識が生まれ、太郎はは正直に謝りに行ったのであろう。
    よく大人は子供に、存在が不確かなものを使って注意をする。「ご飯を残すと“もったいないばあさん”が来るよ」などが例である。だいたい子供たちはこれらの注意を受けると怖くなって言うことを聞く。
    この小説はそれらと似たようなものであるのではないかと考えた。

  • 教訓めいた話だけど、夢野久作のあのホラーな感じがじわじわ。

  • 物乞の話が怖くて印象的でした。
    丸薬を盗んで起こりうる最悪の事態や、若返りの薬の作り方、人が消えてしまった話を笑わない祖父などなど、奇妙で魅力的。
    子供のうちに読むといい作品。

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著者プロフィール

1889年福岡県に生まれ。1926年、雑誌『新青年』の懸賞小説に入選。九州を根拠に作品を発表する。「押絵の奇跡」が江戸川乱歩に激賞される。代表作「ドグラ・マグラ」「溢死体」「少女地獄」

「2018年 『あの極限の文学作品を美麗漫画で読む。―谷崎潤一郎『刺青』、夢野久作『溢死体』、太宰治『人間失格』』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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