日本で始めて空を飛んだとされる浮田幸吉と
その偶像や実像に関わった人々の群像劇。
静かで、それでいて相当な熱量を持った小説だ。
浮田幸吉はとにかく完璧である。
手先も器用、先見の明もある、どんな困難にもめげない。
困難がなくなれば自らつくり出してでもそこに向かう。
彼にとって困難だったのは、
なんの困難も挑戦もない、安寧な生活を送ること、
この一点に尽きるのだろう。
この小説では幸吉はまるで人では無いかのように描かれ
強い意志の象徴として描かれている。
そんな幸吉よりも私は、人間として描かれた巴屋伊兵衛が好きだ。
問屋と糞侍の腐敗に自身の故郷を潰されないために立ち上がり
怒りに当初の目的をすっかり忘れたときに、
「空飛ぶ表具師」の噂を聞き改心したり
塩が手に入らなくて絶望していたときに槖駝丸が入港して
歓喜、感謝するしたり
その時の手紙を紙がすり切れる程何度となく見返して、
多忙な日々を生きた。
そうして若くして死に、地域の人々の行動規範となる。
伊兵衛の意志が地域に息づいたことを表すシーンでは涙がでた。
因みに幸吉はアイドルなので、死にませんし。うんこしません。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
時代小説
- 感想投稿日 : 2012年2月18日
- 読了日 : 2012年2月18日
- 本棚登録日 : 2012年2月18日
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