人気のレビュー

ブクログで話題になっているレビューです。長文のレビュー、熱い感想を読んで好みの本に出会いましょう!

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ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法

ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法

pha 2012年8月3日 Amazon.co.jpで見る Amazon.co.jp

ニートのこれからとか、読みごたえがあって、共感出来るところがあるなぁ。「普通に生きてる」つもりの人も、色々あることを、こんな感じで見直したり感じ直せると、新鮮では!

魔道師の月

魔道師の月

乾石智子 2012年4月21日 Amazon.co.jpで見る Amazon.co.jp

どうしても1作目と比べてしまうので、インパクトがないぶん、アドバンテージはあちらにあるのは致し方なし。
けれど、結末を早く知りたいとページを繰る手をとめられなくなってしまうので、面白さは変わらずです。
なんとなく意味がわからないところもあるけれど、2度3度と読むと、理解度が深まるかな。
今作も表紙が美しい。単行本でそろえたいシリーズであることに変わりはない。

キアルス(同一人物)が出てくるので、連作といえなくもないけれど、これはこれで独立した世界、ここから読んでも齟齬はないはずです。

次の太陽の石も読むのが楽しみ!さっそく図書館に予約しました。

魔道師の月

魔道師の月

乾石智子 2012年4月21日 Amazon.co.jpで見る Amazon.co.jp

夜の写本師に続く2冊目。
読んだ後、その壮大な物語の広がりにぼーっとし、仕事が落ち着いたら、この感動を伝えるべくすっごいレビューを書こう…!と思ってしばらく放置していたところ、レビューどころか、だんだんストーリーを忘れてきた私。
だめだめすぎます。

夜の写本師に登場したキアルスが、今回の主人公。
守ると決めたシルヴァインを守れなかったキアルスは、失意のうちに、世界に一冊しかない大切な書物を燃やしてしまう。
キアルスは、書物を、そこに書かれていた歌を取り戻すため、時空を超えて長い旅に出る。そこには400年もの昔、「暗樹」と闘った青年テイバドールの人生があった。

そして、もうひとりの主人公、コンスル帝国の皇帝のお気に入り魔導師、レイサイダー。彼は、皇帝に献上された幸運のお守りだという「暗樹」に、他の者が感じない禍々しい闇を感じ取り、さらに恐ろしい囁きを聞いて、恐怖から帝国を逃げ出す。
「暗樹」の悪意に蝕まれつつあるコンスル帝国。ふたりの魔道師は、ついに「暗樹」と対峙する――。

今も残る物語のイメージは、闇と煌めき。苦悩と希望。
前巻では生まれ変わり、老獪な指南役としてカリュドゥを導いたキアルスの、失意の「その後」、そして時代を遡ったキアルスの前世が描かれていた。
この物語の縦横無尽さが何より魅力。歴史は繰り返し、人はまた生まれる。

世界観を同じくしながら、時空を自在に行き来する作者の筆力には脱帽。
今回は、地図もついていて、よりこの世界を空想することができる。
この世界は、どこまでの広がりを見せてくれるのだろう。とても楽しみ。

魔道師の月

魔道師の月

乾石智子 2012年4月21日 Amazon.co.jpで見る Amazon.co.jp

前作が面白かったので手に取りました。
今回も入れ子構造というか、別の誰かの人生を体験するパートがあって、そこのボリュームが結構ありました。
影の主人公はテイバドールかなと思ったり。
テイバドール編のラストは少し涙ぐんでしまいました。

次作は「太陽の石」だからレイサンダーが主役かな?
彼の行く末も気になるしぜひ読みたいです。

文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)

文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)

京極夏彦 2001年9月6日 Amazon.co.jpで見る Amazon.co.jp

前半を読むのに1ヶ月かかり、残りの後半をたった1晩で読んでしまった!
前半の複雑な人間関係を理解するのにめっちゃ時間がかかり、理解してしまうと、あとはスピード感たっぷりで京極堂の解決待ちです。

プロットも相変わらず冴えていて、真犯人も「そうきたか!」という感じ。
そして、あえていくつかの謎は残して、いつか解決される日がくるかも?
という期待もありました。

この闇と光 (角川文庫)

この闇と光 (角川文庫)

