支那米の袋 [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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  • ひとつの出来事をきっかけに、新しい論理が生まれてしまう。そういうところがバラードの『クラッシュ』ととてもよく似ている。
    互いに痛みつけ傷つけあうという体験、そして、あやうく命が奪われるところまで行って引き返す。そんなことにってしまうと、クラッシュを求める特異な論理が生まれてしまう。
    ただ、夢野の優れているところは、そんな論理を恋愛遊戯と言い切ってしまうところである。心中という、最高に贅沢な、日本特有の遊び。なんというシニカルな表現だろうか。誰かのためになんて死ねない。誰かを殺すことはできても、誰かとともに死ぬなんてことはできない。バラードのように無理な融合をさせない、死は死だと端的に言い放つ禅僧らしいやり方だと思う。
    そんな遊びの語りで終始貫かれる物語。しかも酔った勢いでまくしたてるように語らせる。虚構か事実かわかるようでわからない。語りかけられる日本軍人の存在もまた同様。死の予感はあっても実際の死を書かない。またしても見事にやられた感じがする。

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著者プロフィール

1889年福岡県に生まれ。1926年、雑誌『新青年』の懸賞小説に入選。九州を根拠に作品を発表する。「押絵の奇跡」が江戸川乱歩に激賞される。代表作「ドグラ・マグラ」「溢死体」「少女地獄」

「2018年 『あの極限の文学作品を美麗漫画で読む。―谷崎潤一郎『刺青』、夢野久作『溢死体』、太宰治『人間失格』』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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