浮かぶ飛行島 [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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  • 「浮かぶ飛行島」は、阿片戦争から約100年後の1940年ごろの練習艦隊明石の乗組員が主人公で、英国が中心となり東シナ海上に建設している飛行島が舞台の物語だ。
     日本の練習艦隊須磨と明石が欧州訪問の旅を終えて、帰航の途の最中で事件は起こる。日本の練習艦隊2艦はこの物語の舞台となる飛行島に見物と観光の目的で立ち寄る。 
     飛行島見物が終わり、練習艦隊明石の乗組員の点呼をとると川上機関大尉という一人の機関大尉がいないことが判明する。練習艦隊は、飛行島の指揮官リット少将に川上機関大尉を捜索するため再度上陸の許可を求めるが、許可は下りず川上機関大尉を発見し練習艦隊に連れ戻すことができずに、日本へと出発してしまう。
     さらに事件は起こる。川上機関大尉の秘書をしていた杉田という乗組員が川上を探すために、船から脱艦してしまう。
     物語が進むにつれ飛行島はただの海上の空母でなく、日本に侵略するために建設されているものだということが判明する。
     杉田は、川上機関大尉を探そうと飛行島の作業員に自らの身元を明かし大胆に行動したために、罠にはめられ重傷の怪我を負い英国軍隊の捕虜にされてしまう。
     川上機関大尉は飛行島の英国軍隊に見つからぬように様々な飛行島の建設作業員などに扮装して飛行島の内部調査を進めていく。調査が進むにつれ、飛行島は日本の首都東京をも破壊しかねない威力の爆弾を大量に積んでいることがわかる。彼は、杉田のことを気にかけつつも、大日本帝国のために、飛行等破壊という任務を一人で遂行しようとする。
     様々な困難に見舞われるも、川上機関大尉と杉田は飛行島爆破という大きな任務を果たす。しかし、杉田は、飛行島爆破のために自ら爆弾を抱え爆弾子に飛び込み殉職した。
     この話は、はじめは話の舞台が飛行島や練習艦隊などあちらこちらに飛び、話流れをつかむことすら大変であった。目まぐるしく様々なことが起こるが、そのたび川上機関大尉の命が危険にさらされる。川上機関大尉の消息はその場では明かされず次の問題が発生したときにその主犯が川上機関大尉であったことが明かされる。
     毎度毎度、ひやひやさせられたが、その度に川上機関大尉の巧みな紛れ込む技術に驚かされた。 話の結末として、杉田と川上の二人での帰還は叶わなかったのがとても残念だと感じた。当初の自分の話の展開とは別の結末となり、良い意味で期待を裏切られたと感じた。
     読み始める前はこの物語は長いと感じていたが、読み進めていくうちにその長さを感じなくなっていた。とても面白い話なので、時間があるときに是非読んでほしい。

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著者プロフィール

1897-1949。推理小説家。日本SFの草分け。主な作品に、「電気風呂の怪死事件」「深夜の市長」「赤外線男」「蠅男」「十八時の音楽浴」「地球盗難」「火星兵団」など。

「2018年 『海底大陸』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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