環状八号線沿いに住む、年齢も境遇も様々な女性達を描いた連作短編集。
環状=感情とは、うまいタイトルだなぁ!と。かつて関東には住んでいたものの、車に乗らない生活だったので、環八といってもピンとこない。荻窪、八幡山、千歳船橋、二子玉川、上野毛、田園調布。全て環八沿いとはいっても、電車だと乗り換えが必要。街の雰囲気もそれぞれ異なるから、鉄道路線沿いに比べて街の繋がりは薄いように感じる。そんな特徴を見事に作品に生かし、ヒロイン達のキャラ設定に反映させているのが面白いと思った。
生活苦にあえぐ貧乏な舞台女優、恋人のDVに苦しむフリーター、夫の不倫に悩むセレブ主婦、新婚ブルーの社員、美しく有能ながらも、「独り」が怖いキャリア女性、舞台俳優に恋したお嬢様…。それぞれがじりじりとした不安に苛まれる。このうまくいかない感じが何ともリアル。読んでいてひっかかる…ざらっとした感じは畑野作品特有だなと思う。作品によっては不快な方に転じることもあるけれど、今回はギリギリの意地悪さ。それぞれのラストの「えっ!?」という仕掛け。色々想像させられちゃうところがまた、ニクイね畑野さん。連作短編という形式を存分に生かし、様々な角度から彼女らの日々を垣間見ることが出来たのもよかった。
畑野作品を読むと、自分の心のブラックな部分に気付いてしまうときがある。まぁ、誰もがそんな面を持っているわけだしね。生きていく上では、そんなところもほどほどに肯定しながら目の前のことを受け入れていくことが必要なのかなと思えた。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
日本の作家
- 感想投稿日 : 2015年12月23日
- 読了日 : 2015年12月23日
- 本棚登録日 : 2015年12月18日
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