服部まゆみ 2014年11月21日 Amazon.co.jpで見る Amazon.co.jp

どんでん返しのネタは途中で分かってしまったが、それでもとても楽しめ、考えさせられる作品だった。まだ自己が充分に形成されていない時に誘拐され、美しいものばかりを与えられて育ったが故の、外界の醜さへの失望。レイアだった方が幸せなのか、怜である方が幸せなのか。押し付けられる"幸せ""普通"ばかりが最良とは限らない(ましてあのような低俗な両親であればなおさらだ)。とても歯がゆく、胸が締め付けられるが、ミステリ読みの方以外にもぜひ読んでもらいたい、素晴らしい本だった。

塩の街 (角川文庫)

塩の街 (角川文庫)

有川浩 2010年1月23日 Amazon.co.jpで見る Amazon.co.jp

有川浩さんのデビュー作。
夢中で読んだ。

空から飛来した塩の巨大な結晶。
それが来てから人は塩の柱になって死んでいく。

無秩序なゴーストタウンになった東京で
身寄りを亡くした高校生、真奈と自衛官の秋庭が
ともに暮らしていた。

恋。

ただそのひとつに命を賭けて、二人は生き残ろうと
するのだが…。

というお話。

で…もう。読んでいて胸が痛くて。
限界値のある世界でないと、何故人は素直に
なれないのか。

私の愛している人が、塩の柱になると
言われたら。どんなに貶められても
どんなに困難でも、そのひとといる。

きっと相手は私と同じには、してくれないと
解っていても。きっと私は。

だからこのお話は…。

ほんとうの最愛だからこそ、成り立ったお話。

素晴らしい恋物語だけど、同時にすごく優れた
パニック小説、サバイバルSFでもあって。

入江という秋庭の友人が、悪辣だけど
すごく良かった。塩害という事態をどうする?

という事や、起きた事態に対して架空の中での
リアリティをしっかり持たせてくれたので。

明日も知れない中で、どの人物も
ああ、こういうことあるなと思わせるのがいいし
やはり組織の中での作戦遂行というものを
この人が書くとうまい。

有川浩はこうじゃなきゃ!って思う作品だった。

ちなみに、電撃文庫や角川の単行本より
角川文庫をお読みになるのが、今からなら
いいと思う。

後日譚などもちゃんと収めてあるし
これが完成版のよう。

冷たい密室と博士たち (講談社ノベルス)

冷たい密室と博士たち (講談社ノベルス)

森博嗣 1996年7月1日 Amazon.co.jpで見る Amazon.co.jp

2017/11/21 23:00 読了。
S&Mシリーズ2作目。
あ、ドラマで観た!と思いつつもFに引き続き結末は全く覚えてなかった。

王道ミステリーとか本格ミステリーって感想が多いけど、マジで?
一通りラストまで読んで答えがちゃんと分かった状態で読み返したけど、トリックが全然頭の中で描けなかった。
読み始めてドラマでも実験室のシーンとか思い出したからイメージしやすいと思ったのに。
最後の謎解きの部分に至っては、
「矛盾するような仮説はいいから、結論教えてくれよー!」
もはや、刑事さんと同じレベル。
Fの方が話は非現実的だけど、頭でイメージ出来たんだけどなー。(もちろん自力で謎は解けないが。)


いやいい。私は謎が解きたくてミステリーを読んでいるわけではなく、探偵が謎を解いていく様が読みたいのだから。

「考えなくていい小説」
なるほど、確かに私がミステリーを好む理由はコレだ。

▪️気に入った一節
「責任と責任感の違いがわかるかい?」
「押しつけられたものか、そうではないかの違いだ。」

この世界の片隅に [DVD]

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片渕須直 映画 2017年9月15日 Amazon.co.jpで見る Amazon.co.jp

久しぶりに「観てよかった」と思えた映画でした。
大事だと思える人がいることは本当に尊いことだな、大事な人が生きているということが当たり前になってはいけないな、と思いました。時代が違えど、大切なものって変わりないと思います。

ルパンの消息 (光文社文庫)

ルパンの消息 (光文社文庫)

