ガチガチのカトリック系モラリストの伯爵が治める、因習にとらわれた小さな村に越してきた母娘。
教会へ行かず、私生児を産んで育てている主人公のヴィアンヌを、村長でもある伯爵は敵とみなし、村から排除しようとする。
自分たちと違うものを排除しようとする村の人。
ジプシーに対してもそう。
法を犯しているわけでもなく、胸を張ってチョコレートの店をひらくヴィアンヌ。
黒っぽい服装の村人たちに比べて、ヴィアンヌの服装は華やかで、そしてそういうことを嫌う人たちがいるってことは容易に想像できるわけで。
夫の暴力に耐えている人、娘と上手くいかなくて孫に会えない大家の老婦人、長い長い間片思いを続けている老紳士。
少しずつヴィアンヌの周りには人が集まってきます。
おいしいチョコレートと温かな心を求めて。
ヴィアンヌのよき理解者でありパートナーでもある娘が学校でいじめられて帰って来て、「どうして教会に行かないの?」と聞きます。
「行きたかったら行ってもいいけど、状況は変わらないわよ」
ずっと同じ土地にとどまる自分たちとは違う、旅暮らしの異邦人に対する偏見。
でも娘は言う。「どうしてみんなと同じに黒い靴を履かないの?」
同じことをし、同じような服装をし、同じような暮らしをしているものしか認めない。
一見穏やかな村人たちの、頑なな排他性と、それを裏で煽る伯爵。
伯爵のいうことは間違っていない。
神を敬い、自分を律し、決まり事を遵守する。
けれどそれに雁字搦めになってしまい、違いを受け入れられなくなってしまったとき、正義の押し付けは時に悪意よりもたちが悪い。
だって、反省の余地がないから。
赴任して5週間の若い神父。
最初は伯爵の言いなりで、やり過ぎじゃないかと思っても逆らえなくていたんだけど、最後の説教のシーンがいいの。
自分が信じる正義が世の中を変えるのではなく、開かれた心が人々を変えていく。
- 感想投稿日 : 2016年2月7日
- 読了日 : 2016年2月7日
- 本棚登録日 : 2016年2月7日
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