ツナグ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2012年8月27日発売)
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本棚登録 : 27171
感想 : 2288
5

「死者との再会」というテーマに当初は新鮮味を感じないなぁ…と思っていた。
が、読んでみて、登場人物らの生々しい感情の描写が予想以上にリアルで、死者と生者の仲介となる「ツナグ」という役割が実際に存在するんじゃないかと錯覚するほどだった。
一度だけの死者との再会を巡る、本書で描かれる依頼者4人それぞれの思い。会うことで気持ちが軽くなることもあれば、苦しみを深くさせることもある。中でも女子高生の友情を描いた章は印象深かった。ねじれた愛憎、この年齢特有の残酷さ。自分にも多少覚えがあるからこそ…若さが持て余す負の感情がじわりと怖く、そして悲しかった。
最終章、「ツナグ」を務める男子高生・歩美がメインとなり、それまでのストーリーで小出しにされてきた彼の過去の謎が少しずつ明らかになる。その鮮やかな二転三転には何度も驚かされた。
読み終えて、しばらく茫然自失となった。本多孝好氏が解説で述べたように、「自分ならだれと会うことを願うか」と考えてしまった。
確かに…本多氏の言う通り、その時点で辻村さんは読者にとって「使者」(ツナグ)になっているんだろうな。それが実感でき、今を生きるということの意味が、これまでよりも重く深く感じられたように思う。
初めて読む辻村作品長編がこの本でよかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本の作家
感想投稿日 : 2012年12月31日
読了日 : 2012年12月31日
本棚登録日 : 2012年12月30日

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コメント 3件

猫丸(nyancomaru)さんのコメント
2013/01/17

「しばらく茫然自失となった」
辻村深月には、いつも考えさせられます。
映画も観たのですが、淡々として良い出来でした。

メイプルマフィンさんのコメント
2013/01/18

nyancomaruさん:映画、観たいです。配役がピッタリだなと思いました。

猫丸(nyancomaru)さんのコメント
2013/01/28

「配役がピッタリだなと思いました。」
はい!
特に主人公歩美を演じた松坂桃李と樹木希林は、本当に素晴しかったです。

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