大好きな穂村弘の日記(?)『にょっ記』シリーズのイラストを描いた方が、書いたエッセイ(?)
現実と夢と妄想が混じり合い、もやもやとした不安や不可思議を孕んだ文章は穂村弘を彷彿とさせる。
4ページの文章と見開き2ページのマンガ。
文章の始まりと終わりの間で、どこかがきっと捻じれている。
そんなすわりの悪さが心地いい。
星新一のショートショート「おーい、でてこーい」を思い出した。
地面に開いた穴。深くて底が見えない。
「何かいるのか?おーい、出てこーい』
呼びかけても反応は何もない。そこで…。
という話なんだけど、フジモトマサルの世界はまさにそれ。
井戸の中だったり、夜空にある月だったり、床下だったり。
現実と異界の間はきわめて些細なもので仕切られている。
現実と異界の間を簡単に行き来しているうちに、気がつくと戻ってこられなくなってしまうのではないか。
そんな不安を感じながら出版年を確認したら、まだ白血病を発症する前の作品だった。
また深読みをしてしまった…。
最後の作品、遺書みたいだと思ったんだもの。
“しかし「本当にあったことかどうか」「客観的事実かどうか」はじつはそれほど意味がないのではないだろうか。どれほど心が動いたか、によって人間は作られていくからである。”
文章とマンガの配置の仕方。
活字のような字体の文字。(特にひらがな!)
人間でありながら見た目がミツユビナマケモノの主人公。(普通の人間並みの速さで動くけれど)
こだわりの一杯詰まった本は、ただ眺めているだけでも楽しい。
- 感想投稿日 : 2017年1月21日
- 読了日 : 2017年1月21日
- 本棚登録日 : 2017年1月21日
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