京都の人間にとって、東郷青児といえば四条河原町の喫茶ソワレ。
創業は昭和初期というから、もう80年以上にわたって、京都の人と街を見つめ続けてきた文化的サロンという趣のある喫茶店ですが、淡くほのかな展望の時がとまっているかのような店内には、夢幻的な青い明りが灯り、虹色のステンドグラス、古色蒼然とした女給(今のメイドですね)のコスチューム、そしてその中に東郷青児の絵が居心地よさそうにピタッと収まっていました。
私は高校生の頃、買ったばかりの『現代詩手帖』や『ユリイカ』などの雑誌や、澁澤龍彦や種村季弘などの本を持って入り、何時間も粘って居座って読んでいたことがありました。
後年、父との何気ない会話の中で聞き及んだところによると、なんと父も70年代前後にこのソワレによく通ったというから驚きました。
もっとも、父はお客として訪れただけでなく、四条河原町界隈は、今でもあるアサクマや、名前も思い出せないミレイユ・マチューがよくかかっていた喫茶店など数軒でアルバイトをしていたそうですし、あの時代、喫茶店は若者が熱く議論をする場所という特別な存在であったという話は聞いたことがあるので、単なる偶然ではないわけです。
ともかく、こうして私と東郷青児のシュールレアリスティックな絵との出会いは起こったのですが、それ以上でもそれ以下でもなく、いわば彼の絵はノスタルジーのなかに永遠に生き続けているということです。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
芸術
- 感想投稿日 : 2009年2月20日
- 読了日 : 2009年2月20日
- 本棚登録日 : 2009年2月20日
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