ブクログ引用集
それを与えてくれたのは、名も知らず会ったこともない部屋の先輩だった。男か女かすらもわからない。その人のおかげできっと私は、今日までゴム底の靴を履いて生きてゆくことができたのだ。そして、そのたった一枚のゴム底が、私をあの籠の中から生還させようとしてくれている。
もう怖くはない。
窓の外を眺めながら、私は考える。
何も恐れることはない。
あの籠の中から私を救い出すものは、白い粉による化学反応ではなくて、知らないうちに自分を取り囲んでいる人間の優しさなのだ。(「ソウルケージ」より)![]()
-出典:孤独か、それに等しいもの (角川文庫), 218ページ より






