パッとしない子 (Kindle Single) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 短編。何気ない一言が他人を傷つけてしまうこと。それに気づかないこと、たくさんあると思います。ましてやまだ表現力十分育ってない子ども相手なら尚更かも知れないでしょう。美穂に対して幼い頃の怨恨を抱く佑の辛辣な言葉は、恐ろしいほど迫力がありました。ただ、ひどいことを言っているのは美穂より佑のほうです。メンヘラ?言いがかり?うっかり迫力にのまれないほうが良いと思います。後味は悪いけど辻村さんの心の内面の描きかたはすごいと思いました。

  • タイトルで予想してたのよりも、
    途中からかなり怖かった。
    もっとほんわかしてる話かと思ってたのに、さすが人気作家さん。
    いろんなタイプの作品が書けるのだ。

    教師からしたら後々思い出せる印象の強い子と、印象の薄いパッとしない子がいるのであろう、とは思う。
    しかし、教え子が大人になって国民的アイドルグループのスターになって母校を訪ねて来た時に、まさか印象の薄い『パッとしない子』だったなんて言うたらいかんよ!
    それも、「私は何も悪くない」って感覚もきっと「あるある」案件。

    こんな短い作品でドキリとさせる、その見事さに感服です。
    ちょっと怖かったもん。

  • 2017年 43ページ

    読んで良かった辻村深月さん短編。

    身から出たサビとは言いますが、自分の身から出る言葉や態度には、知らず知らずのうちに人を傷つける刃が潜んでいるかもしれませんね。
    私自身も、過去に無神経なことを言ったことがあり、後悔先に立たずですがバカだった過去の自分を殴りたくなりました。

    主人公の美穂の場合、それが無自覚なためにいい大人になっても気付けない。
    教師としてはNGじゃないかな。

    『教師が兄弟で通っている子の名前を間違えるなんてよくあることだ。』
    ーーよくあることなのでしょうか?

    『繊細すぎてついていけない、と思う。 その子も、佑も、佑の弟も。人の言葉をいちいち覚えていて、勝手に傷つくのはやめてほしい。こっちはそんなに深く考えていないのに、繊細すぎる。』
    ーー深く考えずに軽い気持ちで子どもたちに話をしているのでしょうか? 子どもはけっこう繊細で、ある出来事が大人になっても尾を引きずっていることあるし。

    美穂の思考回路には共感できません。

    だけど、佑にも共感できないのはなぜでしょう?

    佑にも『記憶の捏造』があるかもしれません。美穂にも言い分はありますから。

    このお話、後味は良くないのは事実です。
    佑は、今や美穂よりも影響力、立場ともに強い人物となっています。美穂を許せないとしても、最後はひどくないかい? なんか、芸能人の奢りを感じる。

    それにしても、教師はたいへんな職業だと思います。聖職と言われる職業、そして仕事量、プレッシャーとも半端ないのではないかと。

  • ついついタイトルに惹かれて読んでしまいましたが、パッとしないのは結末もそんな感じでした。
    コミニュケーションとることが怖すぎるって思いました。
    先生もアイドルになった佑も、今の地位を築くためにしてきたことは大差ないと思うんです。
    良い子ちゃんでいたり、陰口を叩いたり、味方を作ったりして根回しして、気づかないうちに押し除けたり、踏台にされた人が存在してると思いますから、知らないうちに恨みをかうのもあり得たりします。その逆に尊敬されたり感謝されたりもあるし自分にも都合よくって正当化して潰れずにやってこれた訳で、副作用として記憶の捏造もおこると思います。
    目が合ったことが駄目でしたね。人と目を合わすなんて何因縁つけられるかわからないので視線は逸らさないと、わずかでも美談を期待した先生にも落ち度があるし、10年も前のことを根にもってるアイドルにも非があると思います。サイコパスかも!?
    なんでこんなに後味の悪い話になるのかなあ。
    人と関わりたくないってつくづく思ってしまう話でした。
    早く忘れちゃおっとっw

  • 意外な展開だった。
    さすが辻村作品。
    痛いほど人の本質をつつく。なのに断定しない。
    どうしてこんなにも人の感情がわかるのか。また、どうしてこんなにも、人の感情を活字に表現できるのか。
    本当に好きな作家さん。

  • オーディブルで聴いた。「ナベちゃんのヨメ」に続き、短時間で聴き終えられる短い話だけど、考えさせられる、教訓のようなものが感じられた。
    感謝されるのかと思いきやそんな事言われたら、青ざめるし怖い…。
    佑や弟の立場から見たら、嫌な先生だったかもしれない。
    でも先生の立場から見たら、そこまでひどいことした!?なんでそんな事言われなきゃいけないの?と腹立たしくなる気持ちも理解できる。
    結局記憶の捏造をしていたのはどっちだったのか、第三者の私たちにはわからないままだ。
    リアルな人間関係を感じた。
    私も発言には気をつけなきゃいけないなと思った。

  • 共感する部分があった。それは生徒側から見た教師に対して思うこと。何気ない一言が生徒を傷つけてしまう。人気のある先生こそこのやうな要素が強い。なぜなら多数から人気があるということは、みんなに対していい顔をしているようにも見えてしまい、その中で発言に矛盾が発生する場面が出るから。こういったことは仕事の組織の中でも当てはまることなので、気をつけたい。

  • ハッピーエンドが好きな私にとっては、非常に後味の悪い読後感でしたー。
    現実社会でもありそうな、いやーな人間関係を描いており、読む人を選びそうです。

  • 辻村深月さんの短編。
    女性小学校教師と、その教師が10数年前に担任した子が芸能人となって母校に取材に来ることとなり、久しぶりに再会を果たすこととなるというお話。
    再会して昔話に花が咲くかと思いきや、まさかの展開笑
    ショートで読みやすく、かつ痛快。
    結構好きな展開でした。

  • グサっときたなー。自分も仕事と結びつけて読んでしまった。何の言葉や行動が児童にとって刃となって突き刺さるか分からない、からこそその時々で最善の方法を取れる努力をする必要がある。

    だって、本人が何とも思ってないことが、誰かにとっては心ないものだと受け取られるのだから。美穂先生の隠そうにも隠せない本心を綺麗にエグく撃ち抜く佑くんが恐ろしい。こんなことは誰にでもある。他人の功績を伝える過程で自分の虚栄心は満たされる。「少し関わっただけ、でも自身と関わりがあるから」で過去のことを好き勝手言っていい顔されたい予備軍なんてほとんどでしょ。「あいつ知ってる!」が放言吐いていい理由にはならん。

    短いながらも妙な怖さを感じ取れる作品でした。

    【読了時間:26分 / 1日】

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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