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吉良上野介から見た忠臣蔵

アサドリさんのまとめ

アサドリさんのまとめ

ジャンル : / 歴史・時代

作成日 : 2016年2月9日

更新日 : 2016年3月22日

  • 「忠臣蔵」を通じて日本人共通の悪役になった感のある吉良上野介義央。ですが、一連の事件の原因部分は意外にも謎だらけ。「浅野内匠頭へのイジワル」説も、実は確たる証拠がないとされます。
    悪者じゃなかった吉良上野介をテーマに、時代時代で描き継がれてきた、吉良サイド視点からの忠臣蔵ものをリストにしました。
    「吉良上野介を主人公にした物語」「周囲の人物を主人公にした物語」「ファンタジー・パロディ・創作的要素の強いもの」「解説書・エッセイなど」の4部門立てでどうぞ。

    ※読んだものからコメント・引用追加します

  • 吉良上野介を主人公にした物語

  • 吉良上野の立場

    菊池寛 電子書籍 2012年9月27日 Amazon.co.jpで見る Amazon.co.jp
    アサドリさんのまとめ

    題名読んで字のごとく、「刃傷松の廊下」前後から「赤穂浪士討入り」まで、忠臣蔵のハイライト部分をまるごと吉良上野介側から描きます。上野介から見た忠臣蔵、入門に最適の短編。

    『吉良上野の立場』より引用

    • 引用ここから 俺は、なるほど内匠頭を少しいじめた。だが、内匠頭は、わしの面目を潰すようなことをしている。わしの差図をきかない上に、慣例の金さえ持って来ないのだ。これはどっちがいいか悪いか。しかし、先方が乱暴で、刃傷といった乱手をやるために、たちまち俺の方が欲深のように世間でとられてしまった。あいつはわしを斬り損じたが、精神的にわしは十分斬られているのだ。それだのに、まだ家来までがわしを斬ろうなどと、主人に斬られそこなったからといって、その家来に敵と狙われる理由がどこにあるか。 引用ここまで
  • アサドリさんのまとめ

    吉良上野介の生い立ちから刃傷松の廊下、赤穂浪士討入りまで。彼の仕事や人生が丁寧に分かる「総ざらい」的小説です。ここで描かれる上野介は徹頭徹尾、雅で知的。やや贔屓目のきらいはありますが、おおかたの人の上野介像は大きく変わる筈です。

    『吉良の言い分〈下〉真説・忠臣蔵 (小学館文庫―時代・歴史傑作シリーズ)』より引用

    • 引用ここから 「ひと殺しっ」
       そこへ小玄関からまた一人、剃髪した茶坊主らしき少年がでてきた。さらに幼く、小がらで、まだ声変わりすらしていない。その甲高い声で、春斎はわめきつづける。
      「坊主を殺すと、百代までもたたるぞぅっ」
      「…………」
      「押しこみっ、強盗っ、ひと殺しっ」
      「なにをもうすか。われらはただ……」
      「やさしいご隠居、殺めにきた……知ってるぞ。赤穂の浪人、ひとでなしっ」 引用ここまで ー 292ページ
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    吉良家の炭部屋を舞台に、討入り当夜の上野介を描いた戯曲の台本です。
    登場人物は、炭部屋へ隠れた上野介・家臣・女中とペットの「お犬様」、たまたま盗みに入った泥棒の新助。浪士が屋敷じゅうを跋扈する緊迫した雰囲気ながらセリフは軽快なコメディタッチ。その中で、赤穂事件すべての原因や、その根底の人間のいい加減さが次々に畳み掛けられます。
    それを踏まえてラスト、上野介の動きが圧巻。吉良ファン必読の一冊です。

    『イヌの仇討』より引用

    • 引用ここから 新助 世間じゃもっとひどいことを言ってますぜ。吉良狼狽介様。きられるのがこわいの介様。
      平左 おのれ……!
      新助 あたしゃ「おいそれ者」だから、その世間の噂の尻馬に乗り、その世間の受けを狙って、こちらへ忍び入った。
      上野介 おいそれ者とは何のことじゃ。
      新助 だれかが「おい」と云った途端、理由も聞かずに「それッ」と駆け出す軽はずみ粗忽之助のことで。ところが、不思議な御縁で、直接にお目にかかってみますと、皆様は狼狽介様でも何でもない。それどころかどちら様も「デンと構えの守沈着介様」ばかり。(後略) 引用ここまで ー 55ページ
  • アサドリさんのまとめ

    こちらは文体がぐっと砕けて、領民から「赤馬の殿様」と親しまれた上野介の晩年中心。優秀でありながら、自分の頑固さと老いに振り回され悲劇へ流されてゆく一人のおじいちゃんが、領内出身の忠臣・清水一学の目も交えて丁寧に書かれます。

    『上野介の忠臣蔵』より引用

    • 引用ここから 「そこ……、ほれ」
       意味のない声を発してしまった。
       上野介の胸中に、ヒヤリと冷気が走る。
       頭の中が真っ白だった。
       なんとしたことか、名前が消失してしまっていた。ここ数日、毎日のように顔を合わせているその男の、名が出てこないのだ。 引用ここまで ー 138ページ
  • アサドリさんのまとめ

    忠臣蔵の登場人物にまつわる短編集です。

    ●「その日の吉良上野介」
    討入り前日、屋敷で茶会の準備にいそしみながら、ふと昨年の刃傷事件を回想する上野介。一体全体、なぜ浅野内匠頭は自分に刃を向けたのか? 「松の廊下」の刃傷に至るまでの、双方の些細で不幸な行き違いの連鎖を重厚緻密な文体で解き明かす、推理小説とも言える佳編。吉良、浅野、どちらへの視線もニュートラルで温かく、やるせない一編です。

    『その日の吉良上野介 (角川文庫)』より引用

    • 引用ここから やがて、上野介は、呟くように言った。
      「弥七郎、このこと、人には言うなよ。人の理解を得るには、まだ暫く時がかかる」 引用ここまで ー 155ページ
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    短編・エッセイ集。

    ●「上野介に罪ありや」
    正に討入り当夜、吉良上野介「最晩年」の二時間を追う短編。これほどの目に遭わねばならない理由は奈辺にあるのか、上野介の心の動きを周囲のパニックと共にたどります。

    『歴史の顔 (文春文庫 (157‐4))』より引用

    • 引用ここから 「それにしても、このわしという男は、なんと他人に誤解ばかり受ける人間なのだろう」 引用ここまで ー 95ページ
  • アサドリさんのまとめ

    短編集です。

    ●「吉良上野介のひとりごと」
    後半生から晩年の吉良上野介を、彼のボヤキ節も交えて描く一編。内容や着眼点に目新しさこそないものの、仕事に悩まされ妻にも頭が上がらない上野介がちょっとユーモラス。

    『こんな老人たち』より引用

    • 引用ここから だから、特別な行事、特に勅使下向というような重要な場合の作法を教えるには、それ相応の謝礼を大名達に要求するのは当然であろう。教えられない者が何もしないのが当然なら、教えて貰う者が礼物を贈るのも亦当然といわねばならぬ。お役目だから、或いは、知っているのだから、教えてくれて当然という考え方は間違っている。教える方は今日の立場になるまで、それだけの努力と出費を重ねて来ているのだ。それをそのまま、何の挨拶もなしに受け取るのは、礼を失するというべきであろう。 引用ここまで ー 74ページ
  • アサドリさんのまとめ

    著者のデビュー作となった短編集。

    ●「赤馬物語」
    領主としての吉良上野介義央を中心に、彼の生涯を描いた作品。デビュー作ということもあり文章はやや拙い印象ですが、浅野内匠頭の父・長友との交流や、(やや安易とはいえ)ラストの演出など、救いのある内容になっています。

