きいろいゾウ (小学館文庫)

著者 :
  • 小学館 (2008年3月11日発売)
3.69
  • (846)
  • (1069)
  • (1047)
  • (299)
  • (78)
本棚登録 : 11484
感想 : 1205
5

去年映画を見て、すごく好きな作品だなぁと思ったので原作も読んでみた。
実に小説に忠実に映画化されていたんだということがわかった。

毎日をゆっくりと、丁寧に、濃密に暮らしていく二人の姿はとても好感が持てて、「ああ、私はこういう生活をしたいんだよなあ。」と、何度も思う。

とてもセンシティブなツマに対して、必要なときに必要な言葉をかけることができるムコさんは、とても大人だと思えるのだけれど、ムコさんはムコさんでツマの存在に支えられていて、ツマの不在を想像しては不安を感じていたりして。

映画を見たとき泣いてしまった理由。
泣ける映画というわけではないのに。周りの誰も泣いていなかったのに。
本を読んでいて、やっぱり泣きそうになる。
ずっと、ざわざわした心持ちで読み進める。
そして気づく。

私はこの作品が、手のかかるやっかいなツマが、不器用で臆病なムコさんが、アレチさんが、セイカさんが、大地君が、駒井さん夫婦が、平木直子が、カンユさんが、コソクが、その世界全部が、愛おしかったんだ。
とてもとても愛おしくって涙が出たんだ。

なぜ一緒に生きるのか。
互いを大切に思いあうって、どういうことなのか。
既婚暦のそこそこ長い私にも、まだそれをはっきりと言葉にすることはできないけれど、素直にそれを体現している二人の姿を見ていることは、私にも幸いなことだった。

早く大人になりたいけれど、ちゃんと子どもをやってから大人になると言った大地君。

そう。効率じゃない。
ちゃんとやっているかが大事。
ゆっくりと、丁寧に、濃密に。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年7月10日
読了日 : 2014年7月8日
本棚登録日 : 2014年7月10日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする