十九、二十 (新潮文庫 は 22-1)

著者 :
  • 新潮社 (1992年11月1日発売)
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本棚登録 : 849
感想 : 86
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二十歳――それは全財産を懐にして歩いているようなものだ

ほんとうに美味しいものは美味しいとしか云いようがないように、ただただ好いと思ったものに感想を加えるのは難しい。その位、とても気に入る本だった。川村湊による解説も含めて。
何も手元に残らないような後にあれは一体何だったのだと思える、あったかどうかすら疑わしくなってくるような出来事は私にも身に覚えがある。
この本を読むまで、十九、二十やそこらがそんなに貴重な年頃だという自覚もなければ、そんな時期(若いと云われる)はもうとっくに過ぎてしまったと思っていたけれど、なんと!私はまだその真っ只中、いや、ギリギリにいたのである。通りで、自分自身に確信めいた存在意義のようなものが無くてもどことなく太陽の気配を感じ、生きていけているわけだ、と思った。“何も無い故に何処へでも行ける”という事なのだ。
けども私はその全財産の使い方を誤っている、若しくは大事にしまい込み過ぎている。そろそろ太陽も真新しい光を放たなくなる頃になってくるかもしれないとか、ぼくの親父の歳になって何を思うのかとか、想像するだけで眠れなくなったりする。絶望の重みを計りにかけ破滅するような事はないように、人生をしっかりと背負い直さなければならない。二十、二十一の私は。

表紙のポケットに手を突っ込み萎れてしまったかのような少年の絵がいい。それでも一歩前に足を出しているところとか。話は14が名シーンだと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年6月10日
読了日 : 2010年5月27日
本棚登録日 : 2010年9月15日

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