横山秀夫 2009年4月9日 Amazon.co.jpで見る Amazon.co.jp

久々の星4つ。
完璧なミステリーであると同時に切ないヒューマンストーリー。
こんなに読後感のスッキリするミステリーは久しぶり。無駄な登場人物はなく、言い換えればすべてが謎の解明に関わっている。あらゆる伏線が重要なので、これから読む方は気が抜けませんよ(笑)
私はたまーにミステリーを読むのは好きなんだけど謎を解くのはカラキシなので、いつも読後はモヤモヤ感でいっぱい。(まあ私の推理力不足が悪いのだがw)その点、本作は見事にすべての謎をスッキリ解明してくれた。
そしてまた動機の切ないこと。取り調べる側の刑事たちも人間味あふれる。そんなに詳しく描写されている訳ではないのになぜか一人ひとりの背景が思い浮かぶ。
高校を舞台にした時効直前の女教師殺害事件に、これまた昔の時効直前の三億円事件が絡んでくる。昭和ノスタルジーも味わうことのできた逸品。クライマックスの後にもう一度やって来るクライマックス。おススメ。
2017/11

震える牛 (小学館文庫)

震える牛 (小学館文庫)

相場英雄 2013年5月13日 Amazon.co.jpで見る Amazon.co.jp

秀逸。ビターさが良い。

ジャッカルの日 [DVD]

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フレッド・ジンネマン 映画 2003年6月27日 Amazon.co.jpで見る Amazon.co.jp

1973年、ユニバーサル映画。監督はフレッド・ジンネマンで、原作はフレデリック・フォーサイス。
主演は殺し屋ジャッカル役のエドワード・フォックス、そして、それを阻止しようとするルベル警視役のミシェル・ロンズデール。
その他の共演としては、マダム・モンペリエ役にデルフィーヌ・セイリグ、女スパイ役にオルガ・ジョルジュ=ピコ、銃職人役にシリル・キューザックなど。『修道士カドフェル』のデレク・ジャコビも登場しています。

1960年代フランス。ド・ゴール大統領がアルジェリア独立を承認したことに不満を持つ軍人たちが結成した秘密組織OASは、ド・ゴール大統領暗殺を試みるが失敗する。
OASの幹部は処刑され組織は弱体化するが、組織は起死回生の手段として外部の殺し屋によるド・ゴール暗殺を画策する。選ばれたのはコードネーム「ジャッカル」。「ジャッカル」は暗殺計画の準備に着手する。
だが、計画を察知したフランス内務省は腕利きのルベル警視に暗殺阻止を命じ、ここに息詰まる熾烈な攻防が始まった・・・。

サスペンス・スリラーです。失敗さえしなければ、もろ『ゴルゴ13』の世界ですね。
というか、そのものなんですけど・・・。(^_^;
どちらか真似、もとい参考にしてねー!?(笑)
なかなかサスペンスフルな緊張感が続き、足早に展開していくので、観ていて飽きがこず一気に観終わりました。
狙撃者ジャッカルの周到な準備ぶりを描くのと、それに対応させる形で、これを阻止しようとする警視ルベルの懸命な捜査ぶりが描かれていて、追い付こうとする警視とこれを引き離し計画を達成しようとするジャッカルの、追いつ追われつの状況の変化がハラハラドキドキで良かったです。

ジャッカル役のエドワード・フォックスは私の好きな俳優さんなんですよね~。(^o^)
本作が出世作なんですよね。
若く見えながらも殺し屋としてのスマートさと手際の良さ、非情さをとてもよく演じていて、プロの殺し屋の風格は満点でした。やっぱりゴルゴ、真似してねー?(笑)
仕事の前に女を抱き、そして場合によっては利用するというところも一緒ですね。さらに女の方の対応も。(笑)
ただ演出として、こうまで軽く人は死ぬものなの!?というくらいにリアリティがあまりありませんで、これは監督の方針だったもかなあ・・・。
対するルベル警視役のミシェル・ロンズデールは垂れ目なせいかあまりぱっとしない印象があるのですが(笑)、頭が切れるというよりは、がむしゃらに仕事をして結果を出すというタイプで安心感がありましたね。
いまひとつトロそうなのに結果を出すということでちょっと違和感もありましたが、『007 ムーンレイカー』でもあまり悪役らしくない顔で悪事を働いていたので(笑)、こういうキャラなんですね。
あと、出演していた女優さんのお二人ともがきれいだったのと、脱いでいたのでこれも良かったです!(笑)

ラストもドキドキの展開で、まあ結末は大統領が大統領だけに予想は付くのですが(笑)、それを感じさせないほど面白かったです。
ただ、暗殺しようとする側と阻止する側の両方の視点で描かれていたため、どっちもの応援ができず、あれ、自分はどうなって欲しいのだっけ?と視聴する側の立ち位置がぼやけてしまったのが惜しいところでしたかね。
『ゴルゴ13』愛読者なら是非ご鑑賞を!(^o^)