    ●「流人吉良義周」
    上野介の養子・義周の物語。討入りの際の「不手際」のとがで諏訪に流され不遇のまま生涯を終えた彼の心の叫びが全編を通して描かれています。

    『赤馬物語―吉良上野介伝』より引用

    • 引用ここから 次の日より伴を大勢引き連れていたのを、一人で見て回るようにした。今まで駿馬に乗っていたのを、親しみの持てる農耕用の駄馬に変えた。しかも連れて歩くだけで決して乗ろうとはしない。その姿で百姓家にふらりと立ち寄っては、茶を飲み雑談をしていく。そんな時には決まって茶菓子を持参していく。突然の領主の訪問に慌てふためくが、一向にお構い無しだ。そのうちに領民達も義央の心情を理解するようになっていった。いつしか彼は、その連れている馬の名を取って『赤馬様』と呼ばれるようになった。 引用ここまで ー 32ページ
  • アサドリさんのまとめ

    主に時代物・歴史物を中心とした巻。

    ●「吉良上野介」
    上記「吉良上野の立場」の超圧縮版(プロトタイプ?)ともいえる掌編ですが、意は充分に尽くされています。吉良上野介悪役説への疑問は、作者にとって気になるテーマだったのかもしれません。

    『菊池寛全集 (第17巻)』より引用

    • 引用ここから わしは、何んのために殺されねばならぬのか、一向判らない。いまこゝでわしが殺されてしまつたら、わしは末代までも極悪人になつてしまふだらう。わしの云ひ分やわしの立場は、敵討と云ふ大鳴物入りの道徳のためにふみにじられてしまふのだ。さう思へば、どうあつても、わしは殺されてはならないのだ。わしは決して死なないぞ! 引用ここまで ー 595ページ
  • アサドリさんのまとめ

    同じ著者の長編『忠臣蔵』と表裏一対を為す長編。一度赤穂側から描いた事件を、こんどは吉良側から見ています。
    吉良上野介は少々うかつで短気で気位が高く、そりゃ反感も買うよな……というキャラクターですが、彼なりの言い分・立場はちゃんと描かれています。
    何よりも大きなメインは、幕閣・柳沢吉保、米沢藩家老・色部又四郎、そして赤穂浪士筆頭・大石内蔵助の三つ巴の頭脳戦。
    刃傷事件を引き金に吉良と赤穂、さらに背後の米沢藩と芸洲広島藩の一挙取り潰しを図る柳沢。その意図をことごとく察し、吉良を犠牲にしてでも米沢・上杉家を護ろうとする色部。その二人の意図を軽々と手玉に取るように、討入り計画を進めてゆく内蔵助。
    そして、この三者に翻弄され、右往左往しながらその日に備える吉良家の面々。
    必然、討入り当夜は、それまで全員が溜めに溜めた策略・エネルギーが全て噴出した格好で、凄惨・白熱をきわめます。
    倒れた者のみならず、生き残った関係者全員に大きな傷を残さざるを得なかった事件の、最後の部分まで描ききった、冷徹な大作です。

    『吉良忠臣蔵 (下) (角川文庫)』より引用

    • 引用ここから 「この穴はなにか」
       検使が問うた。
      「大殿をご避難させまいらすために拙者どもが穿ちましてございます」
       左右田孫兵衛が正直に答えた。
      「それは結構、お手前方が用いられるためではござらなんだか」
       検使は皮肉な口調で揶揄した。なんと言われようと現場に居合わせなかった者にはわかってもらえない。孫兵衛は一子源八郎を失った悲しみに耐えて検使を案内しているのである。彼らに、我が子が膝の上で死んでいくのを見守りながら為す所のなかった父親の悲しみはわからない。 引用ここまで ー 238ページ
  • アサドリさんのまとめ

    上野介視点というわけではありませんが、みんな大好き英雄譚「忠臣蔵」を丸ごと笑いのめすパロディ長編。
    とはいえ決してギャグ本ではなく、ちょっと視点を斜めにずらして元禄事件の全容を追っています。吉良上野介、大石内蔵助、柳沢吉保、色部又四郎、みんなそれぞれ大変ね……と読後しみじみ考えてしまう一編。

