映画「わたし出すわ」公開記念 森田芳光インタビュー

森田芳光作品に影響を与えた本

僕にとっての「哲学」ー「メディア論」「世界」マーシャル マクルーハン

まず、僕が影響を受けた本は、マクルーハンの作品です。
マクルーハンはメディアがどう人間に影響を及ぼすのか?ということを研究していた人です。 「世界」や「メディア論」が有名ですね。彼の本によって、テレビとかラジオとかいろんなメディアを、人間がどう用いて、そしてそのメディアによって、どう変わるかということを学びました。
僕のメディアへの興味にとても影響を与えた人です。
僕にとっては、ソクラテスやプラトンの話と同じで、マクルーハンのメディア論が哲学といってもいいかもしれません。

「(ハル)」という映画は、まだインターネットが流行る前の「パソコン通信」を舞台にしているんですが、これもマクルーハンに出会っていたから、すぐに「ああ、これは新しいメディアになるな」と思うことができたんだと思います。
最新作の「わたし出すわ」も、主人公がインターネットを通したビジネスで大金を手にするという設定になっていますし、そういう意味では今もインターネットに対する関心は強いですね。

メディアで変わる恋の形「(ハル)」
出演:深津絵里、内野聖陽(1996年公開)

「(ハル)」森田芳光

森田監督オリジナル作品。インターネットが普及するずっと前に、「パソコン通信」を題材にしたところに、 森田監督のネットへの関心の高さがうかがえる。 実力派俳優の深津絵里内野聖陽を起用し、日本アカデミー賞をはじめ様々な賞を獲得している。

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人の見方が変わったね。ー「マンウォッチング」デズモンド・モリス

マンウォッチングという本も影響を与えてくれた一冊です。
人が人と話すとか、どういう風に人を愛するのか、どうやって嘘をつくのか、などの「人の行動」には科学的な根拠がある、という本です。

映画を作るときに直接影響を受けた、ということでもないんですが、 ちょっとおかしいかもしれないですが、普通に「人間」を見る見方が変わりましたね。これも高校生や大学生の時に読みました。

嫉妬・憎しみ・愛情「阿修羅のごとく」
出演:大竹しのぶ 深津絵里(2003年公開)

「阿修羅のごとく」森田芳光

向田邦子原作の小説を映画化。妻子ある男を愛人に持つ長女(大竹しのぶ)、夫の浮気に悩む次女(黒木瞳)、オールドミスで潔癖性の三女(深津絵里)、 売れないボクサーと同棲中の四女(深田恭子)。この4人の女性を阿修羅にたとえ、まさに、「人間」をリアルに辛辣に、コミカルに描いた傑作。

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森田芳光作品に影響を与えた映画

なかなか、これを超えるアクションは出てこない ー「激突!」スティーブン・スピルバーグ

監督になる前に衝撃を受けた作品は、スピルバークの「激突!」です。 なぜだかわからないけど、後ろから追ってくるタンクローリーから乗用車で逃げ回らなきゃならなくなるという話です。

これが出た時、スピルバークはまだ今ほど有名な監督ではなかったんですが、見たとたんに「すごい」って思いました。 あれだけシンプルで、予算もそんなになかったはずなのに、まさに人間のアクションの「原点」が描かれているんです。 今でも「激突!」を超えるアクション映画はなかなかないんじゃないかと思うんですよね。
ぜひ映画に関係したいと思っている人には見てほしい作品です。

展開が読めない面白さ「模倣犯」
出演:中居正広 藤井隆(2002年公開)

模倣犯

宮部みゆきによる同名長編小説を映画化。原作の人気の高さと、中居正広主演ということで話題になった。 原作ファンからの賛否はあったものの、映画としての作品への評価も高く、第45回ブルーリボン賞助演男優賞などを獲得。 観客動員数100万人以上を記録する大ヒット作となった。

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カメラワーク、照明、すべてのスキルが素晴らしい。 ー 「暗殺の森」ベルナルド・ベルトルッチ

