客人(ソンニム)

著者 :
  • 岩波書店 (2004年4月27日発売)
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世界の小説を読む第12冊目韓国
「客人」黄晳暎
朝鮮戦争時に北朝鮮のある村で起きた村民同士の大量殺戮事件を丁寧な取材を元に描いた、事実に基づく本作。朝鮮戦争から何十年も経った後、ニューヨークに移住していたヨセフ牧師が生まれ故郷である北朝鮮に帰郷する。そこでは大量殺人を犯した兄の亡霊と、彼の被害者の亡霊達が次々と現れては立ち消え、それぞれの物語を語る。作者のあとがきが一番分かりやすいので引用するが、元々韓国で「客人」とは一刻も早くたち去って欲しい天然痘の事を指していたが、同様に西から来たある種の「病」であるキリスト教とマルクス主義の対立が引き金となって起きた事件を表すに相応しいとしてつけたそう。小説全体も天然痘の厄災から逃れるための儀式の十二の形式に基づいて展開される。全く知識のない歴史的事件の話だったので、興味深く読めた。それにしても今の所世界を読むシリーズでピックアップした本がどれも、戦争の悲惨さを扱っていたり、ガルシア・マルケスに影響を受けていたりしているのが面白い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 世界の本
感想投稿日 : 2016年5月18日
読了日 : 2016年5月18日
本棚登録日 : 2016年5月18日

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