<ぼく>は来るべき核戦争に備えて、採石場跡地を核シェルターに作りあげ、この「方舟」の選ばれし乗組員を探していた。<ぼく>は偶然デパートの露店で見つけた「ユープケッチャ」という架空の虫が、これから始まらんとする閉鎖空間での完結した生活を象徴しているように感じる。虫の売主と露店のサクラの男女二人が「方舟」の乗組員となるが、「方舟」への侵入者の発見によって、<ぼく>が思い描いていた当初の計画は急激に狂っていく。老人から成る街の清掃隊「ほうき隊」と若者グループとの「方舟」を巡る抗争の最中、<ぼく>はあらゆるものを吸いこんでくれる「便器」に片足を吸いこまれ身動きが取れなくなった。「方舟」で生き残れる者はいったい誰なのか。
童貞のどうしようもない性に対する心情をよく書き表している。女の尻の描写の多さ。サクラの女、かわいい。
閉鎖空間での生活というテーマは、『砂の女』と共通するものがある。終わり方も似ているし。
女子中学生狩りに熱中する老人たちのグロテクスさといったらない。しかし、方舟、閉じた生態系というテーマを考えると、人類という種の保存のために女性の確保に関する話が入ってくることは避けられないだろう。方舟に残るサクラの女のそれからを想像すると気分が沈む。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2015年1月25日
- 読了日 : 2015年1月25日
- 本棚登録日 : 2014年10月5日
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