あまり有名ではないところだと、ベルナルド・ベルトルッチの「暗殺の森」には影響を受けたといえると思います。
ラストタンゴ・イン・パリ」や「ラストエンペラー」で有名な監督です。

この作品は、サスペンスというかテロリストの話なんですけど、とてもモダンなタッチで、 音楽やカメラワーク、そういう編集のすべてがリズミカルでおしゃれなんですよね。 たとえサスペンスなものでも、ただ狂気だったり、ただ怖いんじゃなくて、テンポでみせられるんだなと。
こういうおしゃれさっていうのは、監督をやる上で身につけないといけないんだろうなと思いました。
そして、編集やスタッフワークの大切さも学びました。
映画は照明や音楽などいろいろなスペシャリストが集まってできていますからね。

確かな技術、豊かな表現力「椿三十郎」
出演:織田裕二 豊川悦司(2007年公開)

椿三十郎

黒沢明の代表作のリメイク。 黒沢版で最も有名なクライマックスの決闘シーンは、細かいカット割とスローモーションを使い、オリジナルに負けない印象的なシーンになっている。
織田裕二の久しぶりの時代劇作品としても話題になった。

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森田芳光作品に影響を与えた音楽

彼の影響で僕も同じような作品は撮らない ー 「ビッチェズ・ブリュー+1」マイルス・デイビス

音楽はなんといってもマイルス・デイビスですね。 僕は、好きな映画監督は誰かと聞かれたときに、マイルス・デイビスと答えたことがあるくらい彼を尊敬しています。 作品ももちろんそうですが、何より「生き方」に影響されましたね。
僕はたくさんの映画を作りましたが、同じような映画って撮らないんですね。 それは全く違う作品を次々に生み出すマイルスの影響なんです。

その彼の作品の中でも一番すごいのは、「ビッチェズ・ブリュー」だと思います。
マイルスの後期の作品なんですけど、いろんな新しいエッセンスだとか、 マイルスのこれまでの歴史なんかを超えて、それこそすごい映画を見ているような一大叙事詩のようですよ。

今なお新鮮な日本映画「家族ゲーム」
出演:松田優作 伊丹十三(1983年公開)

家族ゲーム

高校受験を控えた息子に、ちょっと風変わりな青年が家庭教師に来る事で起こる騒動をコミカルに描く。 登場人物の動きに、各々が抱えるストレスや身勝手さを描き、ブルーリボン賞(83年)で監督賞:を受賞した。
25年以上前の作品とは思えない程斬新な映像と展開。先日のテレビトーク番組で、松本人志も素晴らしい作品と評している。

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同じ世代に生きられたことが奇跡 ー 「ハード・デイズ・ナイト」ビートルズ

もうひとつお気に入りの音楽をあげろと言われたら、ビートルズですかね。 映画もよかったけど、「ハード・デイズ・ナイト」が一番好きです。
あの誰にでも歌える、誰にでも覚えられる曲を次々にヒットさせたすごさは、素晴らしいですよね。 彼らの「ポピュラー」なセンスは大変に学ぶところがあります。 しかも僕なんか中学からビートルズ世代ですから、彼らがデビューした時から知っていて。 ビートルズの進化とともに生きてきたから、それはすごく誇れます。運がいいと思いますよ。

誰もが好きになる「間宮兄弟」
出演:佐々木蔵之介 塚地武雅(2006年公開)

間宮兄弟

江国香織原作。佐々木蔵之介W主演で弟役としてで出演するのは、今では個性派俳優として大活躍のドランクドラゴン塚地武雅。 ヒロインに常盤貴子と沢尻エリカ、当時まだあまり知名度のなかった北川景子も出演し、好演している。

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森田芳光作品に影響を与えた漫画

息吹を感じた ー 伝説の漫画雑誌「ガロ」

伝説の漫画雑誌「ガロ」

漫画も好きなものはたくさんありますが、1つに絞れと言われるととても難しいですね。
強いて挙げるなら、作品ではないのですが、「ガロ」という雑誌には影響を受けましたね。 つげ義春さんや、蛭子能収さん、水木しげるさんといった今も伝説的な方もいらっしゃるんですが、 基本的に非常にマイナーで、でもとても衝撃的でした。

