RUR ――ロッサム世界ロボット製作所 [青空文庫]

  • 青空文庫
  • 新字新仮名
4.43
  • (4)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 21
感想 : 5
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • 青空文庫 ・電子書籍

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 訳者は大久保ゆう氏(2003年初訳)。原著の著作権が失効しているので、青空文庫でこの邦訳をアップできているとのこと。「ロボット」の語が初めて使われたことで名高い作品とは知っていたけど、読む機会がなかったので、ダウンロードして読んでみた。

    ある孤島に置かれた、「ロッサム世界ロボット製作所」が舞台。もともとは、ロッサムという名の人物が道楽というか、実験を行っていた場所だが、現在は経営・技術陣が組織化され、研究・開発・販売に精を出している。しかも大繁盛。「ロボット」というからにはメカメカしたイメージを持っていたが、有機的なプロダクトだったことが意外だった。人間ではないから、「労働代行製品」といえるのかも。

    大久保氏の解説でほとんどのことが網羅されているので、付け加えてどうこういうことはまったくないんだけど、1920年という発表時期を考えると、労働問題やその解決方法の模索、人間と似た、あるいは同等、それ以上のプロダクトを生むことで起こるだろう科学・倫理上の問題、それに対する人(じゃないけど、まあそれ相当のもの)権的配慮など…がみっちりと詰めあわされており、ここまで先回りされて考えられていることにただただ驚いた。「これ、問題になるよなあ」とうすぼんやり思うことが、いちいち大きな問題となり、尋常でない混乱を招いていく。そこから目を離さない、『ダーシェンカ』や『園芸家12か月』のチャペックおじさんは、実は硬派なお人だ。今となっては、展開や小道具がありきたりの感は否めないけど、それはこの作品自体の問題じゃなくて、これを下敷きにした作品が数えきれないほどあるということなんだろう。

    島に意気揚々と乗り込んでくる女性・ヘレナが、自覚なしに、あるいは自覚して少しずつやらかしてしまうさまが肝。ただ、いただけないほど思慮の浅いキャラクターに見えたところがイラッとした(笑)。舞台が研究所のゲストルームや研究室、あるいは所長の私邸なので、動きとしては少ないし、後半の大騒乱の演出は難しいかもしれないので、舞台にかけるより、大人テイストのしっかりしたアニメで見たいと思った。ティム・バートンが人形アニメで作ってくれないだろうか。

    • Pipo@ひねもす縁側さん
      フルCGだと制作側にはある意味楽なのかもしれませんが、リアルさを出そうと思えば思うほど、作りものくささ全開(特に陸上生物)になるのが皮肉だな...
      フルCGだと制作側にはある意味楽なのかもしれませんが、リアルさを出そうと思えば思うほど、作りものくささ全開(特に陸上生物)になるのが皮肉だなあ、といつも思います。

      この作品のトーンからいえば、クエイ兄弟のほうが合ってるかもしれませんね。なるほどなるほど。
      2013/02/15
    • lacuoさん
      これが、ロボットという言葉がはじめて使われた作品なんですね。
      これが、ロボットという言葉がはじめて使われた作品なんですね。
      2013/05/01
    • Pipo@ひねもす縁側さん
      lacuoさん:

      実際には「ロボタ」に近い発音らしいんですけどね。読んでみると、実際に今、私たちのイメージに近い「ロボット」を作ったのは、...
      lacuoさん:

      実際には「ロボタ」に近い発音らしいんですけどね。読んでみると、実際に今、私たちのイメージに近い「ロボット」を作ったのは、アイザック・アシモフのほうのように感じます。
      2013/05/01
  • 生活で、産業で、多方面に役立つロボットですが、この作品が語源です。

  • 『ロボット』という呼称のもととなった戯曲。オーウェル『ウィガン波止場への道』で引用されていたので読んでみました。とても好きな作風。オーウェルの引用とちょっと印象が違ったけれど、それはオーウェルの解釈によるものなのか、それとも私の解釈なのか、はたまたそれぞれの翻訳のニュアンスの差異から生まれたものなのか。ロボットの誕生、反逆、そして生命が絶え、そして再生の兆しが見えたところで物語は終わる。短い話ですぐ読めるのですが、かなり良かったです。電気羊やI Am Legendのような雰囲気。二人のヘレナが素敵です。

  • ロボットという言葉はこの1920年にカレル・チャペックによって書かれた戯曲から始まった(元はチェコ語で「賦役」という意味)のだが、のちに一般化するロボットのイメージとはかなり違っていて、「ブレードランナー」のレプリカントに近い。
    人間そっくりの体を持っていて代わりに苦しい労働を引き受け、基本的には無個性だが例外的に個性=魂を持つ者が出てくる、というところから、コストカットによる機械化画一化や人間性とは何かかといったかなり驚くほど現代的なテーマを持っている。
    一方ずいぶん古くなっている部分も多くレトロSFという感じもあってなかなかいい雰囲気。戯曲なので新解釈や演出を加えて上演したものも見てみたくなった。

全5件中 1 - 5件を表示
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×