ヤコブと七人の悪党

ヤコブと七人の悪党

マドンナ 2004年10月 Amazon.co.jpで見る Amazon.co.jp

マドンナが6冊もの絵本を世に送り出していることを、つい最近知った。これは、その3冊目。
しかも収益のすべてを教育福祉機関に寄付してると言う。
「我が校のマドンナ」じゃなく、かつて「ライク・ア・ヴァージン」で華々しくデビューした、あの歌手のマドンナのこと。
ぷっくりした身体にふわふわのスカート、ポニーテールで歌って踊ってた姿があまりに可愛くて一気にファンになった。
その後過激な言動ばかりが取り上げられることが多くなったが、歌のクオリティの高さは変わらず。
2000年に英国の映画監督ガイ・リッチーと結婚し、この監督の作品も好きだったので、親戚の慶事のように嬉しかった(笑)のを思い出す。

この本は2004年の出版だからマドンナ・リッチーだった頃のもの。
息子さんも生まれて順風万端だったのか、温かく強いメッセージがしっかりと伝わってくる。
美しい彩色のクラシックな絵は、数々の賞を受賞しているガナディ・スピリンのもの。
ちなみに日本語訳は角田光代さん。リズムのある美しい翻訳になっている。

靴職人・ヤコブの息子が重い病に伏している。
救いを求めて、天使と話が出来るという老賢人を訪ねると、賢人が集めたのはよりによって七人の悪党だった・・

七人の医者でもなく賢者でもなく、悪党だったというのが興味深いところ。
これは、18世紀のウクライナに実在したユダヤ教の偉大な師バール・シェム・トブの話を元に書かれたものだという。
「天国」という概念は日本人には今ひとつで、まして「天国の門」「天国の鍵」となると多少説明が必要になってくる。
それでもこの本の素晴らしさはそのメッセージ性にある。
どんな人でも天国の門を開くことが出来、自分はつまらない人間だと思っている人も例外ではないという。
なぜなら、自分のわがままな考えをぐっと我慢すれば、信じられないような奇跡をこの世で起こすことが出来るから。
幸せになりたかったら、自分勝手だったり間違っていたりするところを直さなくてはいけない。
悪い部分は良いものに変えていかなくては。
・・大人が読んでも、ここで自分自身に思わず問いかけてしまう。
表現こそ違え、仏教の教えにも通じるところがあるような。

テキスト部分が案外多く、欧米社会の歴史観もあり、読み聞かせ向けではないかもしれない。
ただ、クリスマスの時期にお子たちに読むには良いかも。
親の、子を守る一心に国境はないのね。マドンナの母心が熱い。

枕草子のたくらみ 「春はあけぼの」に秘められた思い (朝日選書)

枕草子のたくらみ 「春はあけぼの」に秘められた思い (朝日選書)

山本淳子 2017年4月10日 Amazon.co.jpで見る Amazon.co.jp

日は入日 入り果てぬる山の端に 光 なほとまりて 赤う見ゆるに 淡黄ばみたる雲の たなびきわたりたる いとあはれなり

枕草子の後半に書き連ねてある「日、月、星、雲」の段。上の部分はその中の「日」の段にあたる。
初段の「春はあけぼの」にも通じるお題ありきの構成をとる。自然への洞察力に長け軽妙で小気味いい清少納言らしい文章だ。
もちろんこれだけを読んでも十分に枕草子の世界を堪能できる。
ただ、この背景にあるものを知ったらどうだろう。また一段と作品世界が広がることは間違いない。

この本によると、おそらく「春はあけぼの」は定子の生前に書かれたもの。そして上に上げた段は定子の没後に書かれたものとある。
平安という雅の中にありながらも、時代の波に翻弄された悲劇の中宮、定子。
そんな彼女の心を慰めるため、そして彼女の魂を鎮めるために書かれたのがほかでもない枕草子だったのである。

いったんこの作品がある種の挽歌だったと知ると、枕草子における清少納言のきらびやかな貴族社会への執着に合点が行った。
もともと山吹の花のくだりが好きで、ここを読むと定子の清少納言への愛情の深さに胸がいっぱいになってしまうのだが、この本を読んだ今はどのくだりを呼んでも清少納言の定子への思いがひしひしと伝わってきて切ない。

高校の授業で出会った枕草子。
知っているようで全然知らなかったその世界。
一筋縄じゃいかない。
だからこそ面白い。
平安の時代に思いを馳せながら、読み耽るのもいとあわれなり(笑)

尊敬するブク友さんから紹介された素敵な本です。
読んでよかった。
ありがとう~♪
久々のレビューでした!