    『裏表忠臣蔵 (文春文庫)』より引用

    • 引用ここから ――(中略)……ただ、無垢とか無邪気というのは、裏返せば、無警戒ということですから……。
       義央は沈黙していた。
       ――はっきり申せば、あなたは才能があり過ぎるのです。才能があり過ぎて、孤独なのではないか、と私はひそかに思っていました。なぜなら、世の中には、才能のない人間が圧倒的に多いからです。当然のことながら、彼らは才能のあり過ぎる人間を嫉妬、憎悪して、自分たちの低さにまで引きずりおろすどころか、土の中に埋めてしまいたいと思っています。 引用ここまで ー 48ページ
  • アサドリさんのまとめ

    「吉良上野介中心」というよりは、「吉良上野介を悪役にしないままの忠臣蔵」という趣の長編です。

    『吉良上野介―討たれた男の真実 (PHP文庫)』より引用

    • 引用ここから 「見苦しいことは、しとうないのだ」
       ふっと、声を落として上野介が言った。
      「命は、もはや惜しうはない。それよりも、この歳になって、命を惜しがり、慌てふためくことこそ、恥ずかしい」
       上野介は、そこまで言って、ふと耳をそば立てた。枝に降り積もった雪が、庭で微かな音を立てて落ちていた。
      「雪じゃ。雪の音に脅えるも一生。雪に風雅を見るも一生。儂の残りの生涯、風雅で終りたい」 引用ここまで ー 291ページ
  • アサドリさんのまとめ

    変り種、現代モノの推理小説です。
    劇作家・道家和彦は、忠臣蔵をモチーフにした台本の依頼を受けた。実際の元禄赤穂事件と虚構の「忠臣蔵」の関係性を探っていくうちに、和彦はそもそもの「仮名手本忠臣蔵」に秘められた大きな意図に行き当たる……。
    吉良上野介の復権を果たすのみならず、従来あたりまえと思われてきた「忠臣蔵の虚構」を丸ごと引っぺがす一本。
    推理小説という形式が存分に生かされ、資料が豊富で構成も論理的、なおかつ流れがわかりやすい、なかなか読んでて楽しい「解説書」です。
    サスペンス要素がちょこっとオマケされてるのと、女性陣のセリフ回しが大時代的なのはご愛嬌。

    『忠臣蔵 元禄十五年の反逆 (新潮文庫)』より引用

    • 引用ここから 「この結果、まず一つ確実に言えることがある。それは、吉良上野介は巷間言われるような悪人ではなかったということだろうね」
      「どうして、そう断言できるの?」
       加奈はたずねた。
      「高師直が実は吉良ではなく綱吉だからさ。『仮名手本忠臣蔵』において、判官は浅野で大星は大石、まあ実際とはかなり違う面もあるが、これは対応関係にある。しかし、師直は吉良にみせかけてあるだけで、実際は綱吉なんだ。あの師直の悪業というのは実際は綱吉の悪業だ。(略)」 引用ここまで ー 304ページ
  • 周囲の人物を主人公にした物語

  • アサドリさんのまとめ

    題名通り、吉良上野介の妻・富子から見た吉良家の運命が、生家・上杉家と密接に絡んでつづられます。作者は富子の実家・上杉家を藩主に頂く米沢出身で、そのことも意義深い作品。
    作者は別ですが、上述の『吉良の言い分』とセットで読むとちょうど裏表一体の時系列でこの夫婦を追えます。

    『義にあらず―吉良上野介の妻 (幻冬舎時代小説文庫)』より引用

    • 引用ここから 「ありがとう存じます。道有殿がいてくださったおかげで、亡き大殿も浮かばれましょう。時の勢いというのでしょうか、得体の知れない力におし流されていくのがそら恐ろしゅうございます。大殿を討ち取った赤穂の浪人どもも、それにのみこまれたあわれな犠牲者かもしれませぬ。大石内蔵助はべつにしても、討入りに参加した浪士の多くが下級家臣であったというではありませぬか。主君の恩義をそれほど受けたとも思えない者たちが、なぜ死ぬ必要があったのでしょう」 引用ここまで ー 289ページ

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