野ばら [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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感想 : 6
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感想・レビュー・書評

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  •  毎日新聞にて取り上げられていたので、読む。新聞では昨今のウクライナ情勢と重なるところがあるとの指摘だったけど、ウクライナに限らず親しき隣人が戦争によって簡単に関係性が崩れてしまう恐ろしさを感じさせた。
     それでも2人は親しい関係を保ち続けていたのは救い。2人の関係の終わりと野ばらがリンクしてるのもね。。。

  • まず、あらすじとして『野ばら』という作品は隣り合う二つの大きな国の老人と、すこし小さな国の青年の兵士という出会うはずのなかった2人が山奥の国境を定めた石碑を守るという共通の使命を持ち出会い、「野ばら」を中心に徐々に打ち解けていくなかで、変化した先にあるものとは何かについて考えさせられる話である。
    次に、私が『野ばら』を読んで面白いと思った点は、童話であるため用いた可能性もあるが「大きな国」・「すこし小さな国」や「老人」・「すこし小さな国の青年の兵士」という具体的ではなく、抽象的な表現を用いることで読者の先入観をなくす意図が感じられたことが面白かった。また、国境のところにあった誰が植えたかもわからないような一株の「野ばら」にスポットを当て、それを中心に変化していく2人の関係や心情がとても面白かった。
    また、私が『野ばら』を読んで感動した点として挙げられるのは、2人の関係が進展していくにつれて、2人とも正直で親切であることが胸に沁みるほど感じられた。2つの国の利益問題による戦争の際に老人が発した「私の首を持ってゆけば、あなたは出世ができる。だから殺してください。」という言葉からは、老人の兵士に対する信頼の気持ちが感じられ、それに対して青年の兵士が発した「なにをいわれますか。どうして私とあなたとが敵どうしでしょう。私の敵はほかになければなりません。」という言葉から、お互いを信頼しあっている心情が読み取れとても感動した。私も年を取るにつれてそのような純粋無垢な気持ちを忘れていたので、そのような気持ちや心情を感じさせてくれたという点に、とても感動した。
    次に、この『野ばら』という作品が書かれた背景が気になり調べてみた。『野薔薇』は平和教材として国語教科書に掲載されていたが、昭和30年代頃から声高になった反戦運動の政治的な要求や,戦後の児童文学者による戦前の童話否定の攻撃の的となった「さよなら未明」(鳥越信やいぬいとみこ等若手の児童文学作家によって展開された未明童話批判)などによって、『野ばら』は批判にさらされ,平成2年度『国語六上』を最後に,教科書から姿を消した。またもう一つの背景として、大正3年にヨーロッパで始まった第一次世界大戦について未明は,「小数の自我に味方せん」と戦争を対岸の火事のようにとらえる者が多いことを嘆いたうえで,平和を希求しながら,強いられて戦争に赴かねばならない人間の不幸の側に芸術家は寄り添う必要があると述べている。以上より、小川未明は『野ばら』という作品をとおして、平和の大切さと戦争の残酷さを伝えたかったのではないかと思う。

  • 春ののどかさが、束の間現実を押しやるようだった。
    2人が斬り合う様は見たくないなと思いながら読み進めたので、2人に関していえば良かった。
    よかったと言ってよい状況ではないのだけれど。

  • 戦争って物悲しいな。人と人の繋がりを国という単位で切ってしまう。最後お別れにきた青年が物悲しく、それを象徴するのが野ばらというのが妙です。

  • 前半はほっこりしたのに、後半でしんみりしてしまった。
    最後の青年はきっと老人にお別れを言いに来たのだろう。

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著者プロフィール

明治・昭和時代の小説家・児童文学作家。新潟県出身。「日本児童文学の父」と呼ばれ、『赤い蝋燭と人魚』『金の輪』などの名作を多数創作。

「2018年 『注文の多い料理店/野ばら』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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