他の漫画はただ楽しいし、面白いんですが、ガロに出ている漫画は何か「息吹」のようなものを感じたんです。 映画で言う、独立系のインディペンデントの映画を見ている感じですよね。 毎回、次はどんな人が出てくるんだろうととても楽しみでした。
あのような雑誌に出会って創作の場をもらった作家は幸せだなと思ってましたね。
映画も昔はATG(日本アート・シアター・ギルド)のように、マイナーででも良質の映画を作らせてくれるところもありましたが、 今は漫画も映画もそういうものがなくて、切磋琢磨する場所がもっとあったらいいとは思います。

息吹を込めた「の・ようなもの」
出演:秋吉久美子 伊藤克信(1981年公開)

の・ようなもの

東京の下町を舞台に、落語家のタマゴとソープ嬢、女子高生の出会いを綴った青春コメディ。 色々なところに借金をして撮った作品という森田監督の記念すべき劇場映画監督デビュー作。
第3回ヨコハマ映画祭作品賞、新人監督賞を受賞。

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「(ハル)」以来13年ぶりのオリジナル作品森田監督の集大成「わたし出すわ」

この映画を見てインターネット上で語ってほしい

「わたし出すわ」は、インターネットをよく使う人に見てほしい映画です。 インターネットで見えない人たちと会話をするような社会だからこそ、 逆に、過去の友達だったり、旧友の言葉が新鮮に響いたりするんだと思っています。

「わたし出すわ」では、そういう面で、ある種の懐かしさ、アナログな感情を呼び起こし、 何かその人なりに考え、語りたくなると思います。
今回あえて、題名を具体的でストレートに、そしてシンプルに表現したのは、 この映画は見る人によって、まったく違う感想を持つ映画だと思ったからです。

「わたし出すわ」をみてたくさんの方がインターネットで語ってくれるとうれしいです。

あらすじ

「わたし出すわ」。突然帰郷した彼女の申し出に、つい受け取ってしまった大金ー

山吹摩耶(小雪)が突然、故郷に帰ってきた。東京でどう稼いだのか、彼女は莫大な財を築いている。 高校卒業以来何も変わっていない街で、久々に高校の同級生たちと再会する摩耶。 そして彼らの「夢」や「希望」の実現のために、次々に「わたし出すわ」と、自分のお金を差し出すのだった。

惜しげもなく大金を差し出す摩耶の申し出に、友人たちは戸惑いながらも、ついそのお金を受け取ってしまうのだが・・・。 はたして摩耶の資金の出所は?彼女の目的とはいったい?そして大金を受け取った友人たちの夢の行く末は?

ー 「わたし出すわ」のその先にそれぞれの未来が見えてくる。

DVD「わたし出すわ」

DVD「わたし出すわ」

  • 脚本・監督:森田芳光
  • 出演:小雪 黒谷友香 井坂俊哉 山中崇 小澤征悦 小池栄子 仲村トオル
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森田芳光監督 プロフィール

1950年1月25日生まれ。日本大学芸術学部放送学科卒業。
「の・ようなもの」(81)で劇場映画デビュー、第3回ヨコハマ映画祭作品賞、新人監督賞を受賞。 松田優作主演の「家族ゲーム」(83)で芸術選奨文部大臣賞新人賞、 第7回日本アカデミー賞優秀作品賞、優秀監督賞、その他数々の映画賞を受賞。 96年には「(ハル)」で第6回日本映画批評家大賞監督賞、第20回日本アカデミー賞優秀脚本賞、 ほか数々の賞を受賞した。97年には社会現象にもなった「失楽園」で第7回日本映画評価対象映像美賞を受賞。
本作「わたし出すわ」は「(ハル)」以降13年ぶりのオリジナル作品となる。

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