始祖鳥記 (小学館文庫)

著者 :
  • 小学館 (2002年11月6日発売)
4.11
  • (116)
  • (71)
  • (66)
  • (8)
  • (2)
本棚登録 : 716
感想 : 93
5

日本で始めて空を飛んだとされる浮田幸吉と
その偶像や実像に関わった人々の群像劇。

静かで、それでいて相当な熱量を持った小説だ。

浮田幸吉はとにかく完璧である。
手先も器用、先見の明もある、どんな困難にもめげない。
困難がなくなれば自らつくり出してでもそこに向かう。
彼にとって困難だったのは、
なんの困難も挑戦もない、安寧な生活を送ること、
この一点に尽きるのだろう。
この小説では幸吉はまるで人では無いかのように描かれ
強い意志の象徴として描かれている。

そんな幸吉よりも私は、人間として描かれた巴屋伊兵衛が好きだ。
問屋と糞侍の腐敗に自身の故郷を潰されないために立ち上がり

怒りに当初の目的をすっかり忘れたときに、
「空飛ぶ表具師」の噂を聞き改心したり

塩が手に入らなくて絶望していたときに槖駝丸が入港して
歓喜、感謝するしたり

その時の手紙を紙がすり切れる程何度となく見返して、
多忙な日々を生きた。

そうして若くして死に、地域の人々の行動規範となる。

伊兵衛の意志が地域に息づいたことを表すシーンでは涙がでた。

因みに幸吉はアイドルなので、死にませんし。うんこしません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説
感想投稿日 : 2012年2月18日
読了日 : 2012年2月18日
本棚登録日 : 2012年2月18日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする