劇場

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著者 : 又吉直樹
 きたかみさん 小説(国内)   読み終わった 

すっっっごく良かった。好き。まじかーーー又吉。
「報われない人間は永遠に報われない」とほんのり似てた。
それにしてもデビュー作とくらべると気持ちのいいほど肩の力がぬけている。
ちゃんと書きたいことを冷静にとらえて、話題性とか批評とか、そういう煩悩に惑わされることなく書き上げたんだろうなと思う(私だれ目線なんだ)。
小説そのものもとても好感がもてるし、これを彼が書いたのだという事実もぐっとくる。
本当にさりげなくそっとはさまれるジョークが絶妙にシュールで、芸人としての矜持も感じた。

東京で劇団を立ち上げ脚本や演出をするも一向に売れない永田と、それを献身的にささえる天真爛漫な彼女の沙希ちゃん。
永田の脳内をのぞいているような奇妙な生々しさが文章から滲んでいて独特の世界観を纏って話はすすむ。
永田は自意識過剰で卑屈でどうしようもない男だ。明るくて優しい沙希ちゃんがとにかく不憫でならない。
だけど永田が感じている劣等感や焦燥も、読み手の私にはどうしようもなく伝わってきてしまって、素直になれない彼が滑稽で、可哀想で、情けなくて、不甲斐なくて。
空気に触れるべき言葉こそがでてきてくれないもどかしさが切ない。
ラストシーンはそういうあれこれ全てが苦しく押し寄せてきて涙がとまらない。

現実だって、どんなセリフを吐き、どんな演技をするか、すべて思いのまま。ここは劇場だ。

レビュー投稿日
2017年5月17日
読了日
2017年5月17日
本棚登録日
2017年5月17日
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