レビュー by Jakamitiさん
事実は小説よりも奇なり、ただその圧倒的な事実の前に茫然と屈するほかありません。
恩地元、敗れざる者の記録。
人間のエゴ、組織の不条理、理不尽の連続。こんなことが許されてよいのであろうか。
10年僻地をたらい回しにされた恩地。
一握りの仲間の援護と偶然とが勝ち取った“帰還令状”。
起きてしまった未曾有の悲劇。
忘れさられた遺族の苦悩。
深い病巣、腐敗が進む組織のなかでおいやられる良心。
それでも運命を受け入れ、逃げることなく受けて立つ人間の逞しさ。
恩地元に感服です。
この話の象徴が次の一節です。
『恩地の脳裡に、ニューヨークの動物園の「鏡の間」で見た痛烈な言葉が浮かんだ。鉄格子を填め込んだ檻の向こうに鏡があり、人間の上半身が映る仕掛けになっていた。その鏡の上には、「世界で最も危険な動物」と記されていただのだった。』
人間の本性、組織の理不尽をかかせたら、山崎豊子の右に出る人はいないのではと思う。
決して“面白い本”ではありません、が、
2009マイベスト、有力候補。
登録日 : 2009年06月13日 07:46:05


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