中世の法秩序と都市社会

中世の法秩序と都市社会

高谷知佳 2016年2月25日 Amazon.co.jpで見る Amazon.co.jp

日本中世都市史におけるかつての「自由都市論」を乗り越え、また網野善彦が注目した都市の「無縁・公界・楽」の視点を止揚した上で、社会史的な観点を踏まえながら日本中世における権力側と都市の関係について論じた意欲的な論文集である。
日本中世の都市においてはその内部で様々な利権が錯綜しており、統一的な法秩序は存在せず、また都市への賦課はそれぞれ権力を持つアクターが思い思いに行っていたということで、都市は収奪の対象でしかなく、都市を繁栄させる・存続させるといった概念が無かったとのことである。
こうした都市と権力との関係のなかで、何か前向きな理論構築が可能なものなのかと本書の序盤では不安な感じもあったのだが、視点が面白く緻密で斬れのある論理構成になっていてとても面白かった。

第一部は室町時代の中世都市・奈良を事例に、都市と室町幕府との関係を論じている。
様々なアクターの利権が錯綜することにより一律な法秩序下にない都市において、おのおのはそれぞれに国家的な名目による賦課を頻繁に行っており、またアクター同士の紛争も絶えることがなかったという。それを解決するために都市のアクターは、「外部」の権力である室町幕府がかつて発給した文書を楯にその正当性に利用する。しかも著者によればそのかつての文書は今回の紛争事件とは全く関係のない論旨のものであり、論理のいいとこ取りをしたに過ぎないということである。
各アクターが思い思いに行った賦課の履歴を表にまとめ掲載されているが、これだけ賦課が多いと免除運動や逃亡の挙に出られても当然のことであり。実際のところ賦課する側とされる側の攻防が見て取れてとても面白かった。それからアクター同士の調停に使われた文書がどうにでも解釈できるものであったということで、「虎の威」を借りて上手く立ち回るアクター像が見えてきてこれもなかなか興味深い。
また、商業の発展に目を付けたアクターは最初は市を復興させることで利益追求を行おうとするものの、制限の大きい市の復興では利益拡充がのぞめないことが次第に明らかになったため、次に市の復興ではなく本来の座の領主と敵対する形でもう一方の座に加担するなどして商業紛争を勃発させたとし、紛争を起させることを目的にあるいは紛争により獲得した利益を追認するために、これまた論理的にそぐわない「先例」を持ち出して利益誘導を図ったということが論じられており、その経済戦争にかける躍動ぶりはとても興味深かった。
さらに、室町時代後期に頻発した徳政一揆と徳政令を取り上げ、治安と経済の両面から都市秩序の大きな脅威となるこの事象を、各アクターはどうリスクを避け、意思決定を行ったのかを論じている。京都で頻発された徳政令は奈良に波及してくることも多く、その防戦には各アクターが一体となってあたったが、奈良での徳政令は基本は検断権を握る官符衆徒棟梁が発したということで、これには学侶や六方といった各アクターの同意が必要であったということであるが、一方では裏で一揆との裏取引や金融機能不全への対応、金融業者からの賄賂、資金調達など様々な思惑から徳政令実施が調整されており、一面的でない都市内部の各々の思惑の錯綜度合いが面白かった。

第二部は室町時代の京都の支配と流通の関係として関所を取り上げ論じている。
そもそも関所とは国家的名目のもとに朝廷官司や寺社が物資調達を目的に設置したものであるが、商業と流通の発展に伴い、それぞれのアクターによる賦課と特定商人への特権付与が過剰なものとなり紛争の原因ともなったということである。室町幕府自体も利益を目的に関所を設置するようになるが、それらは都市・京都の発展自体を害するにいたる。また関所は土一揆の標的にもなったということで、結果、室町幕府は関所を治安維持を行う場に転じるにいたったとしている。そし... 続きを読む

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