ある日、渋谷の居酒屋で秦さんがこんな話を始めました。
「この間、古い女友だちから “シングルマザーになりました”って電話があってね。面白そうだから会いにいったら、相手の男は逃げ回ってるは、やっと勝ち取ったわずかな養育費は払ってくれないは、もう大変なんだって。それをまた、子どもを乗せたベビーカーを押しながら延々とグチるわけですよ。男の悪口と一緒に。赤ん坊とは言え、こんな話聞かせて大丈夫かな、なんてちょっと心配になっちゃって」
不謹慎ながら聞いている私は爆笑してしまいました。
「でもね」
秦さんは苦笑まじりに続けます。
「大変なのは間違いないんだけど、そんなこと言ってる彼女が、何だかちょっと楽しそうで、エネルギッシュで、恰好いいなって思っちゃったんですよ」
――――本書『ダーティ・ママ!』の主人公・丸岡高子は著者・秦建日子さんのこんな経験から生まれました。1歳の息子を育てるシングルマザーで、事件となればハイパーレッドのベビーカーをブッ飛ばして現場に駆けつける女刑事。このありえない設定の陰には、今の日本で懸命に働きながら子育てをしているたくさんのシングルマザーがいます。起こる事件もまた、不況、家庭崩壊、父子関係、といった身近でリアリティあふれるもの。そんな厳しい現実にパワフルに立ち向かう高子に勇気づけられながら、高子に振り回される相棒・葵に同情しながら、橋蔵の可愛らしさに目を細めながら、そして一癖も二癖もある登場人物たちのムチャクチャな会話に爆笑しながら、この『ダーティ・ママ!』を楽しんでいただければ幸いです。読後の爽快感は保証つき!「生きているのも悪くないな」なんて、少し元気になっていただけるのではないかと思います。
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シングルマザーで、子連れで、刑事ですが、何か? ダーティ・ママ!
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秦建日子(はたたけひこ)小説家・脚本家・演出家。1968年生まれ。90年早稲田大学卒業。97年に脱サラし、専業の作家活動に入る。 ●代表作品
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『ダーティ・ママ!』のあらすじ
主役はシングルマザー、丸岡高子(通称・マルコー)43歳。悪いヤツらはぶん殴り、情報漏らしてワイロを受け取り、同僚たちの弱みを握ってあやつり放題。さっさと事件を片付けて、裁判に勝って元・夫から養育費をふんだくらなくちゃ。そう、シングルマザーには時間も金もないのだ!
そこに交通課から配属されたのが、長嶋葵(24 歳)。やっと念願の刑事と思いきや、葵の役目は高子の愛息・橋蔵(1歳)のベビーシッター。ムチャクチャな捜査に振り回されて恋人との仲は崩壊寸前。オムツ換えにミルク作り絵本読み……これが憧れの刑事生活? それでも、懸命に子育てをしながら事件解決に向けてまっしぐらに突き進む高子に引っ張られ、葵は少しずつ高子の生き方を理解してゆく。
育児のグチをぶちまけながら、ハイパーレッドのベビーカーをぶっ飛ばし、かつてない凸凹刑事コンビが駆け抜ける! ベストセラー《刑事 雪平夏見》シリーズに続く、爽快感120%の新シリーズ!