多くの読者にとっては全く障害にならないと思うが、僕にとっては致命的な読みづらさのある作品。単に、作中で一部使用されている津軽弁が、弘前あたりで使われているものではなく、青森市のものだなぁと思わせるところがそうなのだが、おそらく、こう言っても「だから何?」という感じで伝わらないでしょうね。読みづらさは、千歳のキャラクターのとらえ方において、この言葉遣いがノイズとなるため。極端な話をすれば、舞妓さんが出てきたのに、言葉は河内弁だったみたいな感じですよ。
それはさておき、この本、文庫化するのになんでこの表紙にしたのかなというところ。単行本と同じであれば良かったと思うし、作中のどろどろした感じをカバーにまで反映しなくたって、とりあえずは、美少女イタコが謎解きをする萌えミスだと誤解させて買わせた方がいいでしょ。新潮文庫の担当者は何を考えてるんだと思うわけです。
あ、ちょっとばれました。そうです。別に萌えミスじゃありません。むしろ、ストレートに伝奇っぽいというか、出だしではさすがに怪異なんて存在しない風味の、いわば京極夏彦作品みたいなスタンスなのかな?と思わせますが、いやいや、やっぱりイタコはイタコでありましてね、やっぱり死者が舞台に上がってしまう。
時代も、戦前とはいえ昭和という、現代からみると、近代性と伝統価値との境目のような時期、そして、舞台の弘前もこれ以上ないほどのど田舎である津軽の中で、微妙なモダニズムを纏った街、そこに出身も身分も対照的な二人のヒロインというか、なんか、ホームズとワトソンみたいに二人組を配置というおもしろい構造をもったお話です。美男美女が多すぎというきらいはありますけどね、それは、お話ですからそのくらいでないとつまらんでしょう。
- 感想投稿日 : 2013年3月16日
- 読了日 : 2013年3月16日
- 本棚登録日 : 2013年3月11日
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