トコとミコ

著者 :
  • 文藝春秋 (2016年11月21日発売)
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本棚登録 : 121
感想 : 17
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伯爵令嬢の帰国子女、トコ(燈子)と家扶の娘、ミコ(美桜子)。激動の90年を壮大に描いた物語は華麗でありながら時に愛憎が滲み、まさに昼ドラ。壮麗な世界観に浸りたいときは間違いありません、山口先生。
戦争がきっかけで様々なものを失いかけるが、ピンチはチャンスとばかりにビジネスに繋げていくミコの才覚たるや、その賢さに舌を巻く。一方のトコはおっとりしているようで、実はぶれない強さを秘めている。
展開はとにかく目まぐるしく、ジェットコースターのよう。淡々と物語が進んでいくため、もう少しこの人を長く登場させて欲しかったかな、この場面を堪能したかったな…というところも若干ある。でも、戦中~戦後、昭和、平成と、激しく移り変わる時代のダイナミックなうねりを縦軸に、時代に翻弄されながらもそれぞれに生き方を模索するトコとミコの軌跡を横軸に紡がれる作品世界の壮大さは圧巻。
そして、何よりの魅力はディティールの細かい描写。今回も脳内ドラマ化可能なくらいうっとりする場面が多く、特に、ストーリーに長きに渡って登場する牛首紬(2人でお揃いで仕立てた着物が何度も姿を変えて現れる)、美しい描写が印象的だったイングリッシュ・ニードル・ポイント。節目節目で現れるたびドキドキします。あー、ホントに映像化してくれないだろうか。お金かかっちゃうかな…。
宇野亜喜良氏による装画もとても素敵です。本書の世界観をすごくうまく表していると思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本の作家
感想投稿日 : 2017年11月20日
読了日 : 2017年11月20日
本棚登録日 : 2017年